人と人のつながりを可視化していく200万人以上のユーザーを誇るEightをドライブするコミュニティマネージャーのリアル

熱く語る、コミュニティマネージャー小父内信也氏

200万人以上のユーザー数を誇るSansan株式会社Eight事業部で、コミュニティマネージャーを務める小父内信也さんに、コミュニティ立ち上げから現在の運営についてお伺いしました。

紙の名刺がなくても、アプリで名刺交換ができる

Sansan及びEightで取り組んでいる「人脈を可視化する」事業

Sansan株式会社は2007年に創業し、「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションとして、「Sansan」と「Eight」という2つのプロダクトを展開しています。名刺を軸としたサービスで、BtoB向けの「Sansan」とBtoC向けの「Eight」を展開し、プロダクトを通じて煩わしい名刺のデータ化はもとより、人脈の可視化や活用を実現しています。

社員個々が名刺を持っていても、会社の資産にならないのは意味がないと考え、この事業を12年推進してきました。テクノロジーの発展により、なんでもデジタル化する時代となって久しいですが、どうしていまだに名刺がアナログのままなのか驚くところです。12年前全く市場が無いところから業界を築き、現在では法人向けクラウド名刺管理サービス市場シェア81.9%を誇ります。
2018年に、私がコミュニティ立ち上げを提案し、Eightのコミュニティが立ちあがりました。現在は、私がコミュニティマネージャーを務め、コミュニティメンバーに手伝ってもらっています。Sansanでも同様の時期にコミュニティに注力しはじめ、同じく、1名のコミュニティマネージャーのもと運営しています。

コミュニティマーケティングを導入するために行ったこと

私自身はSansanの3期目に入社して、最初はデーターセンターを統括していました。今年で9年目になり、サポートチームと、スキャンセンターと、コミュニティの3チームを統括しています。
サポートチームを統括していた頃、毎日頂くユーザーの問合せの熱量を目の当たりにしました。それから次第にユーザーの声を聞いてみたくなり、プライベートで直接会ってみることにしました。実は当時私自身は、企業向けのプロダクトであるSansanを主に担当していたので、個人向けEightについては詳しくありませんでした。それもあって、Eightがここまでユーザーに愛されて使われている深意を知りたくなったのです。

元々プロダクトアウト型ビジネスのSansanは、価値を作って市場に投入していくスタイルでしたので、ユーザーの声に傾けるというスタンスはほぼありませんでした。しかし、テレビコマーシャルを投入した際、最近はなかなかマスマーケティングが利かないなーと感じることが多くなりました。認知が広がっても、実際使ってくれることは結びつかない時代になってきたということです。翻って、そんな時代にEightを愛して使い倒してくれているユーザーと向き合いたい、と思うようになっていきました。

最初は、アンバサダーマーケティングから入りました。実は昔に友人からアンバサダーマーケティングについての本をお勧めされていたのですが、当時はピンと来ませんでした。しかし、実際ユーザーと向き合い始めてから、本を熟読するとSansanの事業と非常に親和性があると感じ始めました。他のコミュニティマーケティングの事例も勉強し、Sansanとして重要なことだと確信していきました。しかし、最初は会社から理解を得られないと思ったので、プライベートで熱狂的なユーザーにコンタクトを取り傾聴を繰り返しました。半年間、ユーザー分析と交流を行った結果、プロダクトの改善要望などのフィードバックを約100件引き出すことで確実なデータをもって、遂に会社を説得出来ました。

成功した要因の一つ挙げるとすれば、ユーザー分析と抽出にはかなりパワーを使いました。複合的な要素を16分割して分析し抽出した熱狂的なファンを探り当て、私が一人一人に会いに行ったのです。私は長距離通勤のため移動時間を活用して分析することができ、通常誰もしないところをやりきれたのも非常に大きな要因でした。
そもそも、コミュニティマーケティングはまだまだ新しい分野で、理解されないことに苦しんだこともあります。単に飲み会へ行きまくっている人と思われてしまったことも多々あります。実際には、分析した熱狂的なユーザーにコンタクトし交流した上で、個々にケアしたり束ねたりもしているのですが。中長期的な視点で直ぐに売りに走らないなど試行錯誤の末、かなりのバランス感覚を身につけ、この1年でEightのコミュニティでは150人の仲間が出来ました。
現在では、アンケートを投入すると1日で50本程のフィードバックが返って来るようになりました。ヘビーユーザーさんと直接つながることでリアルな意見の吸い上げが以前よりやりやすくなったことで、コミュニティマーケティングの意義をようやく会社も理解してくれ、中長期的な目標をもって運営出来るようになりました。

