DX時代のマーケティング戦略に、なぜコンテンツが重要か?

あらゆる業界でDXが急務となり、これに伴って企業が顧客情報を取り扱う機会と、その量が増えている今。世界で高まるプライバシーへの意識の高まりを背景に、企業は個人情報の扱いによりセンシティブにならなければならない状況になっています。

前編では、GDPRをはじめとした世界の個人情報に対する現状や、日本の改正個人情報保護法、進みゆく脱・個人情報の時代におけるマーケティング戦略について解説。後編では、なぜ今あらためてコンテンツ中心のマーケティングが企業に必要なのかをお伝えします。

Netflixも行うコンテンツ接触情報の活用

今までは企業が顧客とコミュニケーションする場合、クリエイティブを作り、広告代理店を通して配信プラットフォームやメディアに委託し、ターゲット層のペルソナをセグメントして広告を配信。プラットフォームやメディアを経由して、配信先の消費者の年齢や性別、居住地域、年収などの情報がフィードバックされるという、個人情報を起点としたマーケティングの形が王道とされてきました。確かにこのモデルが有効な場合もありますが、脱・個人情報の傾向が強くなる今、だんだんとその効力は下がりつつあります

そこで活用したいのが、コンテンツを中心に人々の感性や価値観をとらえるコンテンツ・ドリブンマーケティング。マルチチャネルにコンテンツ配信し、顧客や消費者がどのコンテンツにどのように接しているのかを分析。そこから見える価値観や興味関心、感性をもとにコミュニケーションを行っていくというものです。

ネット配信作品として史上初めてエミー賞を受賞し、Netflixの成長を後押ししたと言っても過言ではないオリジナルドラマシリーズ『ハウス・オブ・カード』がその例です。同作は、90年代にイギリスで放送されたテレビドラマ『ハウス・オブ・カード』を原作に、監督にデヴィッド・フィンチャー、主演にケヴィン・スペイシーを迎え、アメリカを舞台にリメイクした作品。本作が生まれるまでには、視聴者が触れるコンテンツを分析したデータが使われています。

Netflixは元々DVDの宅配からスタートした企業。コンテンツ一つひとつがどのように試聴されているかを徹底的に分析していた同社は、分析結果から「イギリスの原作テレビシリーズ『ハウス・オブ・カード』が何度も一気見される傾向にある」、「俳優ケヴィン・スペイシーが出演するサスペンス作品の人気が高い」、「デヴィッド・フィンチャー監督が手がけるサスペンス作品が人気」の3つの要素をピックアップ。これらを掛け合わせて作られたのがNetflix版『ハウス・オブ・カード』なのです。
出典:UpX Academy

Netflixはコンテンツを作るとき、個人情報を重要視しません。世界中に広がる顧客に対して、年齢や性別などの個人情報をもとにデモグラフィックを作るのは非常に非効率だからです。そこで活用したのが、顧客がどんなコンテンツをどこまで見ていて、次にどのコンテンツを見たのか、という顧客とコンテンツの接触情報この内容を分析し、結果をもとに次のコンテンツ開発に活かしているのです。

Netflixのプロダクト責任者、トッド・イェリンは「個人情報を使ったマーケティングビジネスっていうのは『黄金の林檎』のようなものだ。確かに貴重だが、我々はそこに絶対に手を出すことができない」と語り、個人情報を使ったビジネスを行わないことを明言しています。

感性と価値観をマーケティングする時代へ

いま、Netflixのようなコンテンツメイカー以外の企業でも、自社のコンテンツ開発とコンテンツを通じた顧客とのコミュニケーションが行われています。ポーラの「MIRAIBI」や、オリックスの「MOVE ON!」がその例です。

ポーラのライフスタイルメディア「MIRAIBI」。

オリックスの情報発信サイト「MOVE ON!」。

各企業やブランドが、コンテンツを通して顧客と価値観や感性を共有し、どのコンテンツにどれほど触れているかをフィードバックとして受け取り、分析をもとにまた新たなコンテンツを制作・配信する。そうすることで、本質的なマーケティング活動を行うことができます。

これまでは、多くの人へ届けることを前提に広告代理店に任せれば成果が出るようなマーケティングの仕組みが構築されていました。しかし、DXが急速に進む今、企業自身が顧客のデータを扱うことに主体的にならなければなりません

「20代後半・女性・関東圏在住」といったペルソナをもとにコミュニケーション施策を考えるのではなく、コンテンツを通して顧客の価値観や感性を知り、企業の価値につなげていく。そうすることで、よりデータドリブンにマーケティングの成果を追求すると同時に、顧客体験を豊かなものにすることが可能なのです。

また、広告を見てもらうためには配信し続けなければなりませんが、コンテンツは資産として企業の手元に残ります。コンテンツは一度公開して終わりではなく、た中長期的な視点で活用することで、費用対効果を向上させることにもつながるのです。

データ・ドリブンに顧客体験を豊かにするマーケティング

では、企業自身がコンテンツを開発する際、どのように行うのがいいでしょうか?

たとえば、企業の視点からブランドや製品について深く訴求するクリエイションコンテンツや、有識者やメディアの協力を得てつくるコラボレーションコンテンツは企業独自の質の高いコンテンツになりますが、ここで重要なのはコンテンツは質のみならず、量も必要であるということです。

統計データを正しく扱うためには、一定量以上のサンプルが必要ですよね。それと同じように、データ・ドリブンにコンテンツを扱い、企業のマーケティングに活用するためには一定以上のコンテンツの量が必要なのです。一定量以上のコンテンツを定量分析することにより、ユーザーの価値観や感性が可視化され、データドリブンにコンテンツの「質」を向上させることが可能になります。

そして、「量」を担保するために活用したいのがキュレーションコンテンツです。ライセンスの手続きが行われている公開済みの外部メディアなどのコンテンツ(※)を掲載することで、オリジナルコンテンツやタイアップコンテンツに比べて制作時間を大幅に短縮でき、その分量を確保することができます。
※外部メディアなどのコンテンツを掲載する際、そのまま掲載するとGoogleなど検索エンジンからコピーコンテンツと認識され、サイトの評価が落ちるため、システム側で転載コンテンツであることを明示する(canonicalタグの設定)必要がある。

DX時代、コンテンツは顧客と企業を結ぶタッチポイントそのものです。NetflixなどのDX先進企業が行うように、数多くのコンテンツを発信、それらをデータとして分析し、そこから顧客の価値観や感性を抽出すること。それは企業がデータ・ドリブンにマーケティングの成果をあげながら、顧客体験を豊かにするための最適解であると言えます。

撮影:清水 北斗(amana)
AD・デザイン:片柳 満(amana DESIGN)
編集:徳山 夏生(amana)

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