テクノロジー企業のコンテンツマーケティング: トップトレンドと大手ブランドの事例

テクノロジー企業は、長い時間をかけて難解な製品やサービスを親しみやすく、コンセプトやセールストークを理解しやすく伝えることに挑戦してきました。

しかし、すでに気づいているかもしれませんが、コンテンツマーケティングの目的は売り込みではありません。そこで売り込みをしても現在の市場で注目を集めることはできません。

質の高いコンテンツマーケティングは、ブランドを真の意味で輝かせるために必要なものです。製品について直接言及せず、感情的なつながりによってオーディエンスの注目と想像力を捉えることで、結果をもたらします。しかし、サイロ化されたワークフロー、消極的なリーダーシップ、時代遅れの企業文化が影響し、多くのテクノロジーブランドは、こうした業界の変化になかなかついていくことができませんでした。

ようやく物事は変化し始めています。成功したスタートアップや若いテクノロジー企業は、文書化され、絶え間なく進化しているコンテンツ戦略の価値を理解していますし、最大手企業や何十年もの歴史を持つ企業もそのハードルを乗り越えています。この記事では、大手テクノロジー企業が、コンテンツマーケティングを利用して他社より際立つための方法を紹介します。

知識人向けジャーナリズム

ブランドがパブリッシャーになるという過去10年間の動きによって、数え切れないほど経験豊かなライターや編集者が生まれました。彼らは、マーケティングのために雑誌や新聞で記事を執筆し、業界を超えたブランドの記事を公開しています。製品を売り込むのではなく、魅力的なストーリーを語る彼らの取り組みは、驚くべき効果をもたらしています。

たとえば、リブランディングを実施したDell Technologiesは、自社のデジタルハブのひとつ、Perspectivesでコンテンツ主導かつオーディエンス中心のアプローチを取っています。「テクノロジーが実現したこと」をテーマに、トピックはスポーツやファッション、教育や環境にまで及びます。目標は、会社のデジタルトランスフォーメーション推進を担う経営幹部レベルの意思決定者から注目を集め、Dell Technologiesをその分野のリーダーとして再定義することです。

「(当社の経営幹部レベルの)オーディエンスは、あらゆるコンテンツフォーマットの中で、主張型のナラティブに一番反応します」とDell Technologies.com/Perspectivesの編集長であるAnna-Lee Muck氏は言います。「ストーリーは、会話を始める際の突破口になります。最初から高いレベル(ブランドレベル)のコンテンツマーケティングとストーリーテリングを活用することが重要です」。

これらのストーリーに共通するもうひとつの側面ですか? それはバーチャルリアリティが地球を救う方法を執筆した個人的なエッセイや、オートメーションが今後学校やスタートアップに与える影響について徹底的に研究し、思慮深く調査された記事に関係なく、一貫性のある一流のナラティブスタイルであることです。

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高い評価を受けているFirst Round CapitalのFirst Round Reviewは、質の高い長文コンテンツの素晴らしい事例です。5月にチームの新メンバーを募集した際、彼らは自分たちのことを「ハーバード・ビジネス・レビューとザ・ニューヨーカーを融合させたメディア」と表現しました。これは、彼らのジャーナリズムスキルや誠実さを考えると、正当な表現だといえるでしょう。

過去5年間で月間数十万人もの読者を集めたFirst Round Reviewは、テクノロジー企業のトップやエグゼクティブの独占インタビューを掲載しており、スタートアップの創設者やビジネスリーダーが記事を読んで、もっと読みたいと思わせる内容のコンテンツです。上手に設計された構成と工夫が凝らされた記事は、読者にとって重要な情報とインサイトを提供し、仕事に適用できる具体的なポイントと真の教訓が詰め込まれています。

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専門家のインサイト: 「当社の使命は、優れたテクノロジー企業やキャリアを築く方法について、できる限り高品質で戦術的なコンテンツを発表することです」とFirst Round Reviewの編集長であるCamille Ricketts氏は述べています。「量よりも質を重視し、実績を持つ人々とのインタビューでは、彼らが明かしてくれた戦術的アドバイスやインサイトのみを紹介しています。公開するすべての記事は、差別化を図るためにすぐに実施できる特定のアクションを掲載しています」。

