「AFEELA」CGで魅せる実写級の質感|ソニー・ホンダモビリティ

AFEELA 1

CES®2025で発表された、ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA」ブランドとして販売する最初のモデル「AFEELA 1(アフィーラワン)」。ソニーの技術とホンダの技術が融合し、さまざまな革新的技術の粋を集めた次世代型EV車として注目を浴びました。現在、アメリカ・カリフォルニア州でオンライン予約受付が開始されています。

この「AFEELA 1」のCG制作をアマナが担当しました。プロデューサーの鈴木健哉、鎌田昌俊、CGディレクターの羽田貴尚、CGレタッチャーの上見佳史、CADセットアップの志村祐輔に制作のポイントについて聞きました。

AFEELA 1
「AFEELA 1」のサイトより。

AFEELA1 
「AFEELA 1」のサイトより、アマナが制作したCG。

アマナのモビリティ専門チーム内の連携で実現した高品質CG制作

CG制作依頼の発端は、「amana CGX」のサイトをご覧になったクライアント担当者から。さまざまなCG制作を手がけており、もちろん車のCGも実績があることから、お問い合わせをいただきました。

「CES®2025の発表後にローンチされる、『AFEELA 1』Webサイトで使うCG制作をということで、実写レベルのクオリティでお願いしたい、とのことでした。当初、作成カット数はバリエーション込みで50カットほどでしたが、精査していく中で各アングルごとのバリエーションなどを考えるともっと数が増えそうでした」(鎌田)

高いクオリティを担保しつつ、期間内で全カットを納品するために、クライアントも巻き込んで協力体制を構築しながら進めていきました。

まずは、車両の3DCGデータ作成を、CADセットアップの志村が担当します。通常は量産用になった3D-CADデータをいただいたら、それをアマナの環境に合わせた3DCGデータにしてから作業開始となるのですが、今回は少し勝手が違いました。

「3D-CADデータとデザインデータなど、複数のデータを組み合わせ、使いながら最終的な形状に作り上げていくところからスタートしました。また、形ができあがったところに素材の質感を1つ1つ設定していく作業も、今回は3DCGで制作するカメラアングルで見える範囲に絞り込むことで、スケジュールを圧縮しつつ進めました」(志村)

まだ世の中に発表されていない製品をCGで作る場合、量産のCADになっていないことも多く、半分はデザインデータのみということもままあります。ですが、アマナでは「croobi」というモビリティに特化した3DCG制作を担うチームがあり、車のことを熟知したメンバーやスキルが培われていることもあって、データで不足している部分も的確に補うことが可能です。

「自分がやるべき3DCGデータ制作の部分は、表現の独自性やおもしろさよりも、正しいものを作らなくてはいけないところ。まずはその『正しさ』を作ることに注力しました」(志村)

AFEELA 1

AFEELA 1

次に3D制作を担当したのがCGディレクターの羽田です。志村からデータを引き継ぎ、アングルを決めてライティングを行いました。

「ライティングにはとても時間がかかるのですが、クライアントさんにも協力していただいて、打ち合わせの段階である程度決め込むことができたため、効率的に進められました。
『AFEELA 1』の中で最も特徴的なのが、インテリア。内装には手触りに優れたUltrasuede® が使われていて、高級な質感を損なわないように表現しないといけませんでした。起毛表現の強さを、一枚の画像として見た時にレタッチで細かく調整できるように、強さが違うものをいくつか事前に準備するなど、対応を工夫しました」(羽田)

AFEELA 1

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最終部分はCGレタッチャーの上見が担当です。志村や羽田とコミュニケーションを取りつつ、クライアントが目指す表現を意識して進めていきました。

「高級車はインテリアにメタリックやクロームのような特徴的な質感のパーツを使いますが、今回は強めのマテリアルではなくどちらかというとオーガニックな雰囲気があるところが特徴だったので、それを1枚の画像にしたときに醸し出せるようにしました。
また、ボディの色や内装には特にクライアントさんのこだわりが詰まっているから、それも意向に添えるように最後まで調整していきました」(上見)

AFEELA 1

AFEELA 1

「AFEELA」の魅力を引き出す、質感表現へのこだわり

無事に公開されたCG画像は、製品のインパクトとも相まって上質な世界観を存分に表現しています。限られた期間の中で、高いクオリティを保ちつつ、効率的に作業を進めるにはどのようなポイントがあったのでしょうか。

「通常は、志村がデータを作り、羽田が質感を整えて上見が仕上げ、とそれぞれのチームがリレー形式で作業をしていきますが、今回はすべてを連携して同時進行で行いました。クライアント側も協力してくださって、ベースとなるライティングやアングルを先に検証して進めていただいていたのが、時間短縮につながったと思います」(鎌田)

