2019年リーグ優勝を果たしたクラブを支えるコミュニティ「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」とは?

先日12月7日に行われたJ1リーグ最終節でFC東京に見事快勝し、優勝を果たした横浜F・マリノス。
彼らの優勝は15年ぶり4回目。2017年の天皇杯と2018年のJリーグ杯も準優勝という苦い思いを経て得た念願の勝利。
最終節の試合は、日産スタジアムにおけるホームゲームのチケットが前売り段階で完売を初記録してしまうほど。今回はそんな勢いにのっているクラブ横浜F・マリノスのマーケティング本部の取違亮大さんに取材を敢行。クラブを支えるサポーターが集う「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」について伺いました。

スーパーファンを顕在化させるために始まった「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」

ーー「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」が始まった背景を教えてください。

以前行った調査で、横浜市民で横浜F・マリノスに関心を寄せてくださっている人の割合はおよそ2割くらいだと分かりました。そして7年前くらいからその数値はあまり変わっていないこと、同じ横浜にあるDeNAベイスターズさんに対する関心度との格差に、大きな危機を感じていたんです。どのようにして関心層を広げていくかが、ここ1〜2年の大きな課題でした。広告やイベントなどのアプローチをしても、サッカーや横浜F・マリノスのことが大好きな人の外に全然声が届かないと感じていて。

一方、マリサポと呼ばれる、ファン、サポーターの皆さんによるSNS上での発信力の強さ、盛り上がりのすごさを感じる機会が年々増えていました。昨年、当時横浜F・マリノスに所属していた天野純選手が初めて日本代表に選ばれたのですが、ベンチスタートの状況の中で、横浜F・マリノスのファン、サポーターの方たちが試合中にTwitterで「#あまじゅんを出せ」ってつぶやき始めました。するとみるみる広まってTwitter内でトレンド入りしたんです。
こうした、スタジアムの中で特に目立つわけではないけれど、常にクラブを支え応援してくださり、熱い思いを通じて、チームのことや選手の魅力、グッズの情報にいたるまで、広く情報を拡散してくださる方々を我々は「スーパーファン」と呼んでいます。既にたくさん存在してくれている「スーパーファン」の方たちの声をもっともっと顕在化させたいと思い、2018年に始まったのが「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」です。

ーー実際にプロジェクトではどのようなことが行われているのでしょうか?

最初に、「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」のウェブで、無料登録をして頂きます。メンバーの方にこちらからお題を掲げてサイトにコメントを投稿してもらったり、リアルなファンミーティングという形でお客さんと一緒にスタジアムの施策やプロモーションを考えたりしています。月に1回ほどのペースで、これまでに15回くらい開催しました。

ーーファンミーティングで出たアイデアで実現したものはありますか?

今年の4月末に鹿島アントラーズとの試合をどう盛り上げるかを話し合い、実現したもののひとつが、大型フォトスポットです。
サポーターの「もっとスタジアムで写真を撮りたい」という声がきっかけでした。鹿島アントラーズと横浜F・マリノスは伝統のある戦いだから、フォトスポットには横浜F・マリノスの選手だけではなく、アントラーズの選手も入れてほしいと要望があったのは意外でしたね。さらに試合当日、フォトスポットの運営にも「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」のメンバーがボランティアで率先して担当してくれて。同じファンが写真を撮ってくれるので、撮り方もすごく上手いんですよね。アルバイトスタッフでは中々引き出せない笑顔が生み出されていて、ファンコミュ二ティの自走化の好例となり、「スーパーファンの力」のすごさが確信に変わりました。

ー一ファミリー層が多い横浜F・マリノスですが、ひとりで来られる方も多いとか。

日産スタジアムはキャパシティが大きいので、良くも悪くもチケットが取りやすい気軽さがあり、他チームに比べひとりでも来やすいのかなと思います。またSNSなどで情報を発信している人も多いので話が弾みやすく、スタジアムで新たなコミュニティが生まれているのではないでしょうか。サポーターの間で「推しの選手毎の会」など独自のコミュニティもたくさん発生しています。

ーー来場者における新規ファンやライトファンの割合はどうなっていますか?

