DXやICTを活用して社会課題を解決する「Smart World」の実現を目指すNTTコミュニケーションズ。後編では、同社による企業のDX推進サポートの実態について伺います。前編で紹介した「NeWork」をはじめ、数々のDXソリューションを活かしながら、どのようにして企業の新規事業立ち上げや社内改革を後押ししているのでしょう。顧客企業のDXを推進する“DX Lander”の野呂田学さん、佐藤良幸さんに伺いました。前編も併せてご覧ください。
前編でお伝えした、SNSなどでも話題のオンラインワークスペース「NeWork(ニュワーク)」。こうしたDXソリューションを組み合わせて提案することに留まらず、NTTコミュニケーションズが主宰する共創コミュニティ「C4BASE(※1)」に所属する企業に向けてDXを前提とした事業を一緒に考えたり、組織レベルでのDX推進をサポートしているのが「DX Lander」と呼ばれるイノベーションの水先案内人です。
※1…個⼈の想いを起点に、夢を語り、旗を⽴て、仲間を集め、個⼈・企業・社会をつなぐ4thプレイス(新しい活動を行う場)として、社会的に意味のある・価値のあることへと繋げる共創コミュニティ。
「『DX』と言っても人によって捉え方が広いと思いますが、我々DX Landerが行うのは大きく2つあります。まずは新規事業創出を目指す企業の方々とともに、そのアイデアを一緒に出し合うこと。新規事業と言ってもテーマは広く、ミッションはあるもののどこから手を付ければいいかわからない場合も多い。そうした段階からアイデアを出し合い、事業創出まで併走していきます。
もう一つは組織が抱えるDXの課題解決です。特にデータの利活用を課題に感じている企業が多いので、現在どのようなデータがあり、どうすればそのデータを活用できるかを、ワークショップを通して一緒に解決していきます」(佐藤良幸さん/DX Lander)
「C4BASE」では70名ほどのDX Landerによるサポートだけでなく、所属メンバーのインプットの場として、共創のヒントとなるようなテーマを据えたセミナーを開催したり、ディスカッションやワークショップで出てきた新規事業のアイデアをもとに、パートナー企業や子会社と連携してプロトタイプを生み出す体制をつくることも。できあがったプロトタイプは一般の方にも体験していただける場をつくり、世間の需要や実際の使用感をリサーチできる仕組みを築いています。
データの利活用は先述の通り、多くの企業にとって課題となっていることの一つ。顧客データをはじめ、事業の過程でさまざまなデータを取得してはいるものの、どう活用していいかわからない場合が多いといいます。
「基本的に1社が持っているデータだけでは、あまりいい利用シーンが見つからないことが多いんです。そこで、我々が最近よくやっている案件では、業界を巻き込んだデータ利活用を目指すことが増えています。『C4BASE』の大きなメリットは、所蔵する企業同士をつなげながら、企業が持っているデータを掛け合わせて議論を進められること。さまざまな企業が所属しているからこそ、業界を巻き込んだデータ利活用のアイデアを膨らませることができます」(野呂田学さん/DX Lander)
「C4BASE」は、まさに企業と企業をつなぐハブのような存在。1社だけではなし得なかったことでも、DX Landerを介して複数の企業がつながり、業界各社を巻き込むことで、実現できることの可能性が広がります。「C4BASE」の大きな魅力は、DX Landerの先導によって「共創」を行えることにあるのです。
早稲田大学教授・入山章栄さんのインタビュー時に上がった、組織の構造的問題がゆえにDXが推進できないという日本企業の課題。「DXはコーポレートトランスフォーメーションでもある」という話もありましたが、DX Landerのお二人は企業の組織的なDXの課題をどのように感じているのでしょうか。
「『C4BASE』のメンバーは志のある方が多いのですが、企業によって程度の違いはあるものの、企業内が縦割りがゆえに情報のサイロ化(※3)が起こり、DXが進められない場合がよくあります。経営層が覚悟を持ち、現場に裁量権を委ねられていなければ、DXの実現は難しいと感じています。