プロダクトページに掲載するカットのため、消費者が誤解をしないように色や質感を伝えることが必須条件。演出を加えすぎてしまうと色や質感が違って見えてしまうこともあるため、演出は極力シンプルに抑えつつも高級な空気感が醸し出せる表現を目指しました。

質感がついている完成された3Dモデルをベースに、ムービーやWebサイトなどへ展開するのが製品CGの通常の流れですが、新製品の場合は必ずしも完成された3Dモデルがあるわけではありません。データの足りない部分を補完しつつ、3Dモデルとしてベースをセットアップしたうえでビジュアル制作を完成できるのがアマナの強み。「croobi」をはじめ、さまざまなCG制作で培ってきた技術がチーム内で共有されています。

「車業界の共通言語があって、たとえば下記のような車の向きのことを『フロントクォーター』と呼びます。フロントガラスとリアドアのガラスの間の柱は『ピラー』で、位置によって『Aピラー』『Bピラー』と呼び分けます。『AFEELA 1』の内装に使われたUltrasuede®は高級車に使われる人工スエードですし、クライアントさんとの間でよく使う共通言語ですんなりとやりとりできるかも、コミュニケーションを密にしたい時にはポイントに。車案件が多いアマナなら、その点も問題ありません」(鈴木)

AFEELA 1

ボディカラーは車の第一印象を決める非常に重要なポイントで、今回の「AFEELA 1」に関しても、「Tidal Gray」は特にその製法から工夫を重ねた特殊な塗料を使用されているとのことで、ライティングによって色味が大きく変わるボディの再現性を、調整を重ねてギリギリまで突き詰めることができたことも評価していただけました。

「クライアントが狙っているデザインを理解したうえで、ハイライトをどこに入れるか、アングルをどう決めるかといった、プロダクトが最も正しく美しく見えるアプローチを加味する」と言う上見。アマナが作る実写レベルのCGは、どんなプロダクトであってもその真価を余すところなく表現できる技術力を備えているのです。

<案件クレジット>(クライアント以外すべてアマナ)
クライアント:ソニー・ホンダモビリティ株式会社
CGディレクター:羽田貴尚
CGクリエイター:徳永功、伊東栄二、齊藤優一、竹本英正、高山直紀
CGレタッチャー:上見佳史、沼波奨悟
CADセットアップ:鵜飼美生、志村祐輔
制作進行:洗豪
CGプロデューサー:鈴木健哉、鎌田昌俊

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<記事制作>
取材・文:大橋智子
トップ画像制作:中村圭佑

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PROFILE

株式会社アマナ
羽田 貴尚

株式会社アマナ
羽田 貴尚

CGデザイナーとしてキャリアをスタート後、静止画、動画問わず様々な案件を担当。MobilityCG専門制作チーム「croobi」の中心メンバーであり、CGディレクターとして多くの案件に携わる。

上見佳史

株式会社アマナ
上見 佳史

株式会社アマナ
上見 佳史

1997年にレタッチャーとしてキャリアをスタート。2013年より3DCGに関心を抱き、部署を異動。2019年からはリアルタイムコンテンツに興味を持ち、現在のRealtime Content Sec.に所属。

株式会社アマナ
志村 祐輔

株式会社アマナ
志村 祐輔

CGアセットシニアエンジニア。2010年よりCG業界でキャリアをスタートし、特に自動車、家電、精密機器分野の3D-CADデータの取り扱いに特化した経験を培ってきた。複雑な3D-CADデータを3DCG制作に最適化し、高精度なCGアセットを制作。高品質なビジュアライズを実現するため、精緻なデータ加工と編集技術を駆使し、実用的かつ高精度な3DCGデータの提供を行っている。

鎌田昌俊

株式会社アマナ
鎌田 昌俊

株式会社アマナ
鎌田 昌俊

バッグメーカーにてプロダクトデザイナーを経て、2018年にアマナへ入社。さまざまなプロダクトのCGIマネジメント(情報整理、品質管理、進行管理)を経て、現在はSales&Produce Dept.に所属。3D-CADデータを活用した3DCG制作を中心にビジュアルプロデュース業務に従事。多くのメーカーのマーケティング部、事業部、デザイン部の方々に伴走しながら、3D-CADデータ活用した企業課題解決に取り組む。

鈴木健哉

株式会社アマナ
鈴木 健哉

株式会社アマナ
鈴木 健哉

プロデューサー。90年代後半からCGデザイナーとしてキャリアをスタートし、ゲーム、映像、広告業界を経験して現在に至る。約20年前から携わる自動車CG案件のディレクション、プロデュースを得意とし、その領域は、静止画、映像、などの既存のコンテンツから車載GUI/HMI、CADセットアップ、自動車コンフィギュレーター、WebGL、バーチャルプロダクションなどのリアルタイムCGまで多岐にわたる。

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