ドローン動画コンテストで優秀賞を受賞した長塚誠さんを知っていますか? 彼の作品は、ドローン空撮動画のクオリティだけでなく、企画力・構成力・ストーリー性に優れていてます。今回は彼の作品から5作品を紹介。単調な映像にならないよう全体の構成やBGMに工夫をしているので参考にしてみて。
最初にご紹介するのは、長塚さん自身の「また行きたい場所ランキング1位」という、鹿児島県与論島のドローン映像。コバルトブルーのビーチと、マリンアクティビティを楽しむ人達を捉えた作品です。
この作品で注目したいのは、全体がとてもメリハリの効いた構成になっていること。ビーチの俯瞰的な映像だけでなく、アップテンポなBGMに合わせてつないだ連続カットが心地よいリズムを生んでいます。随所に散りばめられたタイムラプスやキャプションも、アクセントになっていますよね。
こちらは長野県の乗鞍高原のドローン映像。天候に恵まれず、当初の目的だった紅葉は撮影できなかったそうですが、それでも自然が持つさまざまな顔を捉えた素晴らしい作品になっていると思います。
自然風景をドローンで撮影するとどうしても俯瞰的な映像が多くなり、単調な印象を与えがちです。この作品は横移動→前進、回転→後退といったように、ドローンの異なる動きで撮影されたカットを組み合わせることでそれを避け、視聴者を飽きさせない構成に仕上げています。
全体的にとても静かなトーンで、人や動物はまったく登場しないにもかかわらず、つい最後まで引き込まれて見てしまうのではないでしょうか。
激しく動く被写体に接近することで、まるでその場にいるかのような迫力を届けられるドローン撮影。この作品はそうした動的なカットと、「静」のバランスが際立つ作品だと思います。
出典:【ドローンで4K空撮】 ドリフトチャレンジ!大迫力なドリフトレースをドローンで空撮埼玉 本庄サーキットDJI Inspire1
モノクロで撮影されたピット、スピンして止まってしまったレーシングカー……。激しく横滑りするシーンと、静的なカットの対比がストーリー性を生み、3分足らずの動画ながらドキュメンタリーフィルムのような印象を残します。
続いてご紹介するのは、ギネス世界記録に認定された埼玉県行田市の田んぼアートのドローン映像。高い場所からしか見ることができない、まさにドローンにうってつけの被写体なのですが、この作品にも長塚さんならではの構成力が活かされています。
出典:【ドローンで空撮】 ギネス世界記録の田んぼアート!様々な角度から空撮 DJI Phantom3
作品のヤマ場であるアートの全体像が見られるのは後半になってから。それまでは田んぼに引かれたラインと展望台のオーバーラップが続き、つい先が気になって見てしまうはずです。作品としての構成を工夫することで、ドローン映像はより視聴者を引き込むものになるんですね。
ドローン映像の作品性を高めるためにはBGMも大切なポイント。最後にご紹介するのは、選曲が光る神奈川県・宮ケ瀬ダムのドローン映像です。
オープニングの沢のせせらぎと鳥の鳴き声から一転、BGMはどこか冷たい印象もするダンスミュージック調に。曲調とダム独特の水の色や、木々と人工建造物のコントラストがあいまって、「美しい」という言葉だけでは表せない世界観を生んでいます。試しに音量をミュートにしてみるとBGMがもたらしている効果がわかるはずです。
いかがだったでしょうか?
ドローン映像は臨場感やスケール感だけに頼ることなく、カット割りや選曲まで工夫することで、視聴者を引き込むストーリー性の高い作品になります。
また、視聴者を飽きさせないという点では尺に気を配るのも大切。ドローン撮影は段取りに時間がかかり、天候などの制約も多いので、「せっかく撮ったのだから、全部見せたい」という気持ちが生まれがちですが、「空人ちゃんねる」の作品はどれも3分程度にまとめられています。ドローン映像をYouTubeで公開する際は、見やすい長さとして参考にしてみましょう。
いずれにせよ自分で企画・構想を練り、作品として世の中に発表できるのは本当に素晴らしいこと。仕事としてドローン撮影に関わることが多い私からすると羨ましい限りです。次回は長塚さんをお招きし、ドローン映像の魅力や制作の裏側について対談を予定しています。お楽しみに。