ブランドのイメージは、なぜ思った通りに伝わらないのか——イメージがズレる理由、揃う理由

デザインをつくる イメージをつくる ブランドをつくる 工藤青石
本記事は企業の広告・ブランド担当者に役立つ本から、気になる一節を数回に分けてご紹介する連載です。読みながら、その本の“考え方”に少しずつ触れていただけます。

ブランドのイメージは、意図した通りに伝わっているようで、実は少しずつズレていることがあります。そのズレはどこから生まれるのでしょうか。第2回では、ブランドイメージがズレる理由、そして揃う理由を具体的な考え方とともにひも解き、イメージを感覚や印象論で語るのではなく、構造として捉え直します。


〜本コンテンツは、書籍『デザインをつくる イメージをつくる ブランドをつくる』(工藤青石著・宣伝会議刊)から一部を抜粋・編集したものです(この記事は第2回/全3回)。

No.1:なぜ、いま「デザインとは何か」を問い直すのか――成果につながるデザイン、つながらないデザインの違い

No.3:なぜ、強いブランドほど「言葉」を設計しているのか――いいネーミング、ダメなネーミングの決定的な違い(3月13日公開予定)


イメージは三つのレイヤーで形成される

イメージという言葉を私たちは日常で何気なく使います。「このイメージがいい」「これはイメージが悪い」などとよく言いますが、ではイメージとは何でしょう?

動詞にも名詞にも使われる言葉ですが、動詞の「イメージする」は、想像する、思い描くと同義で使われているように思います。私がここで考察したいのは、名詞としてのイメージです。同じ名詞でも、鉛筆や椅子のように具体的な物質であれば、誰でも意識を共有できます。

しかしイメージは物質ではないので実体がありません。それにもかかわらず、「イメージがいい」という言葉でコンセンサスが取れてしまう。何を以て共有しているのかわからない、極めて抽象度の高い言葉でありながら意思疎通が成立する、不思議な言葉だと思います。

イメージは、単純な色や形では断定できない、複合的な要素で構成されています。絶対的ではなくケースバイケースで変わり、その構成要素は常に千差万別です。絶対的ではないということは、時や場所、タイミングによって評価が変化するということです。

同じ一つの物事に対するイメージでも、TPOによってポジティブに捉えられたり、ネガティブに捉えられたりすることが起こり得ます。そのように捉えどころがない存在である一方で、物事の評価において大きな意味を持っているのも事実です。

これが性能や価格であれば数値化され、容易に比較評価することができます。しかしイメージを数値化することはできません。アンケートによるイメージ調査は集計された結果を数値化していますが、イメージ調査でわかるのは認知度や好感度です。

好感度とは文字通り好ましいと思う度合いです。つまりイメージ調査でわかるのは、回答者の好みということになります。好きな人が多い=イメージがいいという評価は、本当にイメージを調査していることになるのでしょうか?私は、好みとイメージは違うと思います。

人に対するイメージを例に考えてみましょう。心象と言ってもいいかもしれませんが、1人の人物に対して抱くイメージは、自分と相手との関係性によっても変化します。それは、相手に対して持つイメージの〝深度〟が関係性により異なるからです。

どういうことかというと、見ず知らずの人が道の向こうから歩いて来たとします。その時私たちは、すれ違うまでのわずかな時間でも、まったく知らない人だからといって何も感じないということはなく、強そうな人だとか、エレガントな人だとか、相手に対して何かしらのイメージを持ちます。そのイメージを形づくっているものは、服装や髪型、顔つき、体格、身だしなみなど、平たく言えば見た目の印象です。これをイメージの深度1とします。

次は、初めて会った人と10分ほど話をした場合です。社交辞令のような会話でも、相手の見た目に声や話し方、表情などの情報が加わり、イメージが少し深まります。名前も、極端な例を挙げればサトウさんとスミスさんでは受ける印象が変わるように、イメージを形成する要素の一つです。これが深度2です。

では、初対面でもっと長い時間会話をする関係性ではどうでしょう。研修などで誰かと同じグループになったら、相手のことを知ろうとして、所属している部署や仕事の内容、出身地、経歴などを聞くのではないでしょうか。生まれも育ちも東京という人もいれば、海外で生活していた人、たまたま自分と同じ地元の出身という人もいるかもしれません。さらに好きなスポーツや趣味など、相手に関する情報量が増えれば増えるほど、イメージの精度は上がっていきます。これが深度3です。

