ブランディングに関わるキーワードはたくさんあるけれど、時代とともに流れが変わるブランディングの世界では、トレンドワードも変わっていくもの。そこでアマナのブランド戦略室が、今押さえておきたいキーワードを厳選して解説。ブランディングの“今”とは?
ブランドの考え方や思い、魅力などを、社内に浸透させる施策。
10年ほど前までは、ブランディングというと、CI(コーポレートアイデンティティ)の整備や理念開発、ロゴ開発を行うのが主流でした。ですが、それも一巡し、今は「インナーブランディング」に注目が集まっています。
インナーブランディングのやり方は、社内への理念浸透はもちろん、社員を巻き込み社内でワークショップを行ったり、ロールモデル社員を立てたりとさまざま。企業課題によってもやるべき内容は変わってきます。
インナーブランディングで目指すべきポイントは、会社と社員のベクトルを合わせること。社内のベクトルが一方向を向くと、莫大なパワーが発揮されたり、社員のモチベーションや満足度が上がります。その結果、離職率が減るなどといったメリットも期待できます。実際に、社内の雰囲気が家族的であると業績もアップするという研究結果も出ているほど。
今や、インナーブランディングで、いかに社内結束力や社員のやりがいを強化させられるかということが、ブランディングを成功させるためのカギとなっています。
※インナーブランディングをなどブランディングの基礎知識はこちらの記事をチェック!
ブランド像を擬人化して“ペルソナ”を確立させるという、ブランディングの手法。
マーケットとメディアが多様化した現代は、タッチポイント(顧客とサービス・商品の接点)も細分化されています。そこで、的確なタッチポイントを見極めたり、どんなシーンやシチュエーションでそのブランドに触れても軸がぶれないようにするため、ブランドのペルソナを設定していきます。このペルソナは、社員全員が共有できる軸になるだけでなく、商品開発や販促などを進める際の大切な基点にもなってきます。
ペルソナを設定するときには、ブランドの主な客層を想定した「ターゲットカスタマー像」と、ブランドの世界観を表現するための「ブランドペルソナ」の2つのペルソナを設定する場合があります。さらに、カスタマージャーニーを作り、ブランドの“あるべきエクスペリエンス”を明確にしていきます。このように、ブランドの文化やキャラクターでの差別化をすることが大切なのです。
さらに押さえておきたいのが、競合のターゲットのポジションもペルソナで把握するということ。比べながら、競合にはない“ユニークポジショニング”を見出し、マーケットの中で唯一無二の存在を目指すといいでしょう。
※ブランドの人格作りについてはこちらの記事をチェック!
「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)の略称。2015年の国連サミットで採択された、国連に加盟している193国共通の開発目標。
SDGsは、環境、健康、教育、人権など、地球全体で解決すべき課題が提示されている17の大きな目標と、それらを達成するための169の具体的なターゲットで構成されています。“社会的責任感のある企業としてどのように行動するべきかのチェックリスト”とも言えます。
欧米では特に重要視されていて、取り入れていなければビジネス的にも遅れていると思われるほどの段階まできています。ただ、注目されているからと言ってとってつけたような社会貢献では意味がなく、実際のビジネスにいかに織り込むかが重要です。
そのため、企業ごとにSDGsへの向かい方を定義し、企業理念や行動指針に盛り込んだり、インナーブランディングで社内への周知などをしていく必要が出てくるでしょう。
世の中に伝えていく方法は時代によって変化し、少し前までは紙媒体やテレビが主流でしたが、現代はWebサイトやSNSといった“デジタル”がメディアの主軸になっています。デジタルの知識なくしては、効率的に世の中に伝えていくようなブランディングはできません。
デジタルは、ブランディングの成果物のほとんどを「動くもの、動かすもの」にするという産業革命をブランディング界に起こしました。
デジタル化により、企業と顧客がダイレクトにコミュニケーションをとれるようになり、企業側もリアルタイムでインタラクションし、日々進化・変化し続けなければならない時代に突入。それに伴い、「ブランド〇〇室」といった管理発想の組織ではなく、あらゆる組織に染みわたるブランディング体制も必要になってきました。またそのことから、部署をまたいでブランド資産を共有して効率化、コストダウンできる可能性も高まっています。デジタルの知識を持ち、世の中の変化を捉えたブランディングをすることがますます求められるようになるでしょう。
ブランドを現実世界に投入して見せたり動かしたりして、顧客に何らかの行動や態度変容を促していく施策。
今のブランディングの中心となっているのは「エクスペリエンス」(体験)です。体験を通して顧客に商品、サービスのよさを知ってもらうためにも、店頭の空間環境や、販売促進の工夫、SNSでの発信など、ブランドは常に顧客とのタッチポイントを見極め、その魅力を発信していかなければなりません。そのとき、従来型のコミュニケーションに頼らず、“ブランドのらしさ”を活かした方法で、ブランドのアクティベーション(具現化)を行えるかがカギとなってきます。
一過性のコミュニケーションのみに依存するブランドは、蓄積がなく、いつ倒産してもおかしくない“自転車操業”になってしまいがち。タッチポイントが増えるほど、ブランドの普遍性が大切になってきます。
この5つのワードは、絶対と言っていいほど“今”のブランディングに欠かせないものばかり。ブランディングの流れに乗り遅れないように、しっかりと単語と意味を理解し、ブランディング施策に反映させていきましょう。
■キービジュアルのウラ話
今回イラストレーターの松原光さんに企画内容を踏まえて、キービジュアルを描いてもらいました。なぜこのイラストになったのか、作り手の“思い”を紹介します。
「5つのキーワードの5を鍵穴に見立てて、ブランディングという“鍵”でロックを解除し、企業が次のステージへステップアップしていくイメージで描きました」(松原光さん)
〈PROFILE〉松原光|まつばらひかる
イラストレーター。グラフィカルでキャッチーな作風にユーモアがプラスされたイラストが評判。国際アートフェア「UNKNOW ASIA2018」にて、Jeon Woochi賞、池田誠審査員賞を受賞。http://www.sandomistudio.tumblr.com
テキスト:石部千晶(六識) イラスト:松原光
作図:メルクマール
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