ブランディングを本で学ぼう。明日から活用できるハウツーが豊富な本3選

ブランディングについて学びたいけど、どの本を読んでいいかわからない。そんな人に向けて、企業のブランディングに携わるプランナーやクリエイティブディレクター、ブランディングの基礎知識を解説したブランド戦略室が、おすすめのブランディング本をご紹介。実践に使えるハウツーが満載です!

「ブランディングって何?」をAD目線でわかりやすく、優しく解説

ブランド戦略室がおすすめするのは、ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』(小山田育、渡邊デルーカ瞳/クロスメディア・パブリッシング)

ブランディング先進国のアメリカを拠点に、コカ・コーラやMTV、ヴィクトリアズ・シークレット、フォーシーズンズ・ホテル&リゾーツなど、さまざまな企業の商品やサービスのブランディングを手がけてきた著者による本著は、シンプルでスタイリッシュなデザインの装丁が目印。見ての通り、表紙には「ブランディング」の文字はなく、これまで小難しいブランディングの本にお手上げだった人も、手に取りやすい1冊となっています。

なぜブランディングが必要なのか、どのようにしていくべきなのかを解説する本は世の中にたくさんありますが、本著が他の著書と異なるのは、理想論だけでなく、デザインをツールに問題解決する考え方を示していること

ニューヨークでグローバルスタンダードなブランディングに触れた著者だからこそ身にしみてわかる、日本企業の“技術力は高いけれど、独自のストーリーやビジョンを伝えることが苦手”という弱みをふまえ、どのようにすれば“その企業らしさ”が伝わるかを丁寧に解説しています。

ブランドの「WHY(なぜするのか)」や「WHAT(何をするのか)」を知ることも大切ですが、企業のみなさんが最終的に知りたいのは、きっと「HOW(どのようにするのか)」の部分。どのようにしてブランディングしていくべきなのか、この本を読めば多くのヒントを得られることでしょう。フレームワークを使った進め方の解説も丁寧です。

これまでブランドをいかに消費者へ伝えていくかを意識してこなかったという方は、ぜひこの本を読んでみてください。そうした企業や商品、サービスであればあるほど、ビジョンに伴った一貫性のあるアウトプットをしていくことで、ビジネスの可能性は大きく広がっていくはずです。

 

この本を紹介した人

 ブランド戦略室

  株式会社アマナ

アマナ内でブランディングを行う専門部署。ブランドの現状分析、戦略設計から実現まで、ワンストップでブランドのビジョンを可視化。アマナのクリエイティブ力を活用し、経営をドライブするためのブランディングをしている。

ビジョンって何?どうつくる?を体系立てて学ぼう

アマゾンやアップルなど、世界で急成長を遂げた企業の多くが掲げている、明確なビジョン。消費者にブランドを届けるためのアウターブランディングだけでなく、社内で行うインナーブランディングでもビジョンの共有は欠かせません

では、ビジョンとはそもそも何か? どんなビジョンが成功に導くのか? どうすれば真のビジョンをつくれるのか? そんな企業のビジョンにまつわるヒントが事例とともに散りばめられているのが、THE VISION』(江上隆夫/朝日新聞出版)です。

本著が優れているのは、「ビジョンとは何か」、「どのようにしてビジョンをつくるべきなのか」を体系立てて教えてくれるだけではなく、事例も満載なところです。

考え方だけを示すのではなく事例も満載で、特に井深大氏が起草したソニー(当時は東京通信工業)の設立趣意書(ビジョン)にある、自分たちの技術を使ってものづくりをする希望と喜び、戦後の復興の一助を担おうとする気概には大きな熱量を感じ、読んでるこちらの胸が熱くなります。

そうした優れた企業のビジョンを知ると、ワクワクして「自分もこんな場所にいたい」「こんな場所をつくりたい」と思わずにはいられません。また、いい事例ばかりを掲載しているわけではないのも特筆すべき点。歯に衣着せぬ辛口評価も勉強になります。

さらに、本著の後半では実践で活用できる内容も満載。実際に、私もここで紹介されている分析方法や枠組みをアレンジしながら、企業のビジョンを見出すワークショップを実施したこともあるほど、“使える”本となっています。

