店頭でお客様に商品にまつわる情報や魅力を伝えたいと思ったら――。POP、ポスター、接客時のやりとりなど、さまざまな選択肢があります。でも、もっとスマートに楽しみながら理解してもらう新しい方法を試してみたいもの。そのヒントになる一日限定の体験プログラム「泳ぎ寿司 石巻」が、3月11日(金)、東京・代々木ビレッジで催されました。「ネタが泳ぐ」ってどういうこと!? 興味津々で会場に駆けつけました。
特設会場の暖簾をくぐると、そこはもう立派なお寿司屋さん。カウンターの向こうで、宮城県・石巻の寿司職人の方が迎えてくれます。何が始まるのかとドキドキしながらふたりペアで席につくと、さっそく三陸・金華山沖で獲れる金華さばが握られて寿司下駄に。
すると、そのお寿司にゆらゆらと泳ぐさばの姿が。手をかざしたりして、ふんわり浮かび上がるさばと戯れます。不思議な気持ちで、お寿司に手を伸ばし美味しい金華さばを味わっていると、寿司下駄から前方のスクリーンに向かってさばが元気よく泳いでいきます。
スクリーンでは美しいアニメーションが始まります。親潮と黒潮の出会う金華山沖の豊かな漁場。そこで獲れる脂ののった金華さばの魅力が語られます。そのあとも金華ぎん(銀鮭)、ヤリイカと続いて終了。美味しいお寿司をかみしめながら、そのネタのストーリーを楽しみ味わうひとときは、ネタにも負けないくらい新鮮なものでした。
タネ明かしをすれば、寿司下駄には重量センサーがセットされており、お寿司を感知すると、プロジェクションマッピングでゆらゆら泳ぐ魚のインフォグラフィックを投影。さらに、お寿司を手に取ると、泳ぎ出てスクリーンのアニメーションがスタートする仕掛けになっています。
そうしたテクノロジーの存在を、トータルにコーディネートされたデザインと美しい映像が上手にそっと包み隠しています。その結果、「商品・情報・体験を楽しむ」という三拍子揃った最良の場が生まれたわけです。最新技術とビジュアルをクリエイティブに融合させること。味覚・視覚・聴覚などをフルに使って体感する仕掛けづくりの、大きなポイントなのではないでしょうか。
印象的だったのは、参加した人たちの「わっ!」という驚きの声と終始浮かべるにこやかな表情。店頭で動画を流すだけ、といった商品PRを行っても、こうした反応を得るのは至難の業でしょう。より効果的なプロモーションを行うためには、テクノロジーなどを駆使して、「食べる」といった日常化した行為を「体験」に落とし込むことも、ひとつの手段なのかもしれません。
(TEXT: VISUAL SHIFT編集部)
「泳ぎ寿司」