ブランディングとマーケティングの違いとは? わかりやすく解説!

ブランディングとマーケティングの違いってなに? と思う人も多いのでは。そこで今回は、アマナのブランド戦略室が、混同しがちなこのふたつの違いを解説します。それぞれの本質を理解すれば、よりブランディングの必要性が見えてくるはず。

マーケティングは“魚群探知機”

マーケティングとは、たとえるなら「魚群探知機」。つまり、なんらかの市場に対して、どれだけの魚(人)が集まっているかを調査していくものです。

右肩上がりの市場に目を付け、その市場に集まった顧客をどれだけ獲得できるか、という発想です。
今まで企業は、商品開発などをする際、その市場にはどんな顧客が集まっているのかをリサーチし、人気のある商品や機能の傾向をベースにした商品を提供してきました。

ですがそのやり方では、他社と機能・特徴などが似てきてしまい、差別化ができなくなってしまいます。その市場が右肩上がりで伸びている市場ならいいですが、今や市場は広がらない状況です。その中でパイの奪い合いになってしまうため、事業拡大はなかなか見込めません。

ブランディングは“この指とまれ”

一方、ブランディングは、その商品やサービスに対して、付加価値や世界観を打ちだし、個性を顧客に認知させていくもの。人気のあるマーケットに合わせるのではなく、自社の商品、サービスの強みを活かしていくので、独自の市場(マーケット)を作ることができます。

つまり、顧客の動向を追いかけるマーケティングとは逆で、世界観を確立した商品やサービスに共感した顧客が集まってくる“この指とまれ”の状態がブランディングなのです。
特定の人にとっては強く響く欲望、インサイト、気付きを企業側が捉え、独自の強みを活かした新商品、新サービスを生み出すことができるとも言えます。

マーケティングばかりを追っていると、どうしても技術やサービスが同質化してしまい、他社との違いを見出せず、顧客にとっては同じようなモノにしか見えてきません。そういう場合は、ブランドの個性やカルチャーで差別化をしていく必要があります。
「少し値段が張ってもこのブランドのものを利用したい」という心理的価値で、顧客をファン化するのがブランディングの特徴です。
このように、ブランディングは、“個性”で顧客を魅了するものなので、追随する他の競合に世界観を真似されることはめったにありません。これは、企業にとっては、強みの財産になっていくということなのです。

歴史的観点からみる、日本のブランディングが進まない背景

世界の歴史から紐解くと、欧米はブランディングとのなじみが深く、日本はブランディングが苦手ということがわかります。ブランディングは、その土地の歴史や文化と密接な関係があるからです。

たとえばヨーロッパは、ルイ・ヴィトンやエルメスといった歴史のある老舗ブランドが豊富にあります。今も「エルメスだったら間違いない」というように、そのブランドの歴史やアイデンティティに精神的価値が根強く残っていて、歴史のあるブランドがよしとされる傾向があります。

多民族国家であるアメリカでは、言語やコミュニケーションが異なる相手にも伝わるように、とにかくブランドをリピート再生して、顧客に印象を残すことが重視されてきました。

一方、日本は、“のれん”文化が根付いていました。自分たちのブランドを大きな声で主張しなくても、“のれん”を静かに掲げていれば分かるだろうという「あ・うん」のコミュニケーションが成り立っていたのです。
このような歴史的な文化の違いや、日本の控えめな精神が、日本のブランディングが進まない背景にあります

さらに、土地的な違いもありました。
たとえば、欧州ではコロンブスの時代から未開の地を探検し、そこに住む原住民を観察することを繰り返したことから、定性調査など人を調査することにたけました。

反対に、島国の日本はお互いが腹芸で理解し合うという世界。相手を調査する必要性もなく、現代も定性調査が弱いというところにつながっています。そんな文化的背景の違いからブランディングを見てみるのもおもしろいです。

まとめ

マーケティングはマーケットの中から発見や顧客を見出すもので、ブランディングは自らの中に種を見出し新たなマーケットを作り出していくもの。時代はマーケティングからブランディングにシフトしていますが、これからはさらにブランディングにAIが絡んでくることが予想されます。

デジタルの能力によって関係性が細分化され、個人に向けてブランドが「パーソナライズ」される時代に突入するからです。その時は、ブランドの分散に気をつけなければいけなくなるでしょう。このようにブランディングの方法は時代とともに変わっていくので、流れをつかむことが大切です。


■キービジュアルのウラ話
今回イラストレーターの松原光さんに企画内容を踏まえて、キービジュアルを描いてもらいました。なぜこのイラストになったのか、作り手の“思い”を紹介します。

「同じだと思われがちな、ブランディングとマーケティングの2つを光と影で表現してみました。それを点線とハサミで切り取って別物だという認識をイメージしています」(松原光さん)

〈PROFILE〉松原光|まつばらひかる
イラストレーター。グラフィカルでキャッチーな作風にユーモアがプラスされたイラストが評判。国際アートフェア「UNKNOW ASIA2018」にて、Jeon Woochi賞、池田誠審査員賞を受賞。http://www.sandomistudio.tumblr.com


テキスト:石部千晶(六識)  イラスト:松原光
作図:メルクマール

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