この三つのレイヤーを端的な言葉で表現すると、一つ目のレイヤーはビジュアル。視覚的な要素だけを認識して形成されたイメージです。二つ目のレイヤーはインタラクション。声や喋り方、表情などから受け取る印象は、相手と関わって初めて生じる感覚的な作用と言えます。三つ目のレイヤーはインフォメーション。視覚的な情報や感覚的な情報で形成されたイメージに、年齢や属性などその人に関する具体的な情報が付加されることで、イメージはどんどん変化し、更新されていきます。

私たちは、変化する時間の不安定さの中でしか何かを認識することはできません。イメージがどんどん積み重なり、その人に対する心象として捉えたとしても、それは一瞬たりともとどまらず、時間の経過の中で変化していきます。常に変化しているということは、実体がないということです。流動的な存在でしかあり得ないのであれば、その人の存在を理解するためには、本質云々ではなく、三つの情報のレイヤーでしか捉えられないのではないでしょうか。

つまり、複数のレイヤーのイメージが積み重なることによって、その人物のイメージが出来上がっていると言えるのではないかと思います。実体とは真逆の掴みどころがない概念ですが、私たちはその人物の本質よりも、むしろイメージのほうが大事だと本能的に感じているのではないでしょうか。だからこそ相手に対して抱いたイメージによって、自分が下した判断や評価を信じているのだと思います。

ブランドのイメージも、この三つのレイヤーによって構成されています。少なくとも一流と呼ばれるブランドは、明らかにレイヤーで考えられ、実行されています。その整理がないままつくられたものは、表層的には面白そうに見えても、ブランドとして成長していくだけの基盤がないので、売れたところで一過性のブームで終わってしまうでしょう。デザインは一つひとつ完結しますが、ブランドは完結せずに続いていきます。ブランドは一つのイメージで成り立つものではなく、デザインが発するイメージがいくつも積み重なって構築されていくのです。

ブランドのイメージをつくる時は、1のレイヤー(ビジュアル)から順序を踏んで構築していくと効率的です。もしも初対面の人があなたに対し、あいさつも名乗ることもせず、いきなり自分の趣味の話を始めたら、おそらくあなたは驚き戸惑うでしょう。情報は、順番を無視して先立って与えても、うまく伝わりません。

きちんと伝えるには、順を追って段階的に関係性を深め、その深度に見合った情報を発信する必要があります。ブランドのイメージも同様で、相手との関係性の深度により、視覚的、感覚的、知覚的に情報を積み上げて形づくらないと成立しません。

これが例えば広告であれば、1のレイヤーだけで成立します。広告は瞬間的なコミュニケーションなので、大事なのはビジュアルであり、そこでどれだけ興味関心を引けるかがすべてと言っても過言ではありません。しかし実際には、あれもこれも知ってほしいという広告主の気持ちの表れなのか、2や3のレイヤーの情報も混ぜてつくられている広告をよく見かけます。

これは逆効果で、伝えたいことがうまく伝わらず、非効率以外の何物でもありません。そもそもビジュアルで興味を引かれなかった人は、それ以上何ら知りたいと思っていないので、細かい情報には見向きもしません。その点、階層構造を意識してつくられているホームページ、ウェブサイトでは、入り口にはアテンションの位置づけとして広告があり、そのリンク先に次の段階のインタラクションやインフォメーションがあるので、情報が整理されていると言えるでしょう。

三つのレイヤーのうち、ビジュアライズは最もわかりやすく単純なところですが、どういうイメージで捉えるかは受け手により個人差があるので、それを共有するのは難しいです。一つのビジュアルを10人が見たら10人全員と共有できるイメージもあれば、10人中1人にしかわからないイメージもあります。イメージのありようは目的によりさまざまなので、10人のうちの1人に伝えたいのか、10人全員に届けたいのか、ビジュアルをつくる時はまずそれを見極める必要があります。そして、どういう言葉だったらこちらが伝えようとしていることを10人が共有できるのか、個人差を超えられる共通項を探すのです。


(この記事は第2回/全3回)

No.1:なぜ、いま「デザインとは何か」を問い直すのか――成果につながるデザイン、つながらないデザインの違い

No.3:なぜ、強いブランドほど「言葉」を設計しているのか――いいネーミング、ダメなネーミングの決定的な違い(3月13日公開予定) 


▼書籍紹介

資生堂でのパッケージデザインやブランドディレクションを経て、イプサのクリエイティブディレクターを務める著者が、ブランドづくりに向き合うためのデザイン思考を実践的に整理した一冊です。デザインの本質から、イメージ形成、言葉の設計まで、具体的事例を通して考え方を学べます。

▼書籍情報

書名:デザインをつくる イメージをつくる ブランドをつくる
著者:工藤青石
出版社:宣伝会議
発売日:2025年3月17日
リンク:https://www.sendenkaigi.com/creative/books/zpz1gqkga/


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文・編集:桑原勲

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