インナーブランディングに欠かせない社員を巻き込む体制づくり

インナーブランディング施策の1つ、理念浸透。プロジェクト成功のカギを握るのは、社内にプロジェクトを浸透させるアンバサダーの存在です。一体どのような人物が適しているのでしょう? 今回はインナーブランディングのプロジェクトを“発火”させる、社内体制づくりについてお伝えします。

アンバサダーは社内を巻き込む「インフルエンサー」

「理念浸透」の狙いは、全社に企業理念を行き渡らせ、しなやかで自律的な組織をつくること。しかし、経営層がトップダウンで叫んだだけでは浸透させることは難しいものです。社員に共感してもらい、「自分はこの理念をもとにこうしたい!」と内発的動機を抱いてもらえなければ、理念は根付きません。

そこで、上ではなく“隣“から理念をじわじわと広げるために、プロジェクトの「アンバサダー」を募りましょう。アンバサダーはいわば社内のインフルエンサー。部署を跨いでプロジェクトに対して熱量の高い社員を数名から数十名配します。すると、他の社員はすでに理念を理解したうえでプロジェクトに邁進するアンバサダーの姿を自然と目にすることに。アンバサダーの言動に触れることで、どんな理念のもと、どんな組織をつくろうとしているかが染み渡るように伝播していきます。

アンバサダーに適した人材は、合理的な人よりも熱量を持って自主的に動いてくれる人。そのため社内公募を実施し、立候補してもらうのがベストです。難しければ、各部署で該当する人物をピックアップして声をかけます。

【アンバサダーには企業に合ったオリジナルの命名を】

「アンバサダー(大使)」という名前、ちょっと仰々しいですよね。名称はそれぞれの会社に適した形に変えることをおすすめします。たとえば、「エバンジェリスト」「イノベーター」「ムーバー」など。企業理念に基づき、「ファーストペンギンズ」と名付けた会社もありました。任命されたら誇りを感じられるような、企業カルチャーにフィットした命名がポイントです。

不平不満をうけとめる準備を

各部署から任命したアンバサダーは、ほとんどの場合、各自が普段の業務を手がけながらプロジェクトを兼務することになります。そのため、各部署でアンバサダーをバックアップする体制づくりは必要不可欠。たとえば業務時間の10%はこのプロジェクトに割いていいと明言する「10%ルール」を採用し、上長の承認を得たり、他の社員にも認知を促すことが大切です。

そもそも人は変化を恐れる生き物。少なからずプロジェクトに精力的なアンバサダーの姿にいい顔をしない人が出てくるもの。アンバサダーの熱を保ち、社内の理解を促すためにも、経営層や運営側はプロジェクトが会社にとって極めて重要な施策であることを、何度も繰り返し伝えていきましょう

社内報、イントラネット、オフィシャルサイト、ポスターといったあらゆるメディアを活用し、手を変え品を変えながら社内へ伝え、プロパガンダとしてプロジェクトを後方支援していきます。

【社内伝播に欠かせない「可視化」の役割】

フランスの革命家・ナポレオンの有名な絵画に『ベルナール峠からアルプスを超えるボナパルト』があります。前脚を上げた白馬にまたがったナポレオンが、美麗な赤いマントをまとい、高らかに右手を上げているその姿は、勇ましく、凛々しい印象を受けます。

ですが、これは実際の姿ではなく、誇張して描かれた英雄の勇姿。ナポレオンは同じ絵を4枚描かせ、各地で巡回展示させました。美しいビジュアルを先に知らしめることで、「ナポレオンは強くすばらしい英雄だ」「我々の上の立つべき人だ」というイメージを浸透させていきました。つまりはブランディングに成功したのです。

「リーダー」「信条」「シンボル」「繰り返しのコミュニケーション」の4つが、プロバガンダの必須要素。ナポレオンのビジュアルブランディングには、学ぶべきことが多そうです。

サステイナブルな取り組みを叶える体制とは?

インナーブランディングの取り組みは、社内のメンバーだけで計画・実施するのがベター。専門部署や人員を立てられればなおいいでしょう。

しかし、実際は売り上げに直結しない「コストセンター」として捉えられるデメリットがあったり、社内の上下関係や部署間のセクショナリズムなどの社内政治的な枠組みを超えて、横断的なプロジェクトを進める障壁が高い場合も。そこで外部の人材をうまく活用して、社内政治の外にいる人間に任せるのもひとつの手です。社外パートナーを選ぶときは、自社にないスキル、スキームを持つ相手と組むのがセオリーです。

【まとめ】チームのための環境づくり、安心づくりを

社内横断型プロジェクトの運営体制づくりは、通常業務や部署の同僚、上長と摩擦をおこさないようにすることが大切です。運営側や経営層はアンバサダーを決めたらお任せではなく、いかにアンバサダーが動きやすい環境をつくれるかに注力しましょう。外部パートナーは、プロジェクトを守り、アンバサダーに勇気と安心を与える存在にもなってくれるでしょう。

インタビュー・文/箱田高樹 デザイン/下出聖子(amana design studios)イラスト/諸橋南帆(amana)

 

メンバープロフィール

 森川 綵

  株式会社アマナ ブランド戦略室 ブランドストラテジーディレクター

マネジメントコンサルを経て、ブランドコンサルティングに従事して20年以上。企業CI、事業ブランド化、サービス開発、店舗ブランド開発など多様なブランディングを経験。戦略的クリエイティブで企業の進化や変革の支援を目指す。

 

メンバープロフィール

 村上 英司

  株式会社アマナ ブランドディレクター

グラフィックデザイナー、Webディレクター、インタラクティブプランナーを経て、現職。企業のインナーからアウターブランディングを中心に、デジタルプロモーション、イベント開発や店舗制作などコンテンツ制作を通して、多角的なブランド開発を行う。

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