テクノロジーライターの大谷和利さんが注目した、
教育、貧困、健康に関する問題は、どこの国、どこの社会にも存在している。しかし、満ち足りている人々は、そうした問題から目を背けて無関心になりがちだ。
こうした社会問題を少しでも解決すべく、寄付を集めて当事者たちを支援しているNPOのユナイテッド・ウェイは、最も根源的で人々の意識に影響を及ぼすビジュアル要素であるカラーに着目し、“#アンイグノアブル”、すなわち「無視できない」という名のキャンペーンを開始 した。
そのパートナーに選んだのは、業界標準的なカラーマッチングシステムを擁するパントンである。同社が誇るカラー研究所は、蛍光オレンジに似た新しいカラーを作り出した。ユナイテッド・ウェイは、これをキャンペーンのシンボルカラーにすると共に、ポスターやTシャツ、スマートフォンケース、ランチバッグなどに採用したマーチャンダイズを展開して、目に見えない社会問題の顕在化を図っている。
その新しいシンボルカラーが生まれた経緯は、ビデオ映像として残され、紹介されている。その画像を追いながら、色が持つ力と、シンボルカラーを作ることの意義を見てみよう。
カラーというビジュアル情報は、無意識のうちに人々に特定のメッセージや意味を感じさせ、感情を呼び起こすパワーを秘めている 。そして、このキャンペーンのためにパントン・カラー研究所が作り出したカラーは「世界で最も無視できない」ことを念頭に置いて調合されている。
社会に改革を起こす方法はいろいろと存在するが、パントンとユナイテッド・ウェイが注目したのはアートの持つ力である。同じカラーを用いて、さまざまなアート作品を作り出し、世の中に広めることで、そのカラーが想起させる問題を人々に意識させるようにした のだ。
ビデオには、実際に貧困や孤立、失業に悩む人たちも登場し、このキャンペーンの意義を語っている。目を背けないことが問題と向き合う第一歩であり、目を惹きつける独自のカラーがその役割を担っている。
映像の締めくくりは、文字とロゴマークのシンプルな画面構成となっているが、特定の単語のみの色付けや、白地からオレンジに転換するカラーの使い方によって強い印象が残る。
対象がWebサイトであれ動画コンテンツであれ、特定の色合いやトーンにこだわることは、統一感を持ってメッセージ性を高める有効な手段といえる。自社サイトのリニューアルやプロモーション用動画の制作の際には、カラーを核とするプランにもチャレンジしてみることをおすすめしたい 。
(図版は、すべて公式ビデオからのものです)