話題の2社に聞く、ビジュアルの力を活用したコミュニケーション術

以前VISUAL SHIFTでも特集した、株式会社TBMと株式会社ストライプインターナショナルは、それぞれアウターコミュニケーションとインナーコミュニケ―ションにおいて、ビジュアルの力を活用した取り組みをしています。両社におけるビジュアルの活用事例についてお話を伺いました。

参考:関連インタビュー記事
● 企業のビジョンを伝えるためのビジュアル戦略( 株式会社TBM )
● 企業価値を高める「ストライプ流」インナーコミュニケーション(株式会社ストライプインターナショナル)

▼ モデレーター小柴さん、TBM笹木さん、ストライプインターナショナル神田さん

小柴 今日は、業界・企業年齢・ステージは異なりますが、「カンブリア宮殿」でも取り上げられた、日本の企業の中でも成長が注目されている話題の二社のキーマンにご登壇いただきます。
ビジュアルコミュニケーションを広く捉えた時に、お二人の活動にはヒントがあふれています。TBMの笹木さんにはアウターコミュニケーション、ストライプインターナショナルの神田さんにはインナーコミュニケーションのお話を伺い、その活動の中における「ビジュアルコミュニケーションの力」について迫っていきたいと思います。

「目から鱗」を狙える、BtoBのコミュニケーション

小柴 まずは笹木さんに質問です。TBMの事業である、紙を石でつくるということが、はじめて聞いただけだと、どういうものなのか想像することができなかったりしますよね。石ってどんな石? とか。そうした分かりづらいことを分かりやすくビジュアルを多く使ってwebなどで表現されていますが、どんなところに注力されましたか。

笹木 ブランドのカラーということでいうと、基本的にモノトーンの世界観でコミュニケーションしようと思っています。白と黒とグレーの世界観です。

というのも、僕らが貢献していきたい水、森林、石油は色があるので、それぞれの色が際立つということと、そこに対してアクションしていくという意味で、ブランドカラーのトンマナはキープしていきたいと考えています。

もうひとつは、BtoCに比べてBtoBの企業はブランディングコミュニケーションが行われないことが多いですが、我々は分かりやすく、かつ、これまでにない表現で「目から鱗」を狙えるようなBtoBのコミュニケーションに取り組んでいます。

▼ TBM IDENTITY ビジュアル

小柴  ライメックスの石灰石が綺麗に表現されているなあと。また、錚々たるシニア・エグゼクティブの方々と協業をされていますが、webでは皆さんのポートレートを掲載していますね。お名前だけでもすごいなと思うんですが写真によってお一人ずつの佇まいを拝見すると、より凄さを感じますね。

笹木 ライメックスアクションというサイトで、取締役はじめ顧問陣のポートレート撮影を同じフォトグラファーに撮ってもらって、なるべくいい表情で映し出していきたいなという思いがあります。

TBMのWebサイト に掲載されている役員ポートレート

小柴 Webには事業内容を紹介する映像もありますよね。Webを見に行ったときに、TBMの事業がどのような可能性を持っているのかを伝わりやすくしていますね。

笹木 ライメックスという素材を紹介するブランドムービーを作りました。海外の方をキャスティングして英語でコミュニケーションをしています。

ある人に聞いたんですが、ビジュアルは国境を越える、と。通常だと日本人のモデルを起用するかもしれませんが、海外でも事業展開をしていくという思いがありましたので、キャストは外国人で、英語の質の高いムービーを作りたいと考え、ビジュアルにはこだわって制作を行いました。

Webのコンテンツが「カンブリア」を呼び寄せた!?

小柴 ある方がライメックスの様々なコミュニケーションのアウトプットを見たときに、質にこだわっていますねと言われたそうですが、協業している方のポートレートや、ムービーの作りとか、こだわったことの効果、こだわった甲斐はありましたでしょうか?