ハウツーコンテンツ

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ブランドストーリーテリングは、ソートリーダーシップを発揮する可能性を秘めていますが、ユーティリティコンテンツ(困っている読者に即座に回答をもたらす情報や指示などの有用な記事)も同じくらい重要です。NewsCredの2018年版ベストコンテンツマーケティングブランド50選に選ばれたTwitterは、Twitter Business Outlookブログでそれを実現しています。オリジナルコンテンツとライセンスドコンテンツを組み合わせた構成で、プラットフォームを利用してビジネスを成長させるための簡単なステップ、ヒント、ベストプラクティスに焦点を当てています。

ブログ専用のソーシャルサイトはありませんが、コンテンツマーケティング担当者やソーシャルメディア管理者にとってはワンストップショップ(一カ所で必要なことをすべてできる場所)として、目標と目的を達成するためのブランド事例やハウツーを紹介し、インスピレーションが働くように設計されています。訪問者は、正面と中央に配置された検索バーから探している情報に直接アクセスし、「Twitterでイベントターゲティングを使用する方法」「メールとソーシャルメディアにおける執筆のヒント」「ツイートすべき内容: ツイートのアイデア不足から抜け出す6つの方法」などの記事から、思いがけないインサイトを得ることができるでしょう。

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大西洋の向こうでは、イギリスのテクノロジーリーダーであるSageが、有益でデータドリブンなブログSage Adviceを使って、(1日に3万件の顧客からの電話に裏づけられた)膨大なナレッジベースを活用する方法を見つけています。「よりスマートなビジネスの知恵」を提供するサイトの使命は、駆け出しのビジネスマンが商売を成り立たせるだけでなく、彼らの分野で成功するための学習を手助けをすることです。

コンテンツは、スタートアップ、小規模企業、成長中の企業、大企業、経理というように、ビジネスの種類別に分類されているため、カスタマイズされた記事の一覧にすばやく移動できます。その選択は広範囲です。Sageの顧客やオーディエンスの関心に合わせて特別に設計・配信されているため、どの分野を選択しても関連記事を次から次へと見つけることができます。

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同社の戦略は堅実に成果に結びついており、「前四半期には、コンテンツから生まれたビジネスリードが145,000件もありました」とデジタルマーケティング担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのNeil Morgan氏は話します。「現在、ビジネスリードの創出には40ポンドから50ポンドの費用がかかることを考慮しても、これまでの取り組みには金銭的価値があるということです」。

専門家のインサイト: 「まず、顧客のニーズや彼らが苦労していることを念頭に置きましょう」とMorgan氏は助言します。「そこに、どのような付加価値を提供できるでしょうか? 配信したいプラットフォームを理解し、時間をかけてどのコンテンツがどのプラットフォームに適しているかを調査しましょう。

最後に、サービスを収益化することを忘れてはいけません。いくら人助けをすると言っても、これはビジネスです。私たちは、優れた業績を上げるリードを創出できるかどうかを見据えて戦略を構築しました」。

際立ったビジュアル

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これまで、テクノロジーブランドやB2Bブランドは、デザインのベストプラクティスに時間と労力をかけてきましたが、少しずつ報われてきています。ストックフォト、委託業者の写真、デジタルアートワークを組み合わせた富士通I-Global Intelligence for the CIO(I-CIO)は、2018年のベストコンテンツマーケティングブランド50選にも選ばれ、一見の価値がある美しいサイトです。入念にキュレーションされた画像は、高品質のポートレートから創造的なベクターグラフィックス、そして訪問者にコンテンツのクリックを促すグラフィックイラストに至るまで多岐にわたります。

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テクノロジー分野にとっては大胆な取り組みですが、Intercomは、ビジュアル優先のブログ戦略によって異彩を放つカスタマーメッセージングプラットフォームを構築してきました。コンテンツに多額の投資をして、ストーリー、ポッドキャスト、書籍、インタビューなどを生み出した結果、オンライン上で最新のコンテンツに簡単にアクセスできる場所を作り出す必要がありました。そこで生まれたのがInside Intercomです。この新しいサイトでは、ソーシャル投稿やコンテンツ配信に利用できる豪華なビジュアルライブラリを作成し、各記事に付随する鮮やかで魅力的なオリジナルアートワークで読者を魅了しています。

「当社は、デザイナー主導型のスタートアップであり、強力なデザイン主導の文化を備えていると信じています」とコンテンツディレクターのJohn Collins氏とブランドデザインディレクターのStewart Scott-Curran氏は今回の大改修について説明します。しかし「より多くのコンテンツを制作することは、18カ月前に機能していたデザインと機能を修復しなければならないことを意味していました」。

