インナーブランディングに指針=“北極星”が必要な理由

インナーブランディングを行ううえで欠かせないのが、企業が目指すべき指針です。指針とは、企業が進むべき方向性を示す“北極星”のような存在。なぜ“北極星”必要なのか? どうあるべきなのか? 企業のインナーブランディングを行うアマナの佐藤勇太がお伝えします。

なぜ“北極星”が必要なのか

 企業理念を社員に浸透させ、イノベーティブな企業体質をつくっていくための活動、インナーブランディング。インナーブランディングの一環として行いたいのが、会社がどんな状況にあっても、社員一人ひとりがどのような仕事をしていても、全員が共通して見上げることのできる“北極星”の見直しです。

“北極星”は、日々の業務改善、新規事業の立案、人材採用など、さまざまな場面において、全社員が目指すべき共通の指針のこと。目指すべき“北極星”がなければ、大海原に漕ぎ出した企業という“船”が、どこに向かえばいいかわからず、遭難してしまいます。

“北極星”を見失っている場合は、あらためて見出さなければいけませんし、創業当時は確固たる指針があったものの、時代と共にぼやけてしまった場合は、磨き直す必要があります。

“北極星”はどうやって見つける?

企業によっては、理念がそのまま“北極星”となる場合もありますし、インナーブランディングを行うにあたって、改めて「自分たちの“北極星”は何か」を考え、設定する必要があることもあります。

どちらにせよ、忘れてはならないのが“北極星”は経営者の強力な「I want=ビジョン」から見出されるべき、という点です。 歴史的を振り返ってみても、キリスト教の誕生やフランス革命、幕末の開国など大きく歴史を変えた出来事には、当時のリーダーや指導者たちの「こんな未来を作りたい」という強い「I want」がありました。

経営者が強く願う「I want」があって、初めて企業が向かうべき方向が見えてきます。この「I want」をもとに、社員に共有できる形にしたものが“北極星”になるのです。リーダーの「I want」無くして、“北極星”も強い企業も作ることはできません。

誰でも語れる“北極星”では意味がない

企業が北極星”を掲げるとき、社員一人ひとりが具体的にイメージできるものにする必要があります。せっかく掲げても、誰でも語れるようなきれいごとや一般論だけでは、社員からの共感を得られず、一人ひとりが能動的に動くための原動力として機能させることができないのです。

“北極星”を見出すときに意識したいのは、そこに込められたメッセージがユニークかつ、社員の創造性を掻き立てるものであるかどうか。リーダーの「I want」に加え、これまでやってきた事業に裏づけされた説得力と、未来への希望を感じられることがポイントです。こうした内容を適切に表現し、社員へと伝えられる言葉を見つけることで、唯一無二の“北極星”をつくることができるのです。

【星野リゾートの事例】

 総合リゾート運営会社として、全国のリゾート施設や旅館の再生に積極的に取り組んでいる株式会社星野リゾート。運営する施設はコンセプトやテーマが違っていても、どれも“星野リゾートらしさ”が感じられます

そんな星野リゾートが掲げている理念が「日本の観光産業をヤバくする」。「ヤバくする」というフレーズからは、キャッチーでありながら、企業の姿勢や温度感、未来に向けたワクワク感も伝わってきます。

“北極星”の理想は、オリジナリティや未来に向けた意思が込められ、かつ、その企業の人格も表現できていることです。

“北極星”への共感を生むヒントは右脳への刺激

“北極星”を社員に伝えるときは、言葉で語るだけでなく、動画や写真を使ったり、イベントを実施したり、オフィス空間に要素を取り入れたりと、感性や知覚に訴える“右脳ファースト”な伝え方も意識してみましょう。言葉では伝えることが難しいメッセージも、直感的に伝えられることがあるはずです。

右脳で感じてもらうことで心が動き、行動が生まれ、左脳で理解する。このサイクルが継続できれば、行動することで次第に社員の意識が変わっていき、会社の文化として定着させることができるはずです。

まとめ

インナーブランディングでまず必要なのは、“北極星”を見出すこと。そして次に、社員が共感できる形で伝え、行動を生み、社内の意識を変えていくことです。社員一人ひとりが自分ゴトとしてとらえることができなければ、能動的に動くことも難しいでしょう。

経営層・マネジメント層・一般社員といったように、レイヤーが違っていても、日頃取り組む仕事が違っていても、社員一人ひとりが同じ方向を向いて進むことのできる強い企業をつくるために、まずは「自分たちの会社の“北極星”とは何か」を改めて見直してみませんか?

インタビュー・テキスト:松本有為子 デザイン:下出聖子(amana design studios)

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