笹木 実際のコミュニケーション活動の成果として出てきているところがあります。僕らのPR活動の半分はインバウンドなんですが、実は「カンブリア宮殿」も、こっちからコンタクトを取ったのではなく、急に電話がかかってきたんです。

ちょうど電話を取ったのが僕だったんですが、最初これはサギだと思って(会場笑)。なんか怪しいぞ、カンブリアに出られるわけがないだろう、このフェーズで、という。でも、「実はホームページにこういうこと書いてありますよね、これ本当なんですか?」と質問があり、これはサギかもしれないけれど、丁寧に返そうと、より神経を配りました。

その後、ホームページではトップページに全てのニュースを見せるのではなく、伝えたい情報にセレクションして出して出すなどの運用を行なっていまして、メディアの掲載もありがたいことに増えています。ベンチャーとしては信用信頼というところがものすごく重要になってくるので、そこをファーストインプレッションで担保するようなUIにするべくこだわっています。

社員のアイディアを形に。 社員の繋がりを形に。

小柴 続いてストライプインターナショナルの神田さんにお話しを伺います。

ストライプさんはインナーコミュニケーションに非常に力をいれてらっしゃいますよね。見ている方も非常に楽しくなるようなBBQの写真とか、プロのフォトグラファーが撮影した社員の方々のポートレートを300名分廊下に掲示している取り組みなど、画期的な施策をどんどん実施されている印象です。

▼ 東京本部BBQパーティーの様子。綱引き大会も大変盛り上がりました。

▼ 夏に開催した「浴衣ウィーク」

小柴 夏に実施されていた、浴衣ウィーク(社員が浴衣で出社するという試み)のような各種イベントは、社員発のアイディアだと伺ったのですが、どうやって次々と手を打たれているのでしょうか。

神田 3年前から年に一度実施している社員満足度調査でとにかく社員の声を聞いてそれを拾って、何かアイディアを持っている社員がいれば「じゃあそれやってみようよ」と声をかけることだなと思います。

10月31日はハロウィンパーティをやろうというアイディアが社員から出てきて、「神田さん朝から仮装で仕事していいですか」って聞かれて、「良いんじゃない、楽しそうで」って。そういう風に、どんどんやっても良いんだよ、という雰囲気を作っていく、それを広げてあげる、という経営側のコミットメントが大事なのかなと思いますね。

可視化を進めたら、 2年間で会社の空気が変わった

小柴 社員満足度調査は、現場からの意見が初年度500件、次年度が1000件になって、3年目は1500件になったようで。初めの頃に比べて声が出しやすくなっているんでしょうね。また、BBQイベントに関しては、初回は様子を伺いながら参加していた方が2回目には積極的に楽しんで参加されていたり、2年間で随分会社の空気が変わったようですね。

これは、全国の社員同士を繋ぐインナーコミュニケーション専用アプリの「amily(アミリー)」や、ポートレート写真の掲示などがジワジワと効いてきているということなんでしょうか。

▼ インナーコミュニケーションアプリの「amily(アミリー)」社長とも直接気軽にメッセージを交わせる機能もある

神田 そう思いますね。とくに店舗スタッフには評判がいいです。店舗は普通に仕事をしているとその中だけで人間関係が完結しがちですが、もっと多くの社員とつながることで、例えば同じような悩みを抱えているスタッフが他にもいたり、あなたを助けてくれる人はストライプインターナショナルにもっとたくさんいる、という社員同士の関係性をうまく可視化できたのだと思います。

小柴 「可視化」も捉えようによって、こんなにも広いものなんだなと感じました。「amily」の中でのポジティブなやりとりも、誰がみても気持ち良く感じるのでしょうね。

ポートレートも、社員の方を撮影して自己紹介するっていうものすごくシンプルなことなんですけれど、着物を着てる方がいたり、お腹にお子さんがいる方がいたりみたいな、実際に同じ会社にいる「人間」を感じることなんだなと。この廊下を歩くとかなり外部の方からも反応があると前にきいたのですが、採用面接の際などはいかがでしょうか。

▼ プロが撮影した社員ポートレートを廊下にずらりと掲示

神田 当社は、店舗スタッフを中心に採用には非常に力を入れています。今年特に打ち出しとして気を使ったのが、とにかく仲が良い会社として見てもらうということです。実際仲がいいんですけれども、それをちゃんとビジュアルで見せる。すごく楽しそうなことをやってる会社だっていうことをちゃんと見せることを心がけました。廊下のポートレートに関しては、最終面接では必ず東京本部へ来ますので、そこで社風を感じてもらえますし、もっと前段階の新卒向けのセミナーの時に「amily」のデモをやると、ものすごくヒキがいいんです。

女性が沢山いる会社でアパレル業界だと人間関係に苦労しそうといったイメージがあるようなのですが、いやいやウチは違いますということを表現するには「amily」のパチパチ(facebookの「いいね!」のようなもの)を見せると、とても魅力を感じるみたいですね。

小柴 インナーの満足度をあげることが、直接そのまま外に生きるということですね!