今年8月末までの土日における日産スタジアム来場者の平均が約30,000人。そのうち、新規でお越しの方が全体の約7%、数年に1回程度が約7%、シーズンに2~3回程度が約10%ほどです。この、年間来場回数3回というのがひとつの大きな壁で、これを超えてもらえると、ファンとして継続して来場頂ける傾向が高いことが分かっています。

ーー3回来るまでがひとつの壁となってしまっているのですね。

ひとりでも好きな選手を見つけたり、スタジアムの空気感に感動したり、ゴールシーンなどで一体感を感じたりと、できるだけ偶然に頼らずに次の来場や、ファンになることへと繋がるモノ、コトと出会える工夫をしていければと考えています。今シーズンから始まったチーム密着動画の『The DAY presented by WIND AND SEA』もそうした狙いの一部に位置づけていて、選手たちのちょっとしたキャラクターや、いいところだけではない悔しい場面など、できるだけリアルな姿を共有したいと考えて、ロッカールームの映像なども発信しています。

勝っても負けても盛り上がれるスタジアムの空気感

初めて来場したお客様や年数回のお客様は、もちろん観に行った試合でチームが勝ったら嬉しいですよね。でもいろいろな調査で深掘りしていくと、負けても必ずしも不満になるわけじゃない。勝っても負けても、そこで得られるインサイトが何かというと、ひとつは「みんなで盛り上がれる一体感」や「スタジアムならではの空気感」なんです。そうした中で、音楽というのは人々の感情に訴えかけ、記憶にも残りやすい重要な役割を担っています。。横浜F・マリノスでは2017シーズンから、作曲家の佐藤直紀さんに作って頂いたオリジナルのアンセム(入場曲)を選手入場時に流しています。既にある曲を使うチームも多いですが、横浜F・マリノスのアンセムは完全なオリジナル曲で、とても好評です。

さらに2つめの施策として、ハーフタイムに公式オリジナルソングを、歌手のMINMIさんが歌ってくださっています。MINMIさんが2年前の天皇杯決勝でお子様を連れて、大阪から横浜F・マリノスとセレッソ大阪の試合を見に来てくださりました。決勝戦で横浜F・マリノスが負けてしまって、これ以上ない悔しさの中、MINMIさん一家は大阪に帰られました。新大阪に着いたら周囲にいたセレッソ大阪ファンに向かって、MINMIさんのお子さんが「本当は横浜F・マリノスの方が強いんだから!」と叫んだそうなんです。そのエピソードでもう、我々もファン、サポーターもMINMIさんに心を掴まれましたね。全体で一体感が得られるようにと歌にはみんなで参加できるような振り付けもあります。

ーー会場の盛り上がりは満足度向上に繋がりそうです。今までで1番効果が大きかった施策はどれになりますか?

試合のタイミングや状況によって大きく左右されるので、正直なところ一概には言えません。「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」を通して出されたアイディアを活かして、ひとつでも具現化していけるようにと考えています。また、最終節のFC東京戦に向けては、リアルタイムに試合結果が反映される「リアタイ順位表」という屋外広告を横浜駅で展開しました。最後に、職人のサインズシュウさんが、まるで印刷したかのような美しい文字を手書きで書いてくださるのですが、そのパフォーマンスが圧倒的で、普段F・マリノスやサッカーに関心のないような駅を利用する方たちも、皆さん足をとめていたのが印象的でした。屋外広告の新しい可能性を見出せたのではないかと思っています。

FC東京戦のチケットの売れ行きは、当然チームが優勝あらそいをしていることも影響していますが、それだけではなく、コミュニティの場づくりなど今までの積み重ねの結果でもあるのかなと思います。
また、横浜F・マリノスのファンはTwitterの熱量も高いのが特徴ですので、12月7日の最終節の盛り上がりに向け、Twitterでトレンド入りを目指しました。これも「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」のミーティングから生まれた案です。自分達だけが盛り上がるのではなく、周りの人たちを巻き込むような気持ちの変換を意識しています。

「#すべてはマリノスのために」というハッシュタグは選手たちに考えてもらい、公式から広めて世に出ていくトレンド入り企画だったのですが、無事に11月20日に日本のトレンド1位に留まらず、世界トレンド5位入りを果たすことが出来ました。

「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」を核としたファンのコミュニティ作りを積み重ねる

ーー今後の展望をお聞かせください。

今後も「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」を核としたファンとクラブが一緒に共創していける場作りに力を入れていきたいです。この2年間の積み重ねで、その土台が出来てきた感触はあります。
ファンの方ひとりひとりが、主役になれるような、そんな「横浜F・マリノス沸騰プロジェクト」を目指しながら、ひとりで来ても、観に来た試合で残念ながらチームが負けてしまっても、「スタジアムに行く意味がある」価値を伝えていくことや、感動を共感し合える仕掛けを丹念に積み重ねていきたいです。

【お詫び】

本記事の掲載当時、本文中の写真に不適切な写真を掲載しておりました。お詫びしますと共に訂正させていただきます。

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