マツダ株式会社が運営する「ZOOM-ZOOM BLOG」は、同社における以前のテレビCM のキャッチフレーズと同じく、自動車の走行音を表現した擬音語をタイトルにしてしまうほど、クルマ作りに情熱を注ぐ同社の最新情報がブログ形式で更新されているコンテンツサイトです。中心になってこのサイトの企画と運営を担当されているのは、広報本部グローバル広報企画部アシスタントマネージャーの後藤崇(ごとう・たかし)さん。過去2年に渡り「ZOOM-ZOOM BLOG」を担当されてきた後藤さんに、同サイトが目指していることや将来計画などについてお訊きしました。
マツダは、グローバル展開している「MAZDA STORIES」という冊子およびオウンドメディアも持っていますが、「ZOOM-ZOOM BLOG」は、マツダ広報本部が日本語で情報発信を行うことを目的に、2011年に開設した国内向けのブログです。一部の記事は英訳して、グローバルの企業サイトへ転載することもあります。
ブログを開設した目的は、一般の方々に広くマツダへの理解を深めていただき、ファンとなっていただくことでした。
2011 年ごろから、マツダはFacebook やTwitter などSNS を活用した情報発信を始めています。しかし、SNS では発信した情報がタイムライン上であっという間に流れていってしまうのが難点でした。また、SNS での発信に適した内容より、さらに一歩くらい踏み込んだ情報もお伝えしたいと考え、SNS とマツダ公式サイトの中間的な存在として、「ZOOM-ZOOM BLOG」が構想されたのです。SNSとの連携を大事にしており、新しい記事をブログで公開したら必ずSNSで告知を行い、SNSでマツダへの興味を広げつつブログもご覧頂けるようアクセス流入を促すようにしています。
マツダでは、「ZOOM-ZOOM BLOG」の他にも「グローバルサイト」と「オフィシャルサイト」の、2つの公式サイトを、異なる部門で運用しています。グローバルサイトでは和英で企業・ブランド・IR・CSR情報や海外のお客様に向けたディーラー情報などを掲載しており、オフィシャルサイトでは国内向けの商品紹介が中心です。一般的には、後者の方がみなさまにとって馴染みのあるサイトではないでしょうか。
ブログは広報本部として運用しており、PV数や他サイトへの送客数なども見てはいますが、それ以上に純粋にクルマの楽しさや開発・生産などモノ造りの面白さを感じていただきたいと考えています。そこで、それまでクルマ自体に関心がなかった方がこのブログを見たときに、少しでも興味を持っていただけるようなコンテンツ作りを心がけています。
年々、ブログのPV 数も増えていますし、数字のうえでも広報としての効果が上がっていると実感しています。
また、ブログにはコメント記入欄を設けていませんが、SNS に寄せられたコメントや反応を分析することで、記事の良し悪しやどのような内容が受け入れられているのかを把握するようにしています。
1記事の取材から掲載までにかかる期間は、およそ1~2カ月ですが、長いものですと半年かけた例もあります。
半年というのは少し特殊ですが、その記事というのが、車の音の世界に関わる女性エンジニアのインタビュー記事です。
この企画は女性目線の記事を作りたいと思って取り組んだもので、取材も女性が中心に行っています。彼女たちが興味深いと思ったところを抽出したり、難しいと感じた内容を分かりやすく伝えるべくグラフィックレコーディング(話の内容や流れをリアルタイムでイラストに描いていく記録手法)の手法を取り入れたりするなど、新たな試みが多かったこともあって掲載までに長い時間を費やしました。
ただ、1〜2カ月かかるのは、ゼロベースで企画から考えて作る記事の場合です。イベントレポートなど、外部の催しを取材して制作する記事の場合はなるべく早く記事化しますし、ニュースリリースと関連する記事や新車発表会などの場合は即時性を重視し、できるだけ当日中に掲載するようにしています。
新車発表会の記事は実施・取材後にまとめるため、以前は数日後の公開となることもありました。しかし、マツダの公式ブログですから、私自身としては、公開までのスピード感は一般のオンラインメディアに負けられないという気持ちがあります。そのため、イベントが終わった時点や途中でも、現場ですぐに記事作りを始めるなど、可能な限り即日公開できるように工夫しています。
マツダにもさまざまなイベントがありますが、そこは広報本部としてのメリットを活かしています。経営上重要なイベントであれば、比較的早くに把握でき、それをもとに予定を立てることができています。また、毎年掲載している仙台や岡山のファンイベントなどは、初めからカレンダーに組み込んでいます。社内の他部門からの掲載依頼が来ることもありますが、だいたいひと月前までには予定を把握していることが多く、スケジュールを調整して対応しています。とはいえ、すべてを直接取材するのは限界もあるため、主催者や参加者にお願いして記事をまとめていただくこともありますね。
私が所属しているマツダ広報の「SNS/Webチーム」は5名在籍していますが、ブログとTwitter を合わせて基本的に私ともう1人のスタッフの2名体制で運営しています。外部のライターやカメラマンにお手伝いいただいたこともありますが、最近では、チーム内で記事を仕上げることがほとんどです。