私たちは現場担当者の『そこをなんとか打破したい』という燻る思いに火をつけながら、上層部にも理解が得られるよう進めています」(佐藤さん/DX Lander)
※3…部門ごとには情報が得られているものの、それらの連携が取れていない状態。データを統合してビッグデータを形成できず、DXの推進を阻害する要因となる。
「また、従来のNTTコムの営業では、企業の情報システム部門の方々とお話することが多く、ソリューションを単体で売ることがメインでした。しかし、DX Landerとしてやっているのは、お客様のビジネスやエンドユーザへの提供価値から考え、テクノロジーでサポートすること。そのため、我々がお付き合いしているのは事業部門の方々です。単にデジタルを使えばいいということではなく、事業にしっかりと寄与するDXを考えることが、我々の役割だと思っています」(野呂田さん/DX Lander)
コロナ禍でさらに急務となったDXですが、これまでは“少し遠い未来のもの”として捉えられがちだったテクノロジーであっても、急速に現実的なものとして認識され始めたという嬉しい変化もありました。
「従来だと、突飛なアイデアはまだまだ実現しないよね、という雰囲気があったと思います。しかし、コロナ禍においてリモートで仕事することが当たり前になったり、VRが使われる場面も増えました。我々もお客様も、これまであまり現実的に感じていなかったアイデアが、実はすぐに使えるものだということをリアルに感じるようになったんです。そうなると、人は新しいことにチャレンジしたり、新しいことを議論していくことに前向きになる。コロナの流行はいいことではありませんが、さまざまなテクノロジーの活用が後押しされる状況になっていると感じます」(野呂田さん/DX Lander)
また、新しい価値観に向かうマインドが高まるとともに、ワークスタイルの変化があったことも、共創を進める助けとなっています。
「ワークショップ一つとっても、今までは1日かけて対面で一気にやることが多かったんですが、最近はまずリモートワークショップを2時間やってみる、というライトな取り組みも増えています。もちろん一気に進める良さはありますが、新しいやり方だとお客様と気軽に話すことができ、それが共創のハードルを下げることにもつながっている。
短時間でリモートワークショップを行ったり、はたまた『NeWork』を活用したりと、そのときの状況に合わせて選べる選択肢が増え、新しいことをポジティブに捉えられるようになったのは、共創やDXにとってメリットも大いにあったなと思います」(佐藤さん/DX Lander)
DX Landerのミッションは、NTTコムが掲げる「Smart World」の実現に加え、DXを軸にした次のビジネスを生み出す「Next Smart」も叶えること。次の時代のビジネスには、業界全体を巻き込んだ事業の創出やプラットフォーム構築に加え、“日本ならでは”のDXの発展を期待しているといいます。
「新規ビジネスをやっていくと、『それってすでにGAFAでやっているよね』という話が出てきがちなんです。でも、日本特有の美意識や文化を反映できれば、独自の事業も生まれるのではないかと思っていて。たとえば『心と心がつながる』というのも日本特有の文化のようなもの。文化や精神面での特色をICTで実現できれば、世界レベルで見たときもチャンスが見出せるように思います。テクノロジーを使って均質化するのではなく、差別化し、独自の文化を発展させていく。それができれば、もっと楽しい未来を描くこともできるのではないでしょうか」(佐藤さん/DX Lander)
NTTグループが培ったDXノウハウやテクノロジーの活用、そしてグループ各社やパートナーも含めた体制構築によって、課題発見から実装まで、ともに走りきることができるのが、NTTコミュニケーションズが提供する企業のDX推進サポートです。その先に描くのは、“ワクワクする未来”。そのためのDX活用であり、共創だということを、DX Landerが見据えるビジョンからあらためて認識できたのではないでしょうか。
イラスト[top]:前田 直子(amana DESIGN)
AD[top]:片柳 満(amana DESIGN)
文・編集:徳山 夏生(amana)