金融サービスにおけるコンテンツマーケティングを成功させるコツ

ターゲットに的確に情報を届けるには、扱う内容がわかりづらく複雑であればあるほど、かみ砕いて受け手の認知コストをさげる努力をする必要があります。例えば金融業界において、先進的にコンテンツマーケティングに取り組む企業はどのような情報の見せ方をしているのでしょうか。海外の事例からポイントを紐解きます。

金融サービスにおけるコンテンツマーケティングを成功させるコツ

金融サービスのコンテンツマーケティング戦略を成功させるには、教育、関係構築、信頼を軸にコンテンツを展開する必要がありますが、同時に、それらの話題をオーディエンスにとってわかりやすい方法で伝えていかねばなりません。しかし、Roth IRA(退職年金の一種)や住宅担保ローンのように、複雑でやや “不愉快”なテーマを扱う金融サービスブランドにとっては、口で言うほど容易なことではありません。

一方で、消費者は金融関連のコンテンツに自分の時間を割きたいと考えていることは確かです。その裏付けとなるデータをいくつかご紹介しましょう。

Experian社の最近の調査によると、調査対象となったZ世代の約半数(49%)が、パーソナルファイナンス(個人の資産管理)についてもっと知りたいと考えています。これはZ世代のオーディエンスの興味がすでに高まっていることを意味します。楽しみながら学べる情報で彼らを惹きつけ、彼らの金融リテラシーを向上させられるか否かは、ブランドの手に掛かっていると言えるでしょう。

CNBCとAcornsの“Invest In You Savings Survey(投資のための貯蓄調査)”によると、資産管理に関して、アメリカ人の75%が、専門家やオンラインサービスの助けを借りず、自分で管理していると回答しています。言い換えれば、消費者は重要な決断に際して、金融に関する主要なトピックを自分自身で調べているということです。

コンテンツマーケティングを実践することで、金融サービスブランドは、消費者の生活向上をサポートする、信頼に足る情報機関としてのポジションを獲得することができ、それはブランド力をアップさせる大きなチャンスとなり得ます。

コンテンツによる、つながりの構築

Brandpoint 社のレポート“State of Content Marketing for Financial Services(金融サービスにおけるコンテンツマーケティングの現状)”によると、金融サービス業界のマーケターがもっとも有効だと感じたコンテンツ形式は、75%がインフォグラフィック、44%が動画、37%がブログであるという結果が出ています。

金融サービス業界のマーケターは、新規顧客にリーチし、既存顧客のロイヤルティを高めるうえで、いずれの形式においてもコンテンツマーケティングが有益だと認めており、ビジネスに直結するコンテンツマーケティングの効果を次のように挙げています。

・ブランド認知度の向上(61%)
・顧客との関係構築(60%)
・顧客教育(53%)

もちろん、コンテンツマーケティングの計画立案には、課題がつきものです。そもそも、金融業界においてはコンテンツに関して多くの制約があり、厳しい規制の中で、さまざまなコンプライアンス要件を遵守しなければなりません。コンテンツに細かい修飾語や但し書きを追加せざるを得ない場合でも、対話を続け、読者を離さないよう努めるのは至難の業です。コンプライアンス上の課題はさておき、金融コンテンツには複雑なトピックが多くあるため、コンテンツクリエーターは、オーディエンスを退屈させない方法でストーリーを伝え、情報を共有する方法を見つけなければなりません。

また、“Edelman’s 2021 Trust Barometer(2021年エデルマン信頼度調査)”によると、金融機関に対する消費者の信頼度は、2020年から2021年の間に急激に低下しています。これは、金融ブランドが顧客の信頼を再構築するには、真摯かつ意識的に取り組む必要があることを示しています。

このようなハードルがあることは確かですが、説得力を与え、最終的には収益を促進するコンテンツマーケティングを行うことは、十分に可能です。もし、あなたが何かインスピレーションを得たいのであれば、金融サービスのトップブランドが実際に実践しているコンテンツマーケティング戦略と戦術のポートフォリオをご覧ください。

金融サービスにおけるコンテンツマーケティングのベストプラクティス

Santander Bank

Santander Bankは、コンテンツを活用して見込み客にアプローチすることで、多くの成功を収めてきました。同行の“Prosper and Thrive”というコンテンツハブは、2016年当時にミレニアル世代を意識して制作されたもので、瞬く間に100万回以上のサイト訪問と20万件のソーシャルエンゲージメントを獲得しました。

Santander Bankは、この実績をもとに、2017年に中小企業を対象とした、“Business First”というコンテンツ主導のウェブサイトを立ち上げました。

“Business First”は、起業家や中小企業の経営者向けに、実用的なアドバイスや戦略、そして彼らにインスピレーションを与えるようなサクセスストーリーを数多く提供しています。記事や動画はインタラクティブでわかりやすく、経営のさまざまな段階にいるビジネスパーソンを対象にしています(中小企業経営者向けのタイムリーな“Stories of Resilience”ウェビナーなど)。

このサイトは、特定の業界の中小企業経営者向けにつくられたコンテンツとストーリーテリングを通じて、ターゲットに対して継続的にインスピレーションを与え続けることを目指しています。

