モノやサービスのコモディティ化、グローバルかつ熾烈な価格競争、さらにはコロナ禍による商談のオンライン化など、BtoB企業を取り巻く環境変化はいっそう厳しさを増しています。競合との差別化をはかり、自社の存在意義やビジョンを可視化しながら発信し続けることが求められる中で、いまBtoB企業が考えたい「ビジュアル表現力」とは?
モノやサービスが市場に溢れる中、価格競争に巻き込まれないためにも、BtoB企業には自社の価値や存在意義を積極的に情報発信していくことが求められています。
BtoB企業の製品やサービスの優位性は、一言で説明しづらく、伝わりづらい。だからこそビジュアル表現で差が付きやすく、動画を活用して技術やサービスの優位性を分かりやすく提示したり、惹きつけるビジュアルで製品の魅力を訴求できるかどうかが重要になってきます。
加えて、コロナ禍でDXが加速し、非対面での営業機会が増えていることもビジュアルの需要が高まっている理由のひとつ。大規模なリアル展示会の開催が難しい中、バーチャル展示会ほかデジタルコンテンツを拡充しながら、オンラインをベースに顧客との接点を実りあるものに育てていくためには、対面でのコミュニケーション以上に豊かな表現力が必要です。
人は、情報の83%を視覚から取得していると言われます。ビジュアルの表現力を味方に付けてうまく活用できるかどうかは、BtoBのコミュニケーションを左右する大きなポイントになってきていると言えるでしょう。
ビジュアルには、情報(information)を伝える機能と、感性・感情(emotion)を伝える機能があります。
下のふたつの写真を見比べてみましょう。
被写体は同じ「青りんご」でありながらも、左右の写真それぞれから受ける印象はかなり違うのではないでしょうか。右の写真は、「青りんご」という情報に加えて、その背景や質感、ライティングからエモーショナルな要素を感じさせます。情報以上の価値、つまりは言語化しづらいニュアンスまで含めて可視化することがどういうことか、わかりやすく比較できる写真です。
この伝わり方の違いを、BtoB企業のビジネスシーンに当てはめて考えてみましょう。
たとえば、建設業界で未完成物件の完成予想図として用いられる「建築パース」。よく新築マンションの販促広告やチラシ等で見かけますが、青空をバックに中央に3DCGで建築物を描いているものが大半です。
そんな「モノ」を描く従来の建築パースを、「コト」を描くものにアップデートして話題になっているのが、建築ビジュアライゼーションです。今回は大手総合建設会社・竹中工務店で建築ビジュアライゼーションに取り組む、山口大地さんの描くビジュアルを通してみていきましょう。
施工主(クライアント)とのコミュニケーションツールとして機能する、建築パース。設計図をもとに建物を正確に視覚化することが求められてきた従来の建築パースに対して、山口さんの描くビジュアルは、建物がその環境や社会にどういう文脈で存在し得るか、つまりは存在意義を可視化しているように見えます。
建物そのものだけでなく、それによってどのような風景や価値を創出するかをビジュアライズすることで、クライアントや設計者とのさらなるインタラクションが生まれ、建築の価値を高めていけると山口さんは言います。
情緒的なビジュアルで人の感性に訴えかけることにより、説明的なビジュアルだけではなかなか発生しづらい、より本質的な議論が生まれている。それがよくわかる例ではないでしょうか。
コロナ禍を経て、モノの流通やサービスのつくり方、働き方や会社の在り方まで大きく変わってきています。BtoC企業だけでなくBtoB企業であっても、自社の製品・サービスは社会にどういう価値を生み、いかに社会をアップデートし得るのか、その存在意義(=WHY)がこれまで以上に問われるようになっていると言えるでしょう。
感性に訴え、心を動かす「伝わる」ビジュアルは、言葉では表現しづらい価値を可視化し、より豊かなコミュニケーションを育む力になってくれます。
撮影[top ]:小山 和淳(amana)
文・編集:高橋 沙織(amana)
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amana visualでは、フォトグラファー、レタッチャー、CGクリエイター、ムービーディレクターをはじめとしたビジュアル制作に携わるクリエイターのポートフォリオや、個性にフィーチャーしたコンテンツを発信中。最新事例等も更新していきます。