コミュニティ3.0−今、企業が取り組むべきコミュニティマーケティングとは?

「コミュニティ」−これまであらゆる場面で語られてきた言葉だが、今、また注目を集めるワードとなっている。特に、ビジネスシーンにおいて使われることが増えている。特に2017年頃から一部の実践している企業の取り組みが注目され始め、2018年には関連する本も多く出版されて、マーケッターなども注目し始めたという状況ではないだろうか。

そこで、この記事では「コミュニティ」のこれまでの変遷と、これからのコミュニティのあり方、特に企業がコミュニティを運営するにあたって理解しておきたい背景や考え方をまとめていく。時代の変遷と共に変化してきた「コミュニティ」を、“1.0”から数えると、今のコミュニティは“3.0”の時代と言える、というのが本記事の分類だ。もっとも筆者が勝手に言っているだけだが、その根拠と共に整理させていただきたい。

「コミュニティ」とは?

コミュニティの変遷を見ていく前に、まず「コミュニティ」とは何かを定義しておく必要がある。特に、本記事での「コミュニティ」は何を指しているかも明確にしておくことで誤解のないようにしたい。

ここでいう「コミュニティ」とは、「ある目的のために集まった三人以上の集まり」と定義したい。ある目的のために集まった“二人”だと「パートナー」であり、組織にはならない。三人以上集まることではじめて”組織”となり、関係性が複雑化してくる。そのためマネジメントしたり、活性化させたりという様々な方法論が必要となってくる。もちろん男女関係や夫婦関係に代表されるように、二人の関係性でも複雑ではあるが、本記事では、特にマーケティング的な観点からの整理としたいため、一対一ではなく、一対n、もしくはn対nの関係性が生まれる“三人以上”と定義する。

それでは”1.0”から順にみていこう。

コミュニティ1.0

コミュニティ1.0は、一言で言うと「アナログのみによる繋がり」だ。もっと言えば、人と人がフィジカルにつながり形成されているネットワークだ。これは古代から人が集まれば自然発生的にうまれてきたものであり、まだ狩猟していた頃も群れとなって狩をしていたし、農業をするようになっても集団で作物を育て、そして集落や村、そして国家を形成するようになり今に至る。そこまで大きくなくとも近所付合いなどを通して地域のコミュニティには誰もが属していた。

マーケティング的には、こうしたご近所付合いや主婦の井戸端会議的な中で買わされる「あの商品いいわよ」といった会話が、自然発生的な口コミマーケティングだったのだろう。なお、それを意図的に作ったのがネットワークビジネスだが、今回は議論が複雑になるので、あまり深入りはしない。

コミュニティ2.0

コミュニティ1.0からコミュニティ2.0への変化のきっかけは、インターネットの登場だ。これにより、これまで1.0の世界ではオフライン(電話は含む)でのコミュニケーションが主体であったものが、オンライン上でコミュニティ形成が完結できるようになった。日本では、ニフティのパソコン通信や2chのようなサービスにおいて当初形成されており、その後、mixiやGREEといった初期のSNS、そして、FacebookやTwitter等のSNSが入ってくることにより、オンライン上に多くのコミュニティが形成されていった。

マーケティング的にも、この時代は大手コミュニティプラットフォームを活用したマーケティングが中心であり、課題はユーザーの個人情報が取れないことと、プラットフォームの規約の範囲内でしかマーケティング活動が行えないことであった。

コミュニティ3.0

コミュニティ2.0からコミュニティ3.0への変化は、スマホの登場だ。スマホが単なるインターネットとは違ってコミュニティに与えた影響は大きく以下の二つがある。

①ネットを携帯できる可動性
②目的別にアプリ化されるバーティカル性

まず一つ目の「ネットを携帯できる可動性」については、いうまでもなくスマホは携帯電話なので、どこでもネットに接続が可能となる。これにより、本当の意味でのオンラインとオフラインの融合が可能となった。コミュニティ2.0の時代でも「オフ会」と呼ばれるフィジカルな集まりはあったものの、あくまでオンライン発のミートアップだった。それに対して、3.0の世界では、オフライン→オンラインの流れが構築出来るようになり、これによって、オンラインとオフラインが相互に作用し合えるコミュニティ形成が可能となった。これは例えば、マーケティングで言うと、オフラインイベントをフックにしてその場でできた繋がりを維持するためにオンラインの仕組みを用意しておきユーザーに会員登録〜継続的なコミュニケーションを取ってもらう場の提供を行うことにより、ゆるやかにコミュニティを形成していく、といったことが可能となる。

二つ目の「目的別にアプリ化されるバーティカル性」というのは、スマホは基本的にアプリによって成り立っているが、その多くがテーマ別・目的別にアプリが提供されている。つまり、ユーザーは自分の興味関心にあったアプリをインストールすることで、より深い知識を得たり関係性を構築することが可能となる。そして多くのアプリは利用にあたって会員登録が必要となっているが、これをアプリ内のコミュニケーションに使うと、それはすなわちコミュニティと言える。結果、多くのアプリは、イコールコミュニティとして存在していることが多い。これは同時に、コミュニティ2.0時代に依存していた大手プラットフォームからの解放も意味している。

コミュニティ3.0をマーケティング的にまとめると、企業は、大手プラットフォームに依存せずに独自にコミュニティを形成し、直接顧客とコミュニケーションを取ることが容易となっている。そしてそれは、オンライン、オフライン両方で可能となっており、これまでは、代理店が用意するグループインタビューなどの手法によってしか、なかなか直接顧客と接することができなかった企業側の担当者も、容易に双方向のコミュニケーションが可能となっている。今、多くの企業が「コミュニティ」に注目しているのも、この点にある。

3.0時代に企業がコミュニティを形成を行う理由

なぜ、今、多くの企業が「コミュニティ」を作ろうとするのか。それは、顧客と直接コミュニケーション出来るから、というのが最大の理由だ。もちろん、売上を増やすためということもあるが、それは適切なコミュニケーションの結果である。インターネットの普及によって、多くの企業が直接メディアを“触る”ことができるようになった。それまでは、テレビや新聞等の限られた“枠”を持っている代理店にお願いしなければ広告を打つことすらできなかったが、無限に広がるネット上には自由に誰もがアクセスできるので、企業が直接広告を出稿することもできるし、情報発信することも可能となった。しかし、マス広告の延長線上に形成されてきたネット広告の仕組みも、とはいえマス広告的な発想であることには変わりなかった。つまり情報が企業から生活者へという一方向的な流れのままだった。それはコンテンツマーケティングなどの情報発信型のマーケティングにおいても同様だ。

しかしコミュニティマーケティングにおいては、主役は企業ではなく生活者だ。企業は場を提供したり、そこに参加する生活者(=潜在を含む顧客)をエンパワーすることが役割となる。コミュニティの中でユーザーとなった生活者が活躍すればするほど、その人は企業へのエンゲージメントが高まり、ファンとなっていく。そしてそれが周りへと伝わりファンが増えていく、そして最終的には売上の向上へとつながっていく、というのがコミュニティマーケティングの考え方だ。実際には、時に泥臭い運営が必要となり簡単なことではないが取り組む価値はあるし、少なくとも双方向的なコミュニケーションを企業が直接行えるということは魅力的だ。「コミュニティ3.0」の時代だからこそ、こうした可能性が広がっているのであり、それに取り組む企業が増えていると言える。今、コミュニティ形成について実践、もしくは検討している方は、こうした時代背景と特徴を踏まえたコミュニティづくりを行っていただければと思う。

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