こんにちは、アマナの絵師・村田です。
アマナには多くのクリエイターが在籍していますが、私はその中で初めて「絵師」として活動しています。今回は、案件制作や個人制作の一部をご紹介します。
力強いビジュアルや多彩な手法を重ねた独自の表現は、私の強みであり、長年レタッチャーとして広告制作に携わってきた経験から生まれています。
また、「生成AI」や「特殊なプリンティング技術」を取り入れ、手法を組み合わせながら新しい表現に挑戦しています。
現在はアマナ内外でVisual Artistとして活動しており、アート表現を通じてさらなる表現を広げていきたいと考えています。
私は幼少期からアートに強い関心があり、多摩美術大学でグラフィックデザインとアートを学びました。アマナにはレタッチャーとして入社しましたが、与えられた依頼に応えるだけではなく、自分のアートへの情熱を活かし、より能動的にビジュアル制作に取り組みたいと考えるようになりました。
2017年に「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」のビジュアル制作に携わったことをきっかけに、案件を通して自分の作品を発表していきたいと思うようになりました。
その後、「絵師」という独自の肩書きを確立しました。当時、アマナにはこの職種は存在しませんでしたが、人の感性を尊重する社風があったからこそ、現在もこの肩書きで案件に関わることができていると感じています。
最近の絵師の仕事をご紹介させていただきます。
PhotoshopのAI生成機能と絵師の手描きドローイングテクニックを駆使し、渋谷ハチ公前のOOHビジュアルと渋谷ジャック媒体を制作させていただきました。
作画提案から絵画制作、印刷提案と施工までビジュアルディレクションさせていただきました。
不室屋様の尾張町本店の新装開店に伴い、日本画のビジュアルを制作させていただきました。
まずは、レタッチャーとしてのキャリアの中で、レイヤー感覚が培われました。
絵師の仕事ではデッサンやドローイングの技術も重要ですが、作品をアウトプットする際には特殊なプリント技術を駆使し、インクを重ねて奥行きを表現しています。媒体の積層感をイメージしながらインクの厚みをコントロールできる点は、これまでの経験や知見が大きく生きていると感じます。さらに、適切な画像サイズなどの知識もあるため、案件制作にもしっかり対応できます。
レタッチの仕事と絵師の仕事の違いは、自分の提案をビジュアルの中にしっかりと定着させることにあります。自分の中に明確なビジュアル像がなければ、クライアントにも届かず、掲載されたビジュアルを見た方々にもメッセージが伝わらないと思います。だからこそ、日常の中でも力強いビジュアルを届けられるよう心がけて、制作に取り組んでいます。
絵師の仕事は、主にビジュアル制作を請け負っておりますが、案件の中だけでの制作提案だけでは、すぐに行き詰まってしまいます。
そこで、私は日頃からアート作品を作ることで、ビジュアル制作の中にリアリティーという奥行きを感じさせられると考えました。
アート制作において一貫しているのは、アンダーグラウンドな怪しさへの憧れと、一見美しくないものをアートとして昇華することへの関心です。モチーフとしては、夜の繁華街の裏路地の汚れた壁や落書き、ネオンサインなどを扱うことが多く、キーワードでいえば「夜」「事件性」などになります。
最終的には美しいと思える作品を目指していますが、その中にあえてドロドロした要素を内包することで、観る人の心の深層に届くのではないかと考えています。コンセプトも大事ですが、頭の中で思考を巡らせるだけでなく、行動することも大切に考えてます。人間臭さを含むからこそ、自然に心に馴染んでいくのだと思います。
木版、UV print、塗料、エアブラシ/1200mm×325mm×3
モチーフは「警察署の前の夜桜」です。
土台には木版を使用し、まずバーナーで黒く焼き上げた後、UVプリントにアナログのペイントやエアブラシを重ねて仕上げました。
木版は単なる四角い板ではなく、下側の側面に木の本来の凹凸を残しています。さらに、UVプリントの塗料を何層も重ねることで、色彩に奥行きを与え、デジタルとアナログが複雑に絡み合う重層感を表現しました。
ギター、UVprint、偏光塗料、ビンテージ加工
新大久保の老舗カスタムギターショップ「TC楽器」さまとのコラボレーションで制作した作品のひとつです。白いギターをご提供いただき、アートピースを3点制作しました。
コンセプトは「音で統治されている国を治める者の『呪物』」。
この作品では、あえて相性の悪い塗料を重ねて剥がれを生じさせたり、塗り重ねた層を削って下地を露出させたりすることで、多層的な模様と質感を生み出しています。
こうしたアート活動が、実際の案件制作に役立つことは少なくありません。
日頃の制作で試してきた手法や考え方を応用することで、ビジュアル提案の場で採用される機会も増えてきました。
まずは自分の考えをアート作品として形にし、展示を通じて人々の反応を感じ取る。そこから改良を重ね、培った感覚を案件制作の提案に活かしていく。こうした循環こそが、アーティストとしての良いサイクルだと考えています。
AI生成クリエイティブの登場は、制作のあり方に大きな変化をもたらしました。
私はそれを否定的に捉えるのではなく、自分にできることを模索しつつ、人間の感情や行動から生まれるアナログ的な創造性を強く信じています。
やがて、この対照的なアプローチが結びつき、作品の中で新たな表現や景色を生み出してくれることを期待しています。
それでは、皆様と作品を通して繋がれることを願っております〜
文・ビジュアル・撮影:村田武彦(アマナ)
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