爆発的な人気を誇るショートムービー動画プラットフォームTikTokは、近年ユーザー層が広がり、導入企業も増えています。「従来の広告マーケットや動画広告のあり方を変えていく可能性がある」と言うのは、TikTokのHead of Brand Ad Solution Divisonの田村千秋さん。その可能性とはどのようなものなのか? 詳しく伺いました。
——まず動画プラットフォームとしてのTikTokの強みを教えてください。
田村千秋さん(以下、田村。敬称略):「誰しも気軽にクリエイターになれる」ことです。他の動画プラットフォームも、誰しも動画を投稿できる点は同じですが、多くの人に支持される動画は一定のクオリティが必要なので、時間とコストをかけて撮影・編集する手間がかかります。
ですが、TikTokはそのハードルが圧倒的に低いんです。たとえば「エフェクト(スタンプ)」と呼ばれるアイコンを押すと、ユニークなエフェクト加工や仕掛けをつけた動画を簡単に作れますし、著作権もクリアしてユーザーが使える今流行っている楽曲もたくさんあるので、いろんなジャンルの動画を手間なくアップできます。
@akrdadada2020年いい年になりますように!!こうなるように頑張る!#ノーズペイント #私のお正月2020 #meme♬ Orphée aux enfers, Pt. 2: Can-Can – The Royal Philharmonic Orchestra
ノーズペイントのエフェクトを使った動画。
田村:こうした仕組みが機能として実装されているため、投稿のハードルを感じず、誰でも自由に楽しく一定のクオリティを担保した動画をアップできます。それを見て「自分でもできそう」という方が増え、コンテンツがさらに盛り上がっていく。そんないいサイクルが生まれています。
——たくさんのユーザーがフィードに流れる動画をただ楽しむだけではなく「クリエイターとなって気軽に動画をアップできる」となると、他の投稿にも埋もれて、見てもらえないこともあるのではないでしょうか?
田村:そこは機械学習による配信アルゴリズムがカバーしています。TikTokは「おすすめ」というメインフィードがあって、そこに流れるのは、ユーザー一人ひとりにパーソナライズしたレコメンド動画です。検索履歴やタップした動画、頻繁に見ている動画といった個々人の回遊データを「好み」としてアルゴリズムに反映させ、ユーザーごとに相性のいい動画を提案しています。
どんな投稿動画であっても、内容やハッシュタグをもとにどのような好みの人にマッチするかを判断し、ユーザーのタイムライン上にレコメンドするので、たとえTikTokを始めたばかりでフォロワー数が少なくても、「視聴数:0」ということはほとんどありません。むしろフォロワー数の何倍もの“いいね”がつくこともあるんです。クリエイターとユーザーのマッチング精度が高いので、ユーザーの視聴時間がいちばん長いのも「おすすめ」のフィードなんですよ。
——レコメンドの精度が高いTikTokですが、企業が活用するときのポイントはありますか?
田村:いわゆる、一方通行の「広告」としてではなく、ユーザーに楽しんでもらえるコンテンツを作らなければ、TikTokでは効果が出づらく、すぐにスワイプされてしまう傾向があります。他の動画プラットフォームでも、コンテンツとしておもしろいものをつくれるかどうかは大事ですが、なおその傾向が強いプラットフォームだと感じています。
そして、TikTokの動画はスマホの画面をフルで使って視聴するよう設計されているので、動画を見ている間は画面上に他の情報が一切出てきません。無駄な要素がないのでユーザーは動画に没頭してしまいますし、音声も基本的にはオンになっていることがほとんどなので、スマホ画面全体を使い、見ている人のマインドをほぼ100%ジャックしてしまえるのは、企業側の活用にとっても大きなポイントだと思います。
——具体的にはどういった動画広告が支持されていますか?
田村:やはり、コンテンツとしての純粋なおもしろさがあるもの、ユーザーとの距離が近いものですね。「おすすめ」に表示される「インフィード広告」では、とくにその傾向が強いです。たとえばすでに自身の投稿でファンを持っている人気TikTokクリエイター(※1)の方に、インフルエンサーとして広告を依頼するときは、普段の投稿のおもしろさや、そのクリエイターの個性をまっすぐに出してもらっています。
※1…TikTokにコンテンツ投稿をしているクリエイターのこと。インフルエンサーマーケティングに力を発揮する。
——ハッシュタグがついた投稿にあわせて、リップシンクやダンスを生み出すUGCを生み出す広告動画は「TikTok」ならではですよね。
田村:タイアップ型の「ハッシュタグチャレンジ(※2)」ですね。「ハッシュタグチャレンジ」はもともとオーガニックの投稿動画として人気で、タイアップが導入される前から盛んに投稿されています。
タイアップ型では、まず企業の公式アカウントでお手本となる動画を投稿。TikTokクリエイターの中からターゲット層に人気の高いインフルエンサーにもチャレンジしてもらい、一般ユーザーにも広がっていくという流れ。同時に商品やサービスへのエンゲージメントを深める人が増えていく仕掛けです。チャレンジ内容は、企業の目的をふまえ、ユーザーの方が積極的に参加してくださるような内容を提案しています。
※2…ユーザー参加型の動画投稿企画。ハッシュタグと共にお題と見本動画が用意され、ユーザーは自身で作った動画にハッシュタグをつけて投稿する。
——ただ商品説明を押し付けるのではない。これもまさしく「コンテンツとしての面白さ」が問われる動画広告ですね。
田村:そうですね。だからこそユーザーとの距離の近さを感じてもらう企画にする必要があります。「自分も試してみたい」「投稿したい」と楽しんで参加してもらってはじめて成立しますから。
田村:ユーザー参加のハードルを下げた状態で、さらに楽しんでもらえるよう、2019年から投稿動画に仕掛けをつけられる「エフェクト」をクライアントと共同開発する施策もはじめました。「ハッシュタグチャレンジ」の際に、ブランドオリジナルのエフェクトがかけられる「スタンプ」を組み合わせることで、ユーザーが楽しみながらもブランドの世界観や商品特性を自然に伝えられるようになっています。
——クライアントの商品が持つベネフィットを考えたうえで、遊び心があって試してみたくなる「スタンプ」に落とし込むことが大切なんですね。
——TikTokにはインタラクティブ性やUXをふまえた上でユーザーのクリエイティビティを刺激する広告を展開できる、いわゆる「動画広告」とはまったく違うおもしろさと、可能性を感じました。
田村:単純にクライアントが言いたいことを詰め込んだ動画素材をつくり、ターゲットにリーチする、そういう動画広告は限界がきていると感じています。実際に多くの方が動画広告に対して「見たくない」「早く『スキップする』のアイコンが出てほしい」と思っていますよね。
ユーザーの方々が積極的に視聴し、試し、投稿したくなるような仕組みや仕掛けを盛り込める、広告マーケットや動画広告のカタチをまるごと変えていくような魅力と可能性が、TikTokというプラットフォームにはある。そう確信しています。
インタビュー・テキスト:箱田高樹
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