ブランディングってなに? ブランディングの基本をわかりやすく解説

最近よく耳にする“ブランディング”。なんとなくわかっているけれど、自信を持って説明できるという人は少ないのでは。今回は、ブランディングとは何かについて、アマナのブランド戦略室が紐解きます。まずは全体像を知って、ブランディングの基本を学びましょう。

まず知っておきたいブランディングの枠組み

ブランディングとは、企業や商品、サービスブランドなどの“らしさ”を、時代やニーズなどを捉えながら、ビジュアルや体験を通して社内外に伝えていくことです。ブランディングによって伝えられた価値は、企業の財産にもなっていきます。では、そのブランディングとはどういうものなのか? 基本の枠組みから紹介します。

ブランディングは、大きく3つに分かれます。
現在のブランドの状況をつぶさに知るための現状分析、そして今後達成したい“志”や“夢”の世界観を企業理念などとしてワード化、ビジュアル化するアイデンティティ構築、それを社内外に新しいブランドの姿として伝えていく浸透です。さらに「浸透」フェーズは、社内にブランドの価値を浸透させ、社員の士気を上げるための「インナーブランディング」、顧客にブランドの魅力を伝えるための「エクスターナルブランディング」の2つに分けることができます。そしての中で最も重要なのが “らしさ”を表すブランドのアイデンティティ=DNAです。

ブランディングをする際は、健康診断のようにまず自分たちのブランドの健康状態を知ることから始まります。それは、見た目のイメージもそうですが、社内全体の意識や行動、夢やその夢を達成する情熱や体力はあるのかといった企業の内面にも及んでいきます。

約10年前は、ブランディングというと外向けの発信を強化するのが主でした。ですが最近は、内部向けの社内浸透がトレンドになっていて、さまざまな企業がインナーブランディングの施策に取り組もうとしています。

インナーブランディングを行うことで、社内のベクトルが同じ方向に向かい、パワーが発揮されるようになったり、社員のモチベーションが上がったり、社員の満足度が上がることで離職率が減るなどといった効果が期待できます。社内の雰囲気が家族的であると業績もアップするという研究結果も実際に出ているのです。

一方、エクスターナルブランディングは、ロゴなどに代表されるように、ブランドをビジュアル化して幅広い人に知ってもらうための施策です。近年はデジタル化が進んでおり、デジタルで顧客接点をどのように作っていくか、また、エクスペリエンス(体験)を通してブランドの魅力をどのように共感してもらえるかがポイントになっています。顧客のニーズは時代によって変動しているので、ニーズに合ったエクスターナルブランディングを展開していくことが肝心です。

【キーワードを解説】
◆DNA=ブランドアイデンティティ
ブランドの志や夢、社会での存在意義など、ブランドの本質。普遍的なものであり、時代が変わっても核は変わらない。

◆インナーブランディング
社内に向けて行うブランディングのこと。DNAを社内に浸透させ、ブランドの価値や理解を深めることが大きな目的。

◆エクスターナルブランディング
顧客など社外に向けて行うブランディングのこと。ロゴや商品のキャッチコピー、広告などもこれにあたる。

“あるべき姿”の見つけ方

上流の“あるべき部分”がまだしっかり定まっていない場合は、上図を参考にしながら“あるべき姿”を定義していきましょう。
図の上部にある「ビジョン」と「ミッション」は、先ほど出てきた企業のDNAに当たる部分です。簡単に言うと、ビジョンとは、そのブランドが社会のために何ができるかということ。ミッションとは、それを実現するための方法のことで、この2つはブランドの核として不変的なものになります。企業やブランドによってビジョンとミッションの立ち位置が逆になる場合もありますが、それはケースバイケースでよいでしょう。その下にある「経営戦略」「バリュー」「行動指針」は時代によって見直しが必要な可変的な部分になります。

【ウルトラマンの世界に当てはめると……】
ウルトラマンのビジョンは「平和な地球を作る」、ミッションは「人間を守り、悪者を倒す」こと。宇宙ファミリー自体が平和な地球を作ろうというビジョンを持っていて、その使命として、地球に来て悪と戦っています。