イリノイ州北部を拠点に多数の金融クライアントを抱える総合マーケティング会社Chartwell Agencyの社長Rebecca Eppersonは、「人は他人の中に自分を見出すものです。個人がどのようにあなたのチームと連携し、ブランドの製品やサービスを使用してくれたかを共有したり、紹介したりすることは、同じような状況に直面する他の人々が前向きな成果を想像する際に役立つのです」と述べています。

ここから得られるtips:
あらゆるニッチに向けて、パーソナライズされ、カスタマイズされたコンテンツを制作しましょう。「小さな子供のいる家庭と退職者に、同じニュースレターを送っても無駄です」とEppersonは言います。「それぞれのニーズや欲求、関心事はまったく異なります。もちろん、重なる部分もあるかもしれませんが、ブランド側の視点ではなく、彼らの視点からつながりや関わりを考えるようにしてください」。

Synchrony

小売業向けクレジットカードの発行で知られるSynchronyは、“State of Pay”と題した大掛かりなコンテンツイニシアチブに着手しました。CNBCと提携したこのプロジェクトは、「ビジネスの強化と成長に向けて革新的な方法を模索する人々のために、コマース、決済、テクノロジーに関する、現在、そして次世代の新しい手段を紹介する」ことを目的としています。この取り組みによって、SynchronyはCMI 2019アワードのファイナリストに選出されました。

State of Payは、人々の支払い方法がどのように変化しているかを調査し、小売商取引のオピニオンリーダーへのインタビューを掲載しています。 CNBCがパートナーになっているため、コンテンツは、CNBCのチャンネルやソーシャルメディアでも配信されます。

サイトには、あらゆる統計データやショートムービーのほか、“4 Trends Shaping Retail(小売業を形成する4つのトレンド)”のように記事を掲載しているコンテンツもあります。

ここから得られるtips:
オピニオンリーダーは非常に強いコンテンツ力を持っています。金融サービス企業は、大手報道機関と提携することで、経営幹部の声をより広範囲に届け、ブランドとしてのインサイトを増幅させることができます。

Acorns

Acornsは、購入額を自動で切り上げ、余分な小銭を株式に投資してくれるアプリです。アプリの認知向上のため、同社はGrowというオンラインマガジンを自社内で制作し、専任の金融専門ジャーナリストを雇って運営しています。初年度(2016年から2017年)には、500万人のサイト訪問者を獲得しました。

画像を多用したカラフルなサイトを見てみると、多くのコンテンツが、あまり所得の高くない若年層をターゲットオーディエンスとしていることがわかります。堅苦しく、退屈な投資の略語は見当たりません。

このマガジンは、たとえそれが小さな一歩だとしても、そこから読者が自分たちで資産管理していけるようになることを目指しています。コンテンツは、貯蓄、投資、収益、支出、借用(動画と記事の両方)にカテゴライズされ、読者の悩みや疑問に寄り添うように設計されています。

すべてのコンテンツには「お金」に関するフックがありますが、サイドビジネスを推奨するコンテンツや、ユーザーがNFTを使用してアートで利益を得るノウハウ記事等が掲載されていることからもわかるように、同ブランドは金融とライフスタイルを融合させることで、魅力的かつ現代的なコンテンツを継続的に提供しています。

ここから得られるtips:
ターゲットオーディエンスを魅了するには、彼らのモチベーションや興味を理解し、エンゲージメントを維持する方法を見つけることです。「金利や、新しい製品・サービスについて語るのではなく、ストーリーテリングに力を注ぐべきです」とEppersonは言います。

オーディエンスの信頼に応える

金融サービスブランドにおけるコンテンツマーケティング戦略は、オーディエンスのニーズに沿ったものでなければなりません。マーケターはそのうえで、顧客がどのように情報を探しているかを理解する必要があります。オーディエンスは「バンクスピーク(銀行用語)」で検索しているわけではないのです。

「数年前、あるクライアントと仕事をしたのですが、そのクライアントのコンテンツは社内用語を多用していて、それが弊害になっていました」とEppersonは語ります。そのクライアントは、顧客が求めていた「退職の専門家」や「法人担当銀行員」ではなく、「ウェルスマネジメント(資産管理)アドバイザー」や「商業貸し手」といった言葉を使用していたのです。

求められている内容を、顧客の言葉で表現したときに初めて、私たちは大きな転機を迎えることができました」と彼女は言います。

ターゲットオーディエンスと自社の提供価値を理解したら、最後のステップは、シンプルで有益、かつ教育的でありながらも面白いコンテンツを制作することです。資産に関するトピックを扱う以上、消費者は信頼できるリソースとして信頼に足るブランドのみを選びたいと考えていることを忘れてはなりません。コンテンツは、その信頼性を高める最良の方法のひとつなのです。

元記事「How to Develop Financial Services Content Marketing That’s “On the Money”」は2021年6月11日にspringboardに掲載されました。
この記事は、IndustryDiveのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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コンテンツマーケティングの本場であるアメリカで、業界を牽引するリーディングカンパニーであるIndustry Dive。国内唯一の独占パートナーであるアマナがその集合知を活用し、成果へと繋がるコンテンツマーケティングをサポートします。
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