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再設計の中で、チームは「ブログのすべての側面に対して、より編集的な感性に磨きをかけた」とCollins氏とScott-Curran氏は書いています。「当社のエディトリアルイラストに対するアプローチも含まれています。私たちは、それぞれの記事の題材を独自の方法で解釈するように、さまざまなイラストレーターに依頼してきました。これらの視覚的なメタファーは、読者の好奇心に火をつけ、私たちの文章にパーソナルなアプローチをもたらすことを目指しています」。

最後に、人間味とさらなる芸術的表現を加えるために、チームはサンフランシスコの画家であるJon Stich氏に依頼して、ブログライターのポートレートを制作しました。「これによって、ブログデザインにしても、製品にしても、Intercomのデザイン思想を反映した独自性、職人技、パーソナライゼーションを感じてもらうことができます」とディレクターは語ります。

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専門家のインサイト:「私たちは新しいデザインの美しさを誇りに思っていますが、一番の目標は、読者が当社のコンテンツを簡単に見つけ、消費しやすくすることでした」とCollins氏とScott-Curran氏は説明します。「私たちは、つながりとまとまりのあるエクスペリエンスを生み出すために、階層構造、タイポグラフィ、イラストに細心の注意を払いました。視覚的なインパクトを高め、ホームページによりシャープな視点を加えるために、メイン記事を1本公開したら、すぐに2番目と3番目の記事へと取りかかっています。

この階層構造を構築するには、デザインのバックボーンを形成し、ページに明確な構造を与えて、しっかりとしたグリッドレイアウトにすることことが必要不可欠でした」。

魅力的なポッドキャスト

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Dell Technologiesの「Trailblazers」ポッドキャストはPerspectivesの拡張版ですが、すべての番組がブログに関連している必要はありません。Edison Researchによると、世界中のテクノロジーブランドが、ポッドキャストという人気の高いオーディオコンテンツを採用しています。12歳以上の月間リスナー数は6,700万人に上り、そのうち80パーセントは番組の初めから終わりまで聴いています。

テクノロジーブランドのポッドキャストと言えば、GE抜きには語れないでしょう。GEは、クリエイティブなチャレンジを行い、「The Message」と「LifeAfter」を大成功へと導きました。ジャンルを超えたこれらの番組は、約800万ダウンロードを記録しています。「The Message」は全8話のSFスリラーで、「LifeAfter」は死後の世界におけるテクノロジーとAIの役割を探求したフィクションです。このような内容の番組を大手テクノロジー企業が手がけるのは予想外のことかもしれませんが、リスナーにとって魅力的なコンテンツであることは明らかです。まさしく、ポッドキャストの真骨頂はそこにありました。

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ポッドキャストでは、ブランドが制作する内容や、伝えたいストーリーの種類について制限を設けていません。主な目的は、真の価値と意義をリスナーにもたらすことです。クラウドベースのデジタルコラボレーションプラットフォームであるSlackの「Work in Progress」(2016年10月から2017年10月にかけて放送された隔月のポッドキャスト番組)は、衛星ラジオとポッドキャストのリスナーに「仕事の意義とアイデンティティ」について考える機会を提供しました。エピソードは仕事とプライベートのストーリーを織り交ぜ、ギグエコノミーと企業生活の問題や、フリーランスのキャリアサラリーマンへの復帰障害を持つ労働者といったストーリーを網羅しています。

「これは、ミュージシャン、パン屋、コメディアンたちのストーリーではありません。今の仕事に就くまでのストーリーであり、最も重要なのは彼らが過去と今の仕事に対してどのように向き合っているのかということです」とSlackのコンテンツ・編集担当ディレクターであるJulie Kim氏はインタビューで述べました。「一般的な関心が高い番組で、シリコンバレー業界だけではなく、より多くのオーディエンスにリーチしたいと考えています。私たちの目標は、新規ユーザーにSlackを紹介することであり、必ずしも既存のSlackのファンやユーザーにこれらのストーリーを紹介することではありません」。

専門家のインサイト: 「ストーリーテリングは、常にSlackのブランドの中核を成してきました。私たちは、当初から最高のブランデッドコンテンツを提供しようとしていたわけではありません」とKim氏は言います。「優れたストーリーを生み出す方法について考える ーー ただそれだけです。優れたストーリーはどこにでも転がっています。私たちは、押し売りにならない形で、Slackのテーマや価値観と働く人々を関連づけたストーリーを作成するようにしています」。

Anastasia DyakovskayaはNewsCredの寄稿者です。

元記事「Technology Content Marketing: Top Trends + Brands」は2018年7月24日にInsights.newscred.comに掲載されました。

この記事はNewsCred BlogのAnastasia Dyakovskayaが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

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