ユーザー数100万人以上を誇る「Backlog」の自走するコミュニティ運営の秘訣とは?

「チームで働くすべての人に」をコンセプトに、チームのコラボレーションを促進して、仕事が楽しくなるようなWebサービスを開発し、福岡に本社を構えている株式会社ヌーラボをご存じでしょうか?なかでも、実にユーザー数100万人以上を誇るプロジェクト管理ツール「Backlog」は、そのユーザーコミュニティの具体的な施策が気になるところ。

今回は、コミュニティマネージャーとして活動を始められた五十川慈さんと、東京を基軸としてコミュニティマネージャーとして7月ヌーラボにジョインした谷山鐘喜さんにインタビューをさせて頂きました。

ヌーラボの15年間は「コミュニティ」とともに歩んできた

五十川さん:私は、東京のベンチャー企業で5年のキャリアを積んだ後、福岡へのUターンを機にコミュニティマネージャーとしてヌーラボに入社しました。ヌーラボは福岡というコミュニティ要素が強い地域で、かつ数人のエンジニア出身の創業者が2004年に立ち上げた会社で、そのメンバーも技術コミュニティで出会ったという経緯があります。Backlogを作ってからも、特に専任の営業担当はおらず、ユーザーさんの口コミと招待(インバイト)のみで、ユーザー数を伸ばして来ていました。

そういった背景のもと成長してきたヌーラボの経営陣には、「コミュニティ作りにもっと力を入れていきたい」という想いが募っていました。そのタイミングで入社したのが私です。Backlogのユーザー同士を意図的につなげるような「コミュニティ」を育てていくことをミッションとして、取り組みをスタートしました。ユーザーさんに運営を任せながら、今では北海道から沖縄まで拠点を持ち、イベントの参加者数は、のべ800名を超える大きなコミュニティとなっています。

「なぜコミュニティメンバーは自ら動くのか?」の問いに答える2つのこと

五十川さん:BacklogのユーザーコミュニティであるJBUG(Japan Backlog User Group)では、Backlogユーザーであるコミュニティメンバーが自主的に動いてくれるという特徴があるのですが、長い間「なんでこんなにも熱量高く動いてくれるのだろう?」という想いがありました。企業やサービスによっては、代理店制度を採用して、ユーザーが動けば動くほどユーザーのメリットになる仕組みを作っているケースもあるそうですが、ヌーラボは、割引やインセンティブなど、金銭的なメリットは用意していません。

コミュニティイベントは、「プロジェクト管理を学ぼう」という軸で、2ヶ月に3回くらいのペースで、各拠点のイベントが通算80回開催されています。また、同じく「プロジェクト管理」をテーマに、年に一度、JBUG主催の大きなイベント「Backlog World」を開催しています。2019年1月に行われた「Backlog World 2019」の運営には、運営委員長をはじめざっと30名ほどのBacklogユーザーが携わって頂き、ユーザーにより自主的に運営されました。

なぜ彼らは動くのか、その理由の一つ目は、Backlogによる成功体験をお持ちであるということです。Backlogを使ってプロジェクトがうまく行ったとか、チームワークが良くなったという経験があり、純粋にBacklogが好きとおっしゃっていただけます。

二つ目は、ビジネスではないつながりを求めているということです。コミュニティでのつながりをビジネスに活かそう!という強い気持ちがある人は、運営メンバーとしては続かない傾向があります。あの人があんなにがんばっているから、私も力になりたいという想いが強い人がコミュニティのリーダーになっていきやすいです。

コミュニティマネージャーとしての具体的施策

五十川さん:JBUGは、2年でここまで大きくなってきたと見られがちですが、実はそんなことはありません。コミュニティを育成するのは非常に時間がかかります。経営陣がコミュニティを大事にしてきた15年があるからこそ今があるのだと思います。

実際、意識的に「コミュニティ作り」に取り組み始めた最初の1年は、コミュニティの自走とは程遠い状況でした。ユーザーに「どうしたらコミュニティとして成長していくか」を率直に相談してみたり、「あなたはこの地域の運営リーダーとしてやってくださいね」とお願いしてみたりするなかで、徐々に自走の状態ができていったように思います。

また日常でも、コミュニティのメンバーへの接し方では、2 つポイントがあります。一つ目は、「きちんとスポットライトを当てること」です。コミュニティの主体はユーザーであり、ヌーラボはあくまでサポート役。コミュニティマネージャーが目立ったりヒーローになったりするのではなく、ユーザーの素敵な行動に全力でスポットライトを当てるようにしています。そうやってしっかりとスポットライトを当てるように動いていると、「あのような人になりたい」と思ってくださるユーザーも増え、次のコミュニティリーダーの創出につながっていくように思います。

二つ目は、「オンラインでのコミュニケーション」です。たとえばBacklogの場合、ユーザーがTwitterを利用していることが多いので、オンラインコミュニケーションといえばTwitterです。SNSに参加していない他の人も見ることができるというのが結構大事で、FacebookのグループとかLINEなどの閉ざされたところだとあまり意味がありません。「内輪盛り上がりとなってしまうのでは?」と聞かれることがありますが、ある程度の「内輪感」はロイヤリティ醸成のために必要だと考えています。誰にでもオープンだけれど、少しカルチャーがあり、最初はコミュニティの雰囲気を掴み、次第に新メンバーも発言していくという流れです。

一方、イベントの開催に関する進行管理などは、BacklogとTypetalkで行なっています。閉ざされた空間ですべき会話と、オープンな場で他の人にも伝えたい会話を分けているようなイメージです。誰かが明言したわけではないけれども、暗黙の了解で個人個人の感覚でその使い分けを理解しているような気がします。そもそも、業界の特性としてSNSに親和性があったのも一因だと思います。

谷山さん:僕として今後は、ITリテラシーの素地がない人でも参加できるようにしていきたいです。そうすると、今まででは拾い上げることができなかった意見を吸い上げることが出来るかもしれないですね、エンジニアだけに留まらずに経理とか法務といった管理系の部門の人にも興味をもってほしいです。

谷山さん:現行の基盤を大切にしつつ、コミュニティメンバーや、JBUG開催地が順調に増えていき、ひいてはユーザーが増えることを目指して活動していきたいです。そのために、発信力もつけていきたいです。メギー色ではなく、タニー色を出していきたいです。
五十川さん:谷山さんが新しいコミュニティマネージャーとして活躍することを、楽しみにしています。

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