テクノロジーライターの大谷和利さんが注目した、世界の先進的なビジュアルユースのトピックを取り上げる連載「VISUAL INSIGHT」。第13弾でご紹介するのは、モーションキャプチャができるアプリ。簡単に仮想的キャラクターを生み出すことができるため、デジタル空間での使い方が広がりそうです。
映画『パディントン』とその続編の世界的大ヒットを受けてか、最近、『ピーターラビット』や、くまのプーさんを実写化した『プーと大人になった僕』など、リアルなキャラクターと人間との掛け合いが特徴の作品が目立っているが、こうした映像制作に欠かせないものが、モーションキャプチャと呼ばれる技術だ。
以前からゲーム制作においても不可欠になっているモーションキャプチャは、一般にキャラクター役の演者の体の各部に光学的、あるいは電子的に感知できるマーカーをつけて演技やダンスを行ってもらい、その動きを3Dのモーションデータに変換する。しかし、仕掛けが大掛かりになる分、個人や企業の部署レベルでは気軽に試せない部分もあった。
しかし、モバイルデバイスとAI技術の進化は、ベーシックなモーションキャプチャを、オフィスの一画でも手軽に行える日常的な存在へと変えつつある。それが、RADiCAL(ラディカル)のMotionアプリとサービスだ。
撮影条件はとてもゆるいもので、以下の条件を満たしていればよい。
現在はテスト期間中の無料プランのためか、撮影時間は20秒に限られるが、上記の条件を満たして撮影を完了したら、アップロードボタンをタップして、動画ファイルを専用サーバーにアップロードする。その後、処理の混み具合にもよるが、数分~数十分で通知が届き、プレビュー映像を確認できる。
この、視点を変えて見られるプレビュー映像以外に、有料の本サービスの開始時には、モーションキャプチャの標準的なデータ形式でもあるFBXファイルをダウンロード可能となり、それを本格的なCG制作に利用できるようになる。
上記は筆者によるプレビュー動画となる。アプリもしくはサイト上では、視点を自由に動かしながら再生することができる。
サービス自体が公開β版(フィードバックなどを得る目的で一般に供されたテストバージョン)のため、原稿執筆の時点では、有料プランの料金体系は明らかではなく、FBXファイルのダウンロードもできない。しかし、少なくとも課金不要で自由に試してキャプチャの精度を確認できる点は素晴らしい。
今後、VRやAR環境が普及してくると、企業もそのデジタル空間の中に仮想的なキャラクターを配してPR活動などを行うことに備える必要がある。そのとき、モーションキャプチャは、今以上に当たり前で不可欠な技術になる。
最終的に、ワイヤーフレームデータに肉付けをしてリアルなCGアニメーションに仕上げるにはプロの手を借りるとしても、振り付けのアイデアを練ったり、コンテンツ制作の打ち合わせ時に意図を伝えたり、何よりモーションキャプチャを身近に感じて発想の刺激とするうえで大いに役立つアプリ/サービスと言えるだろう。
※動画以外のイメージは、すべてRADiCAL公式サイト<https://getrad.co/>と、RADiCAL Motionアプリからのキャプチャです。