キーワードは「みな、みりょく!」。南九州市の魅力を伝える地域ブランディング 

「南九州市って北九州市の隣にあるの?」

いいえ、南九州市は鹿児島県の南部にあります。市が誕生してから10年、その名前は全国区でよく知られているとは言い難いようです。

アマナが推し進める地方創生は、この南九州市でもプロジェクトをスタート。ロゴマークとキャッチコピーの開発、魅力発信のための動画制作を行うことになりました。

南九州市における地域ブランディングの活動について、南九州市役所ふるさと振興室の別府誠さん、山崎真幸さん、上野晋作さんの3名と、アマナで地方創生を担当している徳山大毅に話を聞きました。

──南九州市のブランディングをアマナが担当することになったきっかけを教えてください。

別府誠さん(南九州市役所/以下、別府。敬称略):2017年4月に南九州市役所にふるさと振興室という部署ができました。ふるさと納税や移住定住の促進を行うわけですが、その業務に携わる中で南九州市の知名度をアップさせるPRが必要だなと感じるようになりました。南九州市ができて10年がたちますが、全国区で知られるにはいたっていないなと。

山崎真幸さん(南九州市役所/以下、山崎。敬称略):私は以前、観光を担当していました。観光の面では、「知覧」という地名が知られていたのでそれで十分だと思っていました。しかし、ふるさと納税を担当してからは、「南九州市」という自治体の名前で検索してもらわないと私たちのサイトに入ってきてもらえないことを痛感。全国の方に市の名前を認知してもらうのはとても大事なんだなとわかりました。

──知名度のほかに課題はあったのでしょうか。

別府:そうですね、2005年と2015年の国勢調査を比較すると、人口が6,000人減っています。13.8%減ですね。特に65歳未満の生産年齢人口の減り方が大きいです。それもあって、南九州市のアピールがふるさと納税だけでなく移住定住に結びつけられればと考えていたところに、タイミングよくアマナの別の担当者とお会いしまして。

別府さん。

──その後、コンペになるわけですね。

別府:私たちから伝えたのは、有名人を呼んで派手なイベントやキャンペーンをするとか、単にバズらせるためだけの動画を作るというのは、やってはダメだということ。いろいろな自治体が情報を発信していますが、たとえ一生懸命発信したとしても、地元の人たちのプライドや愛情に訴えないとどの活動も根付きません。やっぱり地元の皆さんへのコミュニケーションが必要だし、それを正しく外に伝えていくことが大切です。アマナさんの、北海道東川町での取り組みも印象的でした。

徳山大毅(アマナ/以下、徳山。敬称略):東川町での本格的なブランディングの推進は、丸6年になりますかね。だいぶ浸透してきたかなと思っていますが。

※参照 : 地域ブランディングは”らしさ”を軸に、東川町の取り組み

別府:画像や動画などがどれもキレイでしたし、結果的に東川町の人口が増えていることは移住先として選ばれているということで、その点からしても成功事例なんだなと。

山崎さん。

南九州市のブランディングをどう進めるか

──南九州市のブランディングは、どのように進んでいったのでしょうか。

山崎:最初はロゴマークを考えていただきました。それと、キャッチコピーですね。ロゴマークについては3パターンを提案してもらい、市の中学生に投票してもらって選びました。

各中学校にアンケートのお願いに行ったところ、どこも快く引き受けてくださって。自分たちで選んだロゴマークがずっと使われているなんて、いいことじゃないかと。

徳山:市のイメージとして茶畑があるので、グリーン系で作ろうと。それから「南」の「み」や、市を囲む山の稜線などをロゴマークに集約しました。

選ばれたロゴマークは名刺に入れたり、手提げ袋やパネル、幟(のぼり)などを作ったりして、物産展やフェアがあるときに使っていただけるようにしました。まずは、市の職員の人たちが直接コミュニケーションできるツール類を作って、その輪が同心円状に広がっていければ良いなと思います。

──市の皆さんに認知してもらわなければならないですね。

徳山:そうです。まずは市の職員から市に住んでいる人へ、次にそこから外部へと広がってほしい。このような地域ブランディングを行う際に、地元をすっ飛ばして東京でイベントでもしましょう、といったことになりがちだし、そのほうが人目をひくので瞬間的には受けます。でも、翌年、翌々年になると息切れしてしまう。ブランディングの基準が「バズる」ということではダメで、ブランドは丁寧にコツコツと育てていくものだと思います。

別府:市の総合計画の中でも主要プロジェクトとして、10年単位という長期的なものと考えています。まだ1年目で、今年はロゴマークとキャッチコピー、それからプロモーション動画の作成がスタートするところですね。

