Twitter上で話題のメディア「BuzzFeed Kawaii」。F1層に向けたファッションやコスメなどの情報を毎日発信し続けています。その大きな特徴は、投稿の画像のみで情報が完結する表現形式。この新たなメディアの形はどのように生まれたのか、お話を伺いました。
オンラインメディア「BuzzFeed Japan」から分派する形で誕生した、「BuzzFeed Kawaii」。2019年2月にスタートしてから瞬く間にフォロワー数が増加し、35万人を超えています(2019年6月現在)。チームリーダーを務めるキャサリン ジヘ・ゴウさんに、「BuzzFeed Kawaii」が誕生するきっかけ、これからのことなどについてインタビューを行いました。
――正式なローンチは今年の2月ですが、メディア自体は昨年の5月から始動していたんですよね。まずは立ち上げの経緯から伺えますか。
キャサリン ジヘ・ゴウさん(以下、ゴウ。敬称略):「BuzzFeed Kawaii」は、「BuzzFeed Japan」でもともと発信されていたファッションやメイクなどミレニアル世代に向けた記事をもっと広く届けたいと思って作ったメディアです。
――「BuzzFeed Kawaii」はTwitterに投稿される、スクリーンショットのような画像のみで完結していることが特徴的だと思いますが、このアイデアはどのように生まれたのでしょうか。
ゴウ:立ち上げ当初、私の周りにいるアルバイトの方や知り合いの学生など、F1層の女性たちにお話を聞く機会がありました。そのとき彼女たちが言っていたのが「リンクをクリックしたくない」だったんです。リンク先が何かわからないし、そもそも縦長の記事を上から下までスクロールして情報を得るのが面倒臭い、と。だったらTwitterの投稿自体に記事の情報を詰め込んで完結させた方が、読者に最も親切な形で届くのではないかということでこの形式になりました。
――最初から今の形でいこうと決めていたのですか?
ゴウ:いえ、当初は今の画像投稿に加えて、記事のリンクも貼っていました。やっぱり記事に飛んでほしいと思っていたのですが、その分、情報量も中途半端な感じになってしまって。いろいろな形で試行錯誤していく中で、リンクを貼らずに一記事分の情報量を画像に詰め込んだ投稿の方が、フォロワーからの反響が高い。求められていたのはこれだったんだ、と気づき今の形に落ち着きました。
――毎日さまざまな角度からファッションやコスメ、グルメなどの投稿をしていますが、これらのネタはチームでどのように考えられているのですか?
ゴウ:定例ミーティングは週に1回あります。みんなで集まって、今注目されそうなものは何かブレストし、その中でいちばん自分が熱量のもてそうなネタを各自担当します。ただ、ミーティング以外の時間も私たちは席が近いので、「昨日Twitterでこんなのバズってたよ」とか「この間これ買ったんだけどよかったよ」みたいな情報共有はこまめにしています。
――普段の情報収集はどのようにされているのですか?
ゴウ:チームメンバーは全員F1の読者層と世代が同じなので、私たちはいつも通りの日常を過ごしながら、その中で興味があったもの惹かれたものを意識するようにしています。
――バズは重視しながらも、ネタ自体はあくまで自分たちの中から出てくるものを選ぶんですね。
ゴウ:もちろんメンバーは多くの人に届けたいという気持ちをもっているので、今までバズったネタやフォーマットなどは数字なども細かく分析して精査はしています。ただ、あくまで日常の中で本当に心惹かれたものをネタにすることを重視しています。普段の会話の中で自然と出てくる「あれよかったよ」というおすすめ情報、それを伝えたくて記事にしているんです。
――読んでもらえるネタというのは、どのようなものだと認識していますか。
ゴウ:やっぱり読者にとって身近なネタですね。コンビニで買えるグルメやドラッグストアで買えるコスメ、店舗数の多いファストファッションなどです。あとは、「その日、読者が最も求めている情報」ですね。たとえば、「雨の日にほしい○○」とか「日差しが強い日のUV対策グッズ」など、その日の天候に合わせて投稿を考えたり。読者がどんなことで困っていてどんな情報を必要としているのか、そこに想像力を働かせながら、毎日情報を発信していく。一方的に「これがいいから絶対に使って!」と押し付けるのではなく、読者の悩みに寄り添って情報を伝えることを大切にしています。
――「BuzzFeed Kawaii」はTwitterに特化したメディアですが、SNS上での印象などで意識している点はありますか?
ゴウ:浮いて見えないこと、ですかね。Twitter上のタイムラインに馴染むような言葉づかいをするように気をつけています。メディアの立ち位置としては、「すごく情報通の友達が話してくれている」ようなイメージを大切にしているんですよね。
――そういった言葉づかいなどはトンマナで統一されていたりするのでしょうか。
ゴウ:特に統一はしていないですね。みんなSNSが好きなメンバーなので、そこは個々人で熟知していると思います。
――投稿がバズるというのは、炎上のリスクと隣り合わせでもあると思うのですが、毎日、万単位でリツイートやいいねの反応がある「BuzzFeed Kawaii」ではどのように意識されていますか。
ゴウ:コスメなどは、実際にチームメンバーが使っておすすめできるものだけを紹介すること、でしょうか。想像だけで「いいかもしれない」記事を書いたりはしていません。自分たちで実際に使ってみて、本当におすすめのアイテムを紹介しています。
あとは、目線を合わせることですね。どの分野にも言えることですが、自分たちより詳しい人というのはTwitter上にたくさんいます。なので、さも「自分たちが教えます」といったような立ち位置からは書かないようにしています。あくまで私たちも読者の方々と同じ目線で、「メイクは大好きだけど、わからないことはいっぱいあります。それでもこれはよかったですよ」と同じ目線でおすすめするような気持ちでお伝えしています。
そもそもこの媒体は、どうやったらミレニアル世代に情報が最短で伝えられるか、と考えた結果、たどり着いた形です。ただバズればいい、とったことを目指しているのではなく、届けたい相手にちゃんと届いていることが大切だし、それが私たちにとって一番うれしいことなんですよね。
――最後に、「BuzzFeed Kawaii」を今後どのようなメディアにしていきたいか伺いたいです。
ゴウ:今はTwitterに合わせたスタイルで運営していますが、その時代その時代ではやるSNSは変わってくるので、今はない新しいメディアが誕生するかもしれません。そこに順応していきながらも、一方で「読者が最短距離でなりたい自分になれる」というコアな部分は大事にしていきたいなと思っています。
テキスト:園田菜々
撮影:川合穂波(アマナ)