本記事は企業の広告・ブランド担当者に役立つ本から、気になる一節を数回に分けてご紹介する連載です。読みながら、その本の“考え方”に少しずつ触れていただけます。
「BtoB企業にブランドは必要なのか?」……肯定的な意見、否定的な意見それぞれ見聞きします。はたして自社に当てはめるとどうなのか?判断のヒントになるブランドの重要性について紹介します。
~本コンテンツは、書籍『BtoBコミュニケーションの強化書』(山﨑方義著・一般社団法人日本BtoB広告協会編・日本工業新聞社刊)に掲載されている、BtoB企業におけるコーポレート・コミュニケーションの必要性、マネジメントの重要性について解説した内容を一部抜粋・編集したものです(この記事は第1回/全3回)。
No.2:BtoBのブランド発信はどのように設計するのか(11月19日公開予定)
No.3:BtoBブランドならではのサービス・ノウハウが強みになる(11月20日公開予定)
Kotler, P., & Pfoertsch, W.『B2B Brand Management』〈1.※〉ではBtoBブランドの重要性を裏付ける要因として、製品やサービスの類似化、複雑なソリューションの提供、価格圧力の3点を挙げています。
この3つの中で特にBtoB市場で強調すべきものがソリューションの提供です。どの企業の製品を選んでも違いがなく、特徴や品質で差別化が図れないコモディティ化や、顧客からの値下げ圧力が強い現象は、BtoCの市場でも共通する事項です。もちろんソリューション化もBtoCで見られますが、程度の問題だと受けとめてください。
以前のBtoB取引は製品やサービスをそのまま顧客に提供することが中心でした。ところが現在は「顧客の課題解決」がより強く求められるようになり、単体の製品やサービスはその一部に過ぎないという考え方が中心になってきたのです。このように取引が複雑になり、意思決定が高度になると、専門性に加えてブランドがもたらす信頼性や安心感が重要な指針になります。
BtoB領域におけるブランドへの影響要因とブランドの機能/出典;〈2.※〉
BtoBブランドの役割/出典;〈3.※〉
またKotler & Pfoertsch〈1.※〉はマッキンゼー等の調査結果から、BtoBブランドの機能のうち、情報効率の向上、リスク削減、付加価値やイメージの有益性の創造という3点が特に重要だと指摘しています。
顧客にとってブランド化された企業や製品の情報収集は容易ですし、製品の提供側もそれによって商機が広がります。またブランド力があるということは、これまでの実績や信頼性があるからで、それを選択することによって顧客は購買で失敗をおかすリスクを減らすことができます。それ以外にも付加価値やイメージ上の恩恵がブランドによってもたらされます。
田中 洋著『ブランド戦略論』〈4.※〉ではブランドの持つ情報機能について、知識のない顧客にとっても、専門家の顧客にとっても有効だと述べています。知識が不足する顧客は、よく知られているブランド名に依存して意思決定をすると考えられる一方で、知識が豊富な専門家の顧客は、ブランド名を見ただけでそこから多くの情報を引き出して、購買の意思決定に役立てることができるからです。BtoB領域でもブランドが有効なのは、このような専門家によるブランド知識を活用した意思決定スタイルがあるからです。
1.※Kotler, P., & Pfoertsch, W.(2006). B2B Brand Management” Springer Berlin Heidelberg
2.※〈1.※〉p.45
3.※〈1.※〉p.52
4.※ 田中 洋(2017).ブランド戦略論.有斐閣
(この記事は第1回/全3回)
No.2:BtoBのブランド発信はどのように設計するのか(11月19日公開予定)
No.3:BtoBブランドならではのサービス・ノウハウが強みになる(11月20日公開予定)
▼書籍紹介
BtoB企業は、人々の生活を支える社会基盤を提供する不可欠な存在です。ビジネス規模も大きく産業界において重要な役割を果たしています。本書は、BtoB企業ならではのコーポレート・コミュニケーションの特質と必要性、そのマネジメントのポイントなどを解説し、実務にも役立つように様々な視点からBtoBコミュニケーションを取り上げています。
▼書籍情報
書名:BtoBコミュニケーションの強化書
著者:山﨑方義著・一般社団法人日本BtoB広告協会編
出版社:日本工業新聞社
発売日:2025年6月12日
リンク:https://pub.nikkan.co.jp/book/b10135293.html
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文・編集:桑原勲
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