インナーブランディングの必要性を感じていても、いつやるべきなのか迷う企業も多いことでしょう。始めるタイミングはいつが適切なのか、企業のインナーブランディング支援を行う佐藤勇太がお伝えします。
企業理念を社内に浸透させるには時間がかかるもの。始めるタイミングは、早いに越したことはありません。「人がすぐにやめてしまって人材が定着しない」、「新しい事業や製品を生み出せなくなっている」など具体的な課題を感じてからでは遅いのです。
「フランクリン・プランナー(※1)」で使われている緊急度と重要度に分けた時間管理のマトリックスを使うと、企業活動の優先事項を4つに分けて考えることができます。
※1…1981年にアメリカのハイラム・スミスが設立したフランクリン・クエスト社から生まれた手帳。効率的に時間管理を行い、生産性を向上させるツールとして世界中で使われている。
具体的な課題に直面していない企業にとって、インナーブランディングは、緊急度は低いが重要度は高い【B】にあたる事柄。通常は、締め切りが迫っている業務や、急を要するトラブル・クレーム対応など、緊急度も重要度も高い【A】をこなすことに追われてしまうもの。比較的緊急度の低い【B】はおざなりになってしまいがちです。しかし、イノベーティブな企業ほど、【B】にしっかりと取り組み、未来に向かって変化し続けているものです。
強烈なビジョンを持った創業者のもとに人が集う創業期は、社員と直接対話する機会も多く、“北極星(※2)”を共有し、社員が日々の仕事に反映させることは、意識せずともできていると言えます。
※2…部門も立場も超えて、全社員が一枚岩になるための共通イメージ・指針のこと。参照:「インナーブランディングに指針=“北極星”が必要な理由」
ところが、事業成長とともに企業規模が大きくなり、社員数が増えていくと、経営者と意見を交わせる社員の割合は減少。現場で働く社員と経営者との間に距離が生まれてしまいます。すると、創業時には自然とできていた理念や会社の未来を共有する機会は減り、社員からの共感も薄れてしまいます。
だからこそ、インナーブランディングは、常に意識して取り組み続けなければいけません。コツコツと続けていけば、全社員共通の“北極星“のもと、企業が目指す「かくあるべき」姿を追及する文化が醸成され、簡単には消えない企業の財産となっていきます。文化をつくることで、時代や環境が大きく変わったとしても、新しい価値やサービスを創造し、変化する企業であり続けられるのではないでしょうか。
企業が創業期、成長期、成熟期と、どんなフェーズにあっても、同じ方向を向き、未来に向かって変化し続けるうえで必要なインナーブランディング。始めるべきタイミングは、インナーブランディングを意識した「今」といっても過言ではありません。気づいた今始めるか、問題が起きてから始めるか。未来を考えたとき、選ぶべき道はもう見えているはずです。
インタビュー・文/松本有為子 デザイン/下出聖子(amana design studios)