チーム外からの依頼や起案によるものであっても、たとえばイベント取材時の写真は指定されたカット以外にも、すべてを並べたサムネイルを見ながら良いものを改めて選ぶ作業をしています。実は、この作業が非常に重要なのです。
イベントの場合、文章をまとめる人とは別に撮影専門のスタッフがいることがほとんどですが、書いている人と撮る人では微妙に見ている部分が異なることも少なくありません。中には、担当者が自分は見ていないシーンだけど、良さそうな写真だからという理由でピックアップされてしまうこともあります。
しかし、ブログに記事を載せること自体が目的ではなく、その内容をいかにわかりやすく、印象深く読者の方々に伝えられるかが重要な目的です。そして、それが最終的にはマツダへの興味や関心としてポジティブな感情につながらなければ意味がありません。記事を読んで、紹介されているイベントに行ってみたくなったり、マツダやクルマっていいなと、「走る歓び」を感じていただいたりすること。そうした視点で、原稿と写真をチェックしています。
ブログの読者やFacebook からの流入を見ると基本的に男性が多いのですが、今後はもっと女性の読者も増やしていきたいと考えています。先の女性エンジニアのインタビューも含め、過去に何度か女性視点を意図した記事を掲載しており、少しずつ効果が上がっている感触も得ていますし、今後も増やしていきたいと考えています。
私自身はクルマが好きな広報の人間として、開発や生産に関わる技術を読者の皆さんにわかるように説明することを「苦労」と感じることはありません。ただ、技術者やデザイナーの中には、言葉の使い方にも強いこだわりを持っている方もいます。どのような言い回しにするかで悩んだり、原稿チェックの際に、もう少し違う言い方にしたいと言われたりすることも。そういう場合は、相手に複数の表現を例示して直接聞いてみたり、取材後に改めて質問したりして確認するようようにしています。また私自身は、ニュースリリースを書くときには中学生にもわかる文章でなくてはならないと教わってきました。ブログではとくに決まったマニュアルこそありませんが、より多くの方に気軽に読んでいただき、クルマやマツダに興味を持ってもらえるように、原稿の執筆や他の原稿をチェックする際の基準としています。
「ZOOM-ZOOM BLOG」は、まだまだ多くの方に読んでいただける可能性を秘めていると思っていますので、もっと幅広く、多くの方の手元に届けられるよう努力を続けていきたいです。オウンドメディアとして、さまざまな要素を入れていくことができますし、動画をはじめ、どのような技術が利用できるか、コンテンツの見せ方のトレンドを調べることも含めて、柔軟に検討していきたいと考えています。オフィシャルサイトやグローバルサイトと比べたときのブログならではの価値を、もっと際立たせていきたいですし。
ブログのPV数は、この5年間でおよそ2倍に伸びました。しっかり読んでいただけるコンテンツを掲載する点はこれからも変わりませんが、より幅広い層にアピールしていくために、クルマ好きの方たち向けの深くて密度の濃いコンテンツと、そうではない方たちでも、興味を持って読んでいただける軽い話題を採り入れたコンテンツを両立させることは、継続的なチャレンジだと思っています。
難しい部分はありますが、記事の写真1つとっても、クルマっていいな、マツダっていいなと思っていただける要素を持たせたり、難しい記事でも楽しく読んでいただけるような工夫を盛り込んだりできますよね。単にPV数を増やすのではなく、ページを開いたからには、必ず満足できる内容を目指したいのです。
来年はマツダの設立から100周年。ブログとしても何かできないか計画中です。SNSから広がってブログにも来ていただけるような複合的な展開を狙いつつ、マツダといえば広島を思い浮かべる方も多いので、広島の知られざる魅力を知っていただける話題や、「いいね」につながる気づきや共感が得られるコンテンツも充実させていきたいですね。
100周年は、これまでマツダを支えてくださった人々に感謝の気持ちを伝える機会でもあり、改めてマツダの歴史やヘリテージを知っていただく機会でもあります。別軸で100周年関連の活動もあるみたいですので、しっかり連携してマツダの魅力をより多くの方に伝えていければと考えています。
「ZOOM-ZOOM BLOG」では、マツダ車の魅力を1人でも多くの方に知っていただき、ファンを増やしていくという明確な目標のもと、制作チームが社内から外部のイベントまで飛び回って情報を収集していました。そして、一般メディアに負けないスピード感で掲載していくことが、メーカーの公式ブログとしての役割でもあるとの使命感を持って運営されていたのです。マツダ車には熱心なオーナーがたくさんおり、そうしたファンが楽しんでいる様子や開発秘話をコンテンツとしてまとめ、いち早く公開することで、コミュニティの拡大に貢献していることがよくわかりました。
●Interview & Text : 大谷和利
●Photos : 西森 哲 / INFOTO / amana
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