──市の魅力というと、たとえばどんなところでしょうか。

別府:大自然とか広大な農地とか。広々とした明るいイメージが売りかなと思います。

山崎:水のおいしさや人の温かさとか。ちょっとおせっかいなくらいの距離感がありますが、優しいなと思います。

上野晋作さん(南九州市役所/以下、上野。敬称略):私はふるさと振興室の担当になってまだ日が浅いのですが、市の魅力ということを考えるとやはり「人」じゃないかなと。道ですれ違った人に挨拶するとか横断歩道を渡ったあとに車にお礼をするとか。このあたりの小学校ではきちんと教えていて、それができているところがいいなと思います。

徳山:ロゴマークだけではなく何かしら求心力になるものが必要で、「人」というキーワードはその通りだと思いますし「大自然」もそう。南九州市に何で引きを持たせるか、一本柱になることを一緒に考えていきたいですね。

上野さん(奥)。

──市民の皆さんは、市のブランディングの動きについてどのように思っているのでしょうか。

山崎:やっぱり危機感があるのかなって思います。今まで通っていたスーパーマーケットが閉店したり、人が減っていったり。だからこそ、子供は都会に出してあげたいと思うのも自然ですし、しかし、やっぱりふるさとも大事にしてほしい。そのためにも、南九州市の魅力を発信していきたいし、魅力を伝えるためのブランディングでありたいと思います。

 

ブランディングが目指すところは

──今回のブランディングでは、ビジュアルはどのように役に立っていますか。

徳山:静止画や動画の撮影は行っていますが、アマナが作るだけではなく市の皆さんが自分たちで情報発信するためのノウハウを身につけていただければと考えています。地元の人たちが発信するメッセージがいちばん強いですし、「外から人が来ている。ちゃんとしないといかん」という、外を意識した循環が作れます。ビジュアルを作ることが目的じゃなくて、ビジュアルを通して何かを発信してほしいんです。

ビジュアルはノンバーバル(言葉を用いない)です。直接、人の心に訴えて気落ちを動かすことができる。その武器をぜひ南九州市のみなさんに持ってもらいたいです。

山崎:前の部署でインスタグラムを担当していたんですが、更新に苦労しました。何を撮ればいいかもわからないし、撮り方もこれでいいのかな、と。SNSにアップするための撮り方講座みたいなのもやりたいですね。

徳山:そうですね、最初に撮り方を学んで、実際みんなで町中を歩いてみましょうよ。今までは立ったまま撮っていたのが、急にしゃがんでみたりと、姿勢が変わります。いつもと違う目線になるだけで、新しい発見がある。ファインダー越しになにかを探そうとする行為は、地元を発見することにつながりますし、そのような、地道だけれど地域のチカラになるようなお手伝いができればうれしいです。

徳山。

上野:Facebookは、以前は私が担当していたこともありましたが、なかなか更新できなくて……。先ほど、カメラマンさんに山や滝の撮り方のコツをちょっと教わってやってみたらおもしろいんですよね。まずは市民対象の写真の撮り方講座をしてもらって、発信をにぎやかにしていきたいです。

Facebook:https://www.facebook.com/CityMinamikyushuKankou/

別府:市の皆さんにもそういう機会があるといいですね。地元の人たちに乗っていただかないとうまくいかないことも多いですし、外からの反応があるとブランディングの効果も実感できますから。

上野:SNSで盛り上げつつ、首都圏で食の交流会などを開いてファンを作ることも考えながら、市民優先でやっていきたいと思います。自分の担当は移住定住ですが、移住は大変。簡単にできることではありません。だから、小さな階段を一段ずつ作っていきたいんです。

そのためにも、市のイメージカラーを決めたいなと思っています。南九州市って言ったらこの色だよ、というもの。徳山さんが「一本柱になることを」と言っていたことにもつながりますが、そうやってイメージを作っていければいいなと思います。

徳山:今回、ロゴマークやキャッチコピーを作るにあたっていろいろなお話を伺いましたが、継続していくことが大事なんだという軸はぶらさないようにしたいと考えています。支点がずれると、きれいな振り子の運動にならないんですよね。あれもやってみたい、これもやってみたいとどんどん派手なほうに意識が向いて支点がずれると、結局は立ち消えになってしまう。悩んだり迷ったりしたら立ち返るポイント、その軸をしっかり作っていきたいなと思います。

別府:まず南九州市という名前を全国の方に認知していただくこと、そのために市民を巻き込むこと。これからの10年を見据えて着実に進めていきたいですね。

 

テキスト:ビジュアルシフト編集部

撮影:浦野航気(hue

 

プロフィール

別府誠

南九州市役所ふるさと振興室長

1985年入庁。2017年、ふるさと納税の推進や移住定住の促進を担当する部署として新設されたふるさと振興室に配属される。

 

プロフィール

山崎真幸

南九州市役所ふるさと振興係長

1999年入庁。男女共同参画、観光PR等の担当を経て2017年よりふるさと振興室に配属。ふるさと納税をメインにした市の魅力発信に努めている。

 

プロフィール

上野晋作

南九州市役所ふるさと振興係主査

1998年入庁。観光、企画、地方創生等の担当を経て2018年よりふるさと振興室に配属。主に移住・定住に関する施策の企画立案を担っている。

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