サイバーエージェントによれば、2016年の日本国内の動画広告マーケットは約842億円。さらに2022年には約3.5倍になる約2918億円に達する見込みです。
テレビCMを出稿している企業の担当者のなかにはWeb動画へのシフトを考えている人も多いかもしれません。そこで今回は、私が考えるWeb動画プロモーションのヒントをご紹介します。
テレビCMとWeb動画の一番大きな違いは、消費者(ユーザー)との距離感の違いだと思います。テレビCMの場合、番組の間の限られた尺で消費者を惹きつけるために、商品の強みや価格の安さといった情報を集中的にアピールする必要があります。そのため、テレビCMの多くは企業側の伝えたいことが集約された企業目線の情報発信になります。
それに対してSNSも含めたWeb動画はもっと身近な存在です。スマホやタブレットで場所や時間を選ばず視聴でき、ユーザーとの距離がより近い分、情報をストレートに伝えるのではなく、魅せ方を工夫したり、伝えたいメッセージをユーザーが知りたい情報に変換したりする必要があります。
では具体的にどうすればいいのでしょうか? 参考になるのが、ヤマト運輸がYouTubeで公開している「クロネコが箱を組み立て!?」という動画です。
ヤマト運輸の「クロネコが箱を組み立て!?」は名前の通り、マスコットキャラクターのクロネコが宅急便のダンボール箱を組み立てる動画です。小さな荷物を送る「宅急便コンパクト」というサービスのプロモーション動画としてYouTube配信されています。
出典:ヤマト運輸 YouTube「クロネコが箱を組み立て!?」
番組の間に自動的に放送されるテレビCMに対して、Web動画はスマホでいつでも好きな時に視聴できます。さらにYouTubeには毎分100時間もの動画がアップロードされていて、視聴者には無数の選択肢があります。通常、テレビCMが始まるとテレビを消すという人はあまりいないと思いますが、Web動画は選択肢も多いだけにとにかくスキップされやすいんです。
「クロネコが箱を組み立て!?」では、クロネコが鼻先でダンボール箱を押したり、中に入れる缶詰を落としたり、尻尾を振ってフタを閉めたりします。なかなか進まない箱の組み立てにじれったさを感じながらも、クロネコの気まぐれな表情とキュートな仕草に惹かれてつい最後まで見入ってしまいますよね?
さらにこの動画では、「箱の組み立て方が分かるかどうか」という点もあまり重視されていないように思います。主人公は完全にクロネコで、1分41秒の動画を見終わる頃には最初に紹介された箱の折り曲げ方を忘れてしまう方もいるかもしれません。
ただその一方、クロネコの仕草や尻尾の動きは強く印象に残り、動画を作った企業への共感が芽生えます。この動画はYouTubeで100万回以上再生され、SNSでも話題になりました。
Web動画を充実させたヤマト運輸ですが、並行してテレビCMを放送していました。そこではもちろん「情報」も発信しています。
前述のように、尺が限られるテレビCMでは情報を絞り込み集中的にアピールする手法はいわば必然です。一方、WebではCMのように商品やサービスをアピールするのではなく、単独のコンテンツとしてそれ自体を楽しめる動画が強いといえます。
「クロネコが箱を組み立て!?」のシリーズでは、『「宅急便コンパクト」専用BOXの組み立て方おしい集』というNG集も用意されています。こちらも、ついつい応援したくなり、最後まで見てしまう動画に仕上がっています。
出典:ヤマト運輸 YouTube『「宅急便コンパクト」専用BOXの組み立て方おしい集』
Webのプロモーション動画は、企業目線の情報発信だけではなかなか効果を得られません。魅せ方を工夫したり、情報を消費者が知りたいことに変換したりしながら、広告とは一線を画したコンテンツとして届けることが大切になってきます。
つまりポイントは「どんな情報を伝えるか」ではなく、「どうやって共感を得るか」ということ。今回ご紹介した事例をぜひ参考にしてみてください!