カメラガールズのビジュアル力で地域おこし【岸和田市編】

2016年から岸和田市役所が推進している「岸和田市シティセールスプラン」。岸和田に住んでいる人が、自ら地元のよさを発見しそれを外部に発信するという、市のイメージ向上・拡散を目指した地域ブランディングの取り組みです。写真のチカラを使うことでこの思いを実現させたその経緯を伺いました。

メインターゲットは10〜20代

ビジュアルシフト編集部(以下、編集部):まず、この岸和田市シティセールスプランがスタートした経緯から教えてください。

松田大樹さん(岸和田市役所/以下、松田。敬称略):岸和田といえば、何といっても岸和田だんじり祭が頭に浮かぶ人が多いと思います。ただそれ以外に、岸和田のイメージというものが出てきません。他にいいものもいっぱいあるのに、なかなか伝わっていない。また、だんじりの勇猛なイメージが前面に出過ぎていて、荒々しいとか怖いとか、そんな印象を抱いている人が少なからずいるのではないかと。

この2つの課題をクリアするために、イメージアップを目指して2016年にシティセールスプランが作られました。

編集部:岸和田という名前を知ってもらうことが目標だったんですか?

松田:定住人口を増加させる、というのが最終目標です。岸和田というのは、実は出て行く人がとても少なくて、大阪府内でも100人当たりの転出率がいちばん少ないんですよ。ただ、出て行く人は少なくても入ってくる人がもっと少なくて、結果的に少しずつ人口が減っているんです。

編集部:出て行く人が少ないということは、定住する人が多いということですよね。

松田:そう、そうなんです! 実際に住んでみると、街のよさを実感していただけるのですが、入ってくる人がなかなか増えないんです。

編集部:知名度は圧倒的にあるのに。

松田:そこも岸和田の特徴ですね。よその自治体は名前を売るのに苦労されるけど、岸和田については、名前は知られているのに、イメージが固定化されているという現状があると思っています。

編集部:なぜ、アマナと協働されたのですか。

松田:外部向けにカッコいい見せ方をしたり、ターゲットを絞って情報を組み合わせたり、そういう仕事を市役所はこれまでしてこなくて。だから民間の会社さんの力を借りてやるほうが、我々のような頭の固い市役所の人間がやるよりも効果的だと考えまして。

編集部:アマナを選んでくださったポイントはどこにありますか。

松田:事業自体の独創性やスケジュール感、それに提案の中で、カメラガールズさんを使うという、女性の視点が入っているのがおもしろかったですね。これまで行政ではやっていなかったことができそうだと思いました。

手塚陽子(以下、手塚):岸和田市にいろいろな魅力があることを一発で伝えるには、やはり「写真」がいいのではないかと思いました。今、若い世代がインスタグラムをものすごく見ているわけですし、その世代をターゲットにしたいという話を伺っていたので。

松田:女性の子育て支援を市としても行っていますし、これからを担う若い世代に岸和田を好きになってもらいたいという気持ちもありました。

和田綾佳さん(岸和田市役所/以下、和田。敬称略):私自身もインスタグラムをやっているので、おもしろそうな案だなと思いました。まさか自分が運営側に回るとは思わなかったですが。

カメラガールズとのコラボで、岸和田愛をビジュアル化

編集部:実際には、どんな施策を行ったのでしょうか。

手塚:日本最大のカメラ女子のサークルであるカメラガールズとコラボレーションして、撮影ワークショップ、フィールドワーク、写真の発信の3段階で考えました。写真を撮ってインスタグラムにアップしておしまいにするのではなくて、岸和田に住んでいる人が自分達で撮って発信してもらうために、きちんと撮影技術を身につけることが大事だと。地元の魅力を発信し続けて次につなげていかないと、地方創生が成り立たないと思ったんです。

編集部:カメラガールズとのコラボというアイデアについては、どのように思いましたか?

