リン・マニュエル・ミランダが創ったこのミュージカルは、2015年オフから移り、2016年のトニー賞授賞式では、ミュージカル作品賞をはじめとする11部門でトニー賞に輝き、この年は『ハミルトン』の話題一色でブロードウェイは染まった。楽曲が殆どがヒップホップのスタイルで、見事に韻を踏んだ歌詞がスピード感持って歌われ、洗練された振付も見応えがあり、飽きを感じさせない。
アメリカの初代財務長官で、合衆国憲法の創案者としても知られ、10ドル札にも印刷されているアレクサンダー・ハミルトンの生涯を伝えている。貧しい家庭に生まれ育ち、孤児となりながらも、才能が認められ政治家となり、最後は政敵との決闘によって、他愛もなく40代で命を落としてしまう。政治の裏側やイギリスとの確執なども含めて、その人生が丁寧に描かれている。
歴史上の人物についてなので、「この人の話を、どうミュージカルにするのだろうか?」と不思議だったが、そこがミランダの才能なのだろう、ハミルトンの生き方に共感し感動を覚えることができる。フィナーレでの「歴史的人物をどう評価するかは後の世代の人たちのとらえ方による」という締め括りにも好感が持てる。独創的で、テーマ性がはっきりと打ち出された力作だ。
当初、2015年2月にオフ・ブロードウェイでデビューしたこの作品は、その人気によって同シーズン中にブロードウェイに昇格する予定だった。しかし、時間をかけて手直しをしてからブロードウェイに挑みたいというミランダ率いる制作陣と、早くの上演を希望するプロデューサーとの意見が対立し、結局は次のシーズンの開幕となった。
文/井村まどか
photo by Joan Marcus
Richard Rodgers Theatre
226 W 46th St
New York, NY 10036
上演時間:2時間45分(休憩1回含む)
SCORES
Wall Street Journal 9
New York Times 9
Verity 9
舞台セット 7
作詞作曲 9
振付 8
衣装 8
照明 7
総合 8
井村 まどか
ニューヨークを拠点に、ブログ「ブロードウェイ交差点」を書く。NHK コスモメディア社のエグゼクティブ・プロデューサーで、アメリカの「ドラマ・デスク賞」の審査・選考委員も務める。 協力:柏村洋平 / 影山雄成(トニー賞授賞式の日本の放送で、解説者として出演する演劇ジャーナリスト)
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