戦略視点で見ると、敵も強くなってきたから仮面ライダーと同盟を組むということもあるかもれません。また、ウルトラマンに必ず期待できる価値としては、“3分以内にかたをつける”、“いつでもどこでも駆けつける”などが考えられます。このような期待値は、顧客がブランドに期待する機能的価値や心理的価値に繋がってきます。

そして行動指針は、“礼儀正しく”、“人間を傷つけない”、“街をできるだけ壊さない”など。これはウルトラファミリー全体に通じることです。
このように考えていくと、イメージがつきやすくなるのではないでしょうか。なかなかあるべき姿が決められないときは、ブランディングの専門家に入ってもらうのがいいでしょう。

どんなブランディングをしたらよいか、まずは現在地を確認


いざブランディングに取り組もうと思っても、どこからどう手を付けたらよいかは意外と難しいもの。上の表を参考に、商品やサービスの場合どんなエクスターナルブランディングをしたらよいかをチェックしてみましょう。チェックするのは、ブランドに問題があるかどうかと、認知度の有無の2点です。

●ブランドに問題あり、認知度がない(表の左下)
ブランドに問題があるというのは、ブランディングする商品やサービスに、魅力や特徴がない、機能が足りていない、サービスが当たり前すぎるなどの問題があるというとき。この場合は、商品やサービスそのものから見直す必要があります

●ブランドに問題あり、認知度あり(表の左上)
いちばん大変なのは、認知度はあるけれど商品に問題がある場合。認知度がある故に悪い評判が広がっている可能性があるため、商品やサービスを変えるだけでなく、悪い評判を挽回しなければなりません。マイナスを解消してからリブランディングするなど、大きなテコ入れをせざるを得ない場合も出てきます。

●ブランドに問題なく、認知度がない(表の右下)
商品やサービスは魅力的だけど認知度が足りないという場合は、ロゴを作る、プロモーションをするなど、認知度をアップさせるためのブランディングが必要になります。

●ブランドに問題なし、認知度あり(表の右上)
ブランドに問題なくて、認知度もある場合は、あとは顧客や社会との絆作りについて企画を練り、計画的に進めていくことに力を入れましょう。

まとめ

ブランディングがきちんとできていると、顧客にブランドのイメージが定着し、認知度・売り上げのアップなど、企業の価値向上につながります。世界観が確立された強いブランドは、競合があっても埋もれることなく生き残ることができます。さらに、インナーブランディングもしっかりと行うことで、社員一人ひとりのモチベーションが上がり、企業全体の士気が上がるというメリットもあります。
逆にブランディングができていないと、商品のイメージが曖昧になり消費者の心に響かず、社員が目指す方向がバラバラで、何を伝えたいのかわからない状態に陥ってしまいます。
そうならないためにも、このブランドは何者で、社会にとって何の役に立つのかといったブランドの価値・世界観を社内外にしっかりと伝えておくことが大切です。


■キービジュアルの裏話
今回イラストレーターの松原光さんに企画内容を踏まえて、キービジュアルを描いてもらいました。なぜこのイラストになったのか、作り手の“思い”を紹介します。

「ブランディング特集は、何か目に見えるものがあるわけではないので、今回すべてのイラストに、Brandingの“B”というアルファベットをモチーフ化していこうと考えてました。このイラストは、ブランディングの基礎を抑えていくページだったので、Bをメガネに見立てて、勉強するイメージを表現してみました」(松原光さん)

〈PROFILE〉松原光|まつばらひかる
イラストレーター。グラフィカルでキャッチーな作風にユーモアがプラスされたイラストが評判。国際アートフェア「UNKNOW ASIA2018」にて、Jeon Woochi賞、池田誠審査員賞を受賞。http://www.sandomistudio.tumblr.com


テキスト:石部千晶(六識)  イラスト:松原光
作図:メルクマール

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