まずは何からはじめる? ブランディングの進め方

自社ブランドの魅力をきちんと伝えるため、ブランディングをいざ始めようと思っても、やるべきことが多く、何から手をつけたらいいかわからない。そんな時のためにブランディングの進め方で大事な3ステップを、アマナのブランド戦略室がアドバイスします。

ブランディングの進め方、3ステップで、“らしさ”を創り上げる

ブランディングを始めるとき、やるべきことは多岐に渡りますが、大きく3つのステップに分けることができます。それは、ブランドの“今”を把握するための「現状分析」、分析を踏まえて、ペルソナ設定やブランディングの価値や世界観を固めて、DNAとして定める「アイデンティティ構築」、そのアイデンティティをベースにしてビジュアルなどのクリエイティブに落とし込んでいく「浸透」の3つです。

前回もお伝えしたように、ブランディングとは、そのブランドの“らしさ”を創り上げること。実際にどのような方法があるのかを交えながら、進める上で大事な3つのステップをそれぞれ解説していきます。

■現状分析とは
今あるものから、“らしさ”を抽出するためファーストステップ。自社のブランドがどのように認知されているのか分析、把握します。今後のステップのベースになるので、数カ月かけても、丁寧に調査をすることが大切。現状把握の方法としては、現地視察や社内、顧客、取引先などの調査を行い、そこから今のブランドの資産を棚卸しします。このとき、自社の思い込みだけで進めずに客観的な視点をできるだけ取り入れるようにしましょう。

現状分析では課題も明らかになりますが、今後のチャンスも見えてきます。ブランドとしてしたいことの意思、できることの能力、求められていることのニーズの重なりがブランドの核(DNA)になるので、一方向からではなく、あらゆる視点からブランドの現状を把握するようにしましょう

■アイデンティティ構築とは
現状分析した自社の強みを踏まえ、ブランドのアイデンティティを構築していきます。ブランドを象徴するペルソナ像の設定をしたり、ターゲットの行動や心理をより深く理解するためのカスタマージャーニーやカスタマー像を設定するなどして、求められる世界観のイメージを設計。さらに、ブランド理念、ミッションや顧客提供価値(バリュー)などを決めていきます。
これらは建築でいうと設計図にあたり、形になる前に緻密な計算をして細部を詰めることが大切です。さらに、実現するときのビジュアルイメージや言語イメージは建築でいうパースにあたるでしょう。

※ペルソナについてはこちらの記事もチェック!
“らしさ”を作って差別化を!  強いブランディングは“人格化”にあり

■浸透とは
ブランドアイデンティティが確定していくと、実際のアウトプットをどうしていくのかという段階に入っていきます。クリエイターへの発注や、ブランドのネーミングの決定、タグラインなど、ブランドをどのように表現するかというフェーズへ。建築でいうと基礎工事をしてさらに構造をつくっていく段階で、そこから内装をつくってインテリアで整えていくようなステップを踏んでいきます。

この3つのステップは、ブランドの位置付けや課題によってやるべき内容が変わります。たとえば、現状分析で行う調査は、自分たちで行うと本音を引き出せないなど、困難も伴うことも。特に日本企業の場合は、謙虚さがアダになり、なかなか思い切ったブランディングに踏み込めないケースも多いようです。また、ブランドの表現についてもありきたりではなく、事業や商品そのものに考え方をインストールしていくなど、豊かな発想が求められます。根本からブランディングを見直す際は、ブランディングを専門に行っているパートナーと一緒に行うことで、思いがけないブランディングが実現できる場合も多いでしょう。

【ブランディングは現場で起こってる!
担当者が語る
ブランディング
スタートアップエピソード】
とあるデベロッパーの不動産事業のブランディングを担当することに。最初に概要を伺ったとき、その不動産事業には、特出すべきポイントがありませんでした。また、当初は不動産にブランドなんて必要ない、価格と仕様と立地だけが勝負だと言われ、冷ややかな空気で迎えられました。

そこでまず行ったのは、社内調査。ヒアリング中、現場の営業担当から、お客様からのクレームエピソードを伺いました。それは、「4000万円で買ったマンションより、400万円で買った車の方がサービスがよかった」というご意見。つまり、金額的には、不動産物件よりも低価格な車を購入したときのほうが、特別感があったとお客様は感じたのです。このような意見やクレームは、マイナスに受け入れがちですが、実は、そこにこそブランディングのヒントがあります。

その意見を踏まえ、さらに社内調査や競合調査を重ねていき、“一生に一度のお買い物をセレブレーションする”というブランディング軸を提案。事務的になりがちな物件購入時の契約会を、“一生に一度のビッグイベント”にふさわしい演出にしたり、不動産ブランドのネーミング、ロゴ開発、新サービス開発などを含め、業界の常識に囚われない新たな施策を打ち出し、不動産ブランドの新しいスタンダードができていきました。

このように、ブランディングは机上でできるものではなく、現場に赴き、話をとことん聞くことから、気づきが得られできていきます。また、業界の常識は他業界の非常識と思うことが多々あるように、少しだけ業界の枠をはずして考えることでアイデアがぐんと広がります。

どんな人がブランディング担当者に向いてるの?

ブランディングを進めるときには、まず担当する社員の選定が重要です。どのような人が、適正なのか、見極めるポイントを紹介します。

【右脳と左脳のバランスがいい】
経営者の思いや考えを自分の中で理解した上で、ビジュアル化し顧客に認知してもらう。このブランディングの過程において、クリエイティブな表現力は欠かせません。感覚的にも理論的にも考えられる右脳と左脳のバランスがいい人は活躍できます。

【コミュニケーション能力が高い人】
ブランディングを行う過程には、会社社長・役員から現場社員まで、さらには商品、サービスを利用する顧客へのヒアリングをすることになります。誰とでもうまくコミュニケーションが取れる能力は、高ければ高いほどいいでしょう。

【洞察力がある人】
ブランディングは時代によって、顧客のニーズによって変化していく部分もあります。その流れをキャッチし、時代にあったブランディングを展開していくためにも、ものごとへの洞察力があるか、ないかは重要になります。

【思いやりがある人】
ブランディングとはつまるところ、相手や社会にどんな風に幸せになってほしいのか、そのために自分は何ができるのかを突き詰めていくことになります。相手の立場になって慮ることが出きる人の方が、よいブランディングが出できるでしょう。

まとめ

ブランディングを1からスタートするなら、今のブランドの現状を把握し、ブランドの特徴を見出していくことがはじめの一歩になります。核を見出せたら、その核を個性的で魅力的な表現に落とし込み、それを浸透していくというのが一連の流れです。

常に意識しておきたいのが、ブランドの軸をブラさず、他社にはない独自のポジションを築いていくということ。こブランド=こんなイメージという魅力を確立できれば、長く顧客に愛されるブランドに成長することができるでしょう。


■キービジュアルのウラ話
今回イラストレーターの松原光さんに企画内容を踏まえて、キービジュアルを描いてもらいました。なぜこのイラストになったのか、作り手の“思い”を紹介します。

「ブランディングを始めるということで、陸上のスタートラインをイメージ。Brandingの“B”もランナーの膝に置き換えて、テーマへの親和性を高めて見ました。」(松原光さん)

〈PROFILE〉松原光|まつばらひかる
イラストレーター。グラフィカルでキャッチーな作風にユーモアがプラスされたイラストが評判。国際アートフェア「UNKNOW ASIA2018」にて、Jeon Woochi賞、池田誠審査員賞を受賞。http://www.sandomistudio.tumblr.com


テキスト:石部千晶(六識)  イラスト:松原光
作図デザイン:メルクマール

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