今は「社会に何を貢献できるか」という視点が企業にないと、消費者からはもちろん、人材採用の面でも共感を得られない時代。経営層だけでなく、日本の新しいビジネスをつくっていく若きリーダーにもおすすめしたい1冊です。

 

この本を紹介した人

 村上 英司

  株式会社アマナ クリエイティブディレクター

グラフィックデザイナー、Webディレクター、インタラクティブプランナーを経て、現職。企業のインナーからアウターブランディングを中心に、デジタルプロモーション、リアルイベントや店舗制作まで多角的なクリエイティブ開発を行う。

7つのコミュニケーション戦略で、多層的にブランドを伝えよう

20年ほど前、企業やブランドはマーケティング戦略に基づいて、クリエイティブ、メディアプランニング、セールスプロモーション、PRそれぞれの施策を考えていました。ですが、今はそれらを横断的に考えていく時代。手書きの戦略論 「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略』(磯部光毅/宣伝会議)では、すべてを統括して「コミュニケーション戦略」と呼んでいます。

マーケティング・コミュニケーションに携わっている人であれば自ずと考えざるを得ない戦略ですが、その内容は複雑ゆえに体系立てて学ぶのはなかなか難しいもの。そんな中、この戦略を7つに分けてわかりやすく解説しているのが本著です。

7つのコミュニケーション戦略論とは?

ポジショニング論:競合他社と違った位置付けを見つけることで人を動かす戦略論
ブランド論:その企業や商品“らしさ”の記憶をつくり、人を動かす戦略論
アカウントプランニング論:消費者のインサイト(深層心理)=「心を動かすツボ」を発見し、広告開発プロセスに反映する戦略論
ダイレクト論:ターゲットの反応を獲得しながら関係を深め、LTV(1人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす利益)を高める戦略論
IMC論ブランドと顧客がいい関係を結ぶよう、顧客の感情の流れを意識して各種メディアや店頭などの接点を設計して組み立てる戦略論
エンゲージメント論:ウェブ動画の再生やリツイートなど、受け手が自発的に行動を起こしたくなるような情報発信をすることで、関係性や絆をつくる戦略論
口コミ論:話題にしたくなるようなネタを提供し、SNS等での一般消費者の口コミを促し、人づての情報で人を動かす戦略論

ブランディングをふまえ、マーケティング・コミュニケーションに携わっている方であれば知っている内容もあると思いますが、この本では今どきのノウハウを網羅的に知ることができます。BtoC、BtoBなどの業態や、業界によって活用すべき戦略論は異なりますが、どの企業も基本的にこの7つの組み合わせでコミュニケーション戦略を語ることができるのです。

特に「ポジショニング論」、「ブランド論」、「アカウントプランニング論」は活用できる頻度が高い基本的な要素。各種プロモーションや展示会、自社サイトなどを立ち上げる際、他社との違いは何か、受け手にどのような記憶を残したいのか、心を動かすツボは何なのか、まずはこの3つから考えてみるといいでしょう。

本著ではそれぞれの戦略論にひもづくフレームワークが手書きで図解され、その理論にたどり着くまでの背景や歴史なども語られているため、体系的に理解しやすい内容になっています。

図解を見ていくだけでも概要が理解できるので、日々の業務に追われるビジネスパーソンにもおすすめです。ブランディング施策実施に向けて、決裁者を説得するための論理的な材料を探している人にも読んでいただきたい本です。

 

この本を紹介した人

 稲田 貴雄

  株式会社アマナ プランナー/クリエイティブディレクター

出版業界、広告業界、IT業界でデザイナーキャリアを積み、既成概念にとらわれず物事を横断的にとらえるスタイルに。現職ではマーケティング・コミュニケーションの視点から戦略的にクリエイティブ開発を手がける。

 

まとめ

世の中にあふれるブランディングに関する本の数々。手にとってみたはいいものの、内容の難しさに読むのを断念したことのある人もいるかもしれません。今回紹介したのは、実際に使えるハウツーがたくさん載っていたり、事例が豊富な本ばかり。章立てもわかりやすいので、まずは自分にとっていちばん身近に感じられるものから手にとってみてはいかがでしょう?

 

撮影:大竹ひかる  デザイン:メルクマール
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