松田:誰やこれは?と思いましたね。市役所の他の職員もあまり知らないようで。

和田:私も最初はそうでした。すぐに検索してみたらたくさん写真が出てきて、雰囲気がいいなあと感じて。

編集部:実施したのは2017年の年末だったそうですね。

手塚:ワークショップとフィールドワークを同日に行いました。当日は応募してきた10名の学生達と、カメラガールズから16名、さらに市の職員の方9名ほどにも参加していただきました。岸和田のブランドのニンジンを育てている畑や岸和田港に行ったり、昔ながらの古い町並で撮影したり、盛りだくさんで。和田:リアル体験イベント、という形がすごくよかったですね。カメラガールズの皆さんは常にインスタ映えということが頭にあるようで、その視点を見るだけでも勉強になりました。

松田:同じ場所に行って同じものを撮っているのに、全然違う写真になるんですよ。これほんま岸和田で撮ったんかいな?って。いやほんとに、カメラガールズさんはすごいって思いました。

和田:岸和田市公式のインスタグラムが2017年の6月からスタートしたばかりだったので、年内でどのくらい写真があがるかなと思っていたのですが。「#岸和田MODE」をつけてアップされたのが、もう1100点以上。

松田:最初は、年間で500点ぐらいいけばいいかなと。

和田:フォロワー数は700を超えました。これもイベント後に増えましたね。

 

(左)和田さん撮影のイカナゴ。「地蔵浜町の漁港にて撮影。大阪府内の漁獲量第1位である岸和田市で、イカナゴがたくさん獲れました!ということが伝わればいいなと思いました。カメラガールズさんに教えていただいた光の差し込む位置も意識しました」。

(右)松田さん撮影の梅。「岸和田城周辺で、ひと足早く訪れた春を収めた一枚です。まだまだ寒い日の多かった2月中旬、梅のいい香りとかわいい花で心がほっこりしました」。

岸和田への思いをもっと伝えるには

和田:イベントに参加した職員からは、またやりたいとか楽しかったとか。若い世代がたくさん集まるイベントがなかなかないですし、いい意味で市役所らしくないイベントだったね、という声がありました。

松田:岸和田市内の全部の高校に告知のチラシを持って行きましたが、「これはおもしろいイベントだ」ととても反応がよかったです。それから、市民の皆さんからも、いいイベントだからぜひ次もやったほうがいいというお電話をいただいたりとか。やっぱり市民の皆さんも、岸和田の魅力を伝えたいと思っていてくださったんだなとうれしかったです。

編集部:今後はどのような展開を考えていますか。

手塚:まず今回のイベントでは課題もありました。撮影講習については、きちんと座学を行っておきたいなと。プロのカメラマンに指導してもらって、参加者の腕を上げることで「#岸和田MODE」の写真のレベルも上がれば、さらに認知度も上がりますしブランド力も高まると思います。

それから、岸和田はかなり広くて海もあれば山もある。いいところがたくさんありすぎて、おそらく市の職員の方達もどこをメインで伝えればいいのかという優先順位がまだ明確でないと感じます。ブランドの価値を高めるためには、何かに特化して取り組むことがまずいちばん最初に必要なことだと思うので、そこも含めて提案していけることはないかと考えています。松田:今回のイベントでの取り組みを次にどうつなげていくかが重要だと思っています。撮った写真で写真展をしたり、どんな講習を受けてどんな写真を撮ったかを伝えることで、参加できなかった人達もどんどん写真を撮って発信しようという輪が広がっていくような仕掛けを何かやりたいなあと。

和田:もっとインスタグラムを充実させたいという気持ちもあります。いい写真を撮るのってなかなか難しくて、カメラガールズさんから習ったことにプラスしてもっといろいろな撮り方を勉強していきたいです。

編集部:「住んでいる人が発信する側になる」って、とてもいいキーワードですよね。

松田:やっぱり岸和田に住んでいる人がもっと自分達の町のことを知って好きになってもらって、さらに岸和田の魅力の発信者になってくれるところまでいくのが、アマナさんが最初に提案してくれた地域ブランディングのあるべき考え方だと思います。住民の愛着やその地に対する誇りを感じさせること、これがすごく大切だと共感しました。

和田:岸和田には岸和田のよさ、岸和田らしさがあるので、それをそのまま市民の皆さんが伝えてくれたらいいなと思っています。

手塚:その手助けを、写真を通じて行っていきたいですね。

撮影:米田宏和(Studio KAZ)

プロフィール

松田大樹

岸和田市役所 市長公室広報広聴課 シティセールス推進担当長

2000年岸和田市に入庁。2008年に広報広聴課へ配属され、広報紙の編集担当などを経て2016年よりシティセールス推進担当に。

プロフィール

和田綾佳

岸和田市役所 市長公室広報広聴課 シティセールス推進担当

2016年岸和田市に入庁し、広報広聴課シティセールス推進担当に配属される。市公式インスタグラムの更新を担うなど、まちのメージアップに向けた魅力発信に努めている。

KEYWORDキーワード

本サイトではユーザーの利便性向上のためCookieを使用してサービスを提供しています。詳しくはCookieポリシーをご覧ください。

閉じる