つながりの成功体験がひろがっていくオフラインイベントの様子

試行錯誤を重ねて徐々にベストな形を模索

2018年8月に、オフラインで第1回ファンイベントを開催しました。それは失敗であり成功でした。失敗の要因としては、あまりにも力を入れ過ぎてしまったことが挙げられます。20人のヘビーユーザーを招待し、完全にお客様としてもてなしてしまいました。具体的には、一人単価15,000円費用をかけ、事業部長のトークセッション、プロダクトマネージャーのトークセッションに加え、デモでリリース前の機能を紹介して、食事も豪華で、後日お中元もお送りしました。莫大な労力と費用をかけた結果、会社からは費用対効果を問われ、参加してくれたユーザーからは主体性を引き出せず、多くの反省点が残りました。今となっては、その20人が今もコアファンとなったので、完全なる失敗とは言えないのですが、おもてなしアプローチはコミュニティ形成では不要ではないかと気づきました。それ以降、私は「ユーザー様ではなく、未来を良くする仲間だ!」と言い続けています。コミュニティメンバーも仲間だと思っていてくれて、熱い活動を繰り広げてくれるので、波長が合っていると感触を得ています。
その後1年の間に、全国各地でコミュニティイベントを開催してきました。私がユーザー調査し、熱量があり使用頻度も高いユーザーを、イベント定員の5割新規招待します。残りの5割は前回参加して頂いたリピーターの方にして、コミュニティの基盤作りと新陳代謝を繰り返します。東京・大阪・福岡・仙台と随時コミュニティイベントを開催してきました。オフラインである程度基盤が出来ましたので、現在はオンラインでの活動の育成を戦略的に行っています。オンラインメンバーは現在150人程度で、イベントに参加したことのあるオフラインメンバーは400人程度です。オンライン活動とオフライン活動は、ぐるぐるまわして次第に輪を大きくしていくことが大事だと考えています。

至るところで愛される仕掛けが散りばめられています

敢えて伴走型コミュニティマネージャーであるということ

通常のコミュニティマーケティングの場合は、「自走型」が推奨されていると思います。しかし私のコミュニティマーケティング論からすると、「自走型」ではなく「伴走型」が重要なのです。名刺でつながるビジネスのためのSNSというEightのサービス特性上、どうしてもそのコミュニティで情報商材の営業を始める人の登場などの危険性をはらんでいます。ですから、コミュニティマネージャーが伴走して、サポートする必要があると思っています。
コミュニティ内では、活動や交流は自由です。東京・大阪・福岡・仙台の4拠点があり、それに加え、北九州も盛り上がってきている感触があります。北九州は、シェアオフィスも多く、ユーザーさんが出会いを強く求めています。
各拠点にコミュニティリーダーがいて、イベントを企画して運営してもらい、私がイベント当日に現地へ行って司会するという感じです。会場は各支店で、「Eight プレミアムナイト」というイベント名で開催しています。2部制で、第1部は新製品情報やユーザー自身が登壇します。そして、2部はただただミートアップタイムです。ありがたいことに、自然とみなさんが盛り上がるので!Eightへの熱量も凄いのもありますが、実はもう既に彼らはオンライン上で出会っているのも一因です。オンラインで出会っていた方々を、オフラインで直接会える場を提供するので、最高潮に盛り上がるというわけです。

熱く語る、コミュニティマネージャー小父内信也氏

コミュニティマネージャーへ贈るメッセージは「とにかくやれ」

コミュニティマーケティングが盛り上がっているからとか、コミュニティマーケティングはこうあるべきと学問的に入った瞬間、誰もが興ざめしてしまいます。机上の空論を並べても、人はついてきません。とにかくパッションから入って、人々の声に耳を傾け、色々試してみて、失敗すればいいと思います。そこから学びがありますから。コミュニティメンバーが多くなっても、素地がしっかりしているので、そんなに大きなトラブルはないです。万が一、少し気になることがあった場合、直ぐに個別でヒアリングしたりしてコミュニティを伴走しています。
コミュニティは信頼の場であって、コミュニティマネージャーが提供すべきことは「信頼」の場を提供することです。それさえあれば、みんなが安心して参加出来るのです。

最終的には日本中をつなぎ、出会うべき人が出会う場を提供したい!

私は、現状の交流をコンスタントに継続していき、最終的には日本中をつなぎたいと考えています。Eightの150人のコミュニティサイズがちょうど良いかというと、全然足りないと思っています。来年再来年で0を一つずつ増やして行き、1万人を見据えています。もしそれだけ増えても、コミュニティマネージャーは1人で良いと考えています。現在の150人のコアメンバーの方がしっかりとコミュニティのカルチャーを築いてくれているので、コミュニティマネージャーは伴走しながらしっかりと見守れば、ユーザーのみなさんが自発的に盛り上がっていってくれることを確信しています。
コミュニティのコアメンバーは、なぜそんなに熱量があるのかというと、彼らは元々Eightが好きな上に、Eightによって広がる可能性を見出しています。そして実際にEightで成功体験があるということが挙げられます。例えば、ペット業界で起業した方は、Eightで出会ったパートナーとビジネスを始めることが出来たそうです。出会いが核となってイノベーションが起こってきた事実があるのです。そういった事例がEightのコミュニティの核となって、日本中で多発すると想像するだけで、ワクワクします!

ビジネス商談で10件会って1件ようやく成立という状況では、勿体ないと考えています。10件会って10件商談が成立する世界を、我々は見ています。私自身も4回の転職は、すべて人のご紹介でした。そういう縁に恵まれた経験から、私はつながりこそがチャンスを生むと確信しています。Sansanには、出会いをサイエンスするR&D部門もあります。出会いは熟成するので、その時会った世界はなんでもなくても、時間が経つと何かが起きるかもしれません。そういったチャンスのイノベーションとして我々はプロダクトやコミュニティというプラットフォームを提供し続けています。

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