TV放映のチャンスを、いかに経営にブリッジしていくか

小柴 ではここからはカンブリア宮殿のお話に。
笹木さん、サギもしれないと電話に出たエピソードが面白かったんですけれど、取材から取材後の反応などのお話しを伺えますでしょうか。

笹木 取材の依頼をいただいてからは社長の山崎の家に行って、何を残すか、どの言葉を選んで伝えるかを考える、泊まり込みの合宿みたいな感じでした。社長の家に夜の11時くらいに行って、練習をするんです。こんな質問されたらどう答えます?とか。いまこういうこと伝えたいですよね、だったらこういう言葉にしませんか、と。社長の家でカンブリア宮殿というチャンスをどう活かすかを頻繁に考えてきたのがすごく印象的な思い出です。

単純にテレビに出てPRになったねということではなくて、いかに経営の活動にブリッジしていくかが大事なので、僕らがその時一番やりたかった名刺のセールスと、人の質をより良くする採用とをトップページのバナーで打ち出していきました。あとは、これまで取引させていただいてきた方々のデータベースをやっと整理して、みなさんにメールをお送りしたり株主さんに手紙をお送りしました。
もうほんとアナログなのですが、大学の研究室一覧みたいなのを作ってそこにチラシとか手紙とか時には電話をして、「カンブリア宮殿に出るんでぜひ研究室の皆さんでご覧になってください」と告知をしました。

小柴 出る前にですよね。

笹木 出る前に、ですね。それまでは広告バナーの出稿もやらない方針だったので、多少その時はソーシャルの広告はやりましたけれども。現実は泥臭く、理想は高く持った1ヶ月だったかなと思います。

小柴 それだけの頑張りを皆さんでして、得るものはやっぱり大きかったでしょうか。

笹木 そうですね。会社全体としてもそれぞれの部署でも、このカンブリア宮殿の放映という機会の後にどう動き出すかということは相当シミュレーションしました。

開発としてもやっぱりこれだけ注目があるんだということもありましたし、あと、1ヶ月のうち半分は中東やアメリカとかに同行させてもらっていて、本当に各国の方々の期待の声に鳥肌が立ちました。中東だとビヨンドオイルと言うんですけど、「石油の次に代わるものを探してるので、ぜひ来てくれ」と、急に事務次官レベルの方が動き出したりするんです。この鳥肌感をどうやって社内や関係者の方々に伝えようかと、そういうマインドになっていきました。

「見えがかり」を気にしろ

小柴 それでは続いて神田さんに。

カンブリア宮殿が今週放映(2016年10月20日に放映)ということで、どんな内容になるのか神田さんも楽しみだろうと思います。ストライプは今すごく成長している企業で、ブランドの顔つきも完成されたものがあると感じます。浴衣ウィークもワールドビジネスサテライトで取り上げられたのを拝見しましたが、メディアの露出時に気にされていることとかはあるんでしょうか。

神田 ありますね。社員も社長もそうなんですけれど、メディアに出る時って我々の用語で「見えがかり」を気にしろと言うんです。また ビジュアルという言葉も社内ではものすごく使われるんですけれども、やっぱりファッション企業ですので、社員一人一人のイメージが、ブランドのイメージに、あるいはコーポレートイメージになるというのが、他の業界に比べても非常に強いのかなと思っています。それは店舗スタッフからすると当たり前で、お店に立っているスタッフというのは自分がブランドイメージの体現者だという気持ちで売り場に立っているので、それは社長であろうと私であろうと本部の他のスタッフであろうと同じで、見え方というのはものすごく気にするという社風であります。

小柴 先ほど、天王洲に神田さんがいらっしゃる所を偶然見たんですけれども、天王洲ではこういったタイトなトム ブラウンのスーツを着こなして颯爽と歩く人ってあんまり見かけないので、オーラを感じました。本業のビジュアルラーニングが、さすがプロ、ということだなあと。

▼ ストライプインターナショナルグループの「トム ブラウン」のスーツを着こなす神田さん

企業トップのポートレートが物語るもの

小柴 ビジュアルといえば、カリスマ経営者の石川さんのポートレート。カチッとしたスーツを着こなして、キッチリ撮ってらっしゃる石川さんのこの写真をよく見るんですけれど、スティーブ・ジョブズといえばあの写真というように、トップの方が、「この人といえばこの写真」というものをキチンと持ってらっしゃるというのは流石だなあと感じています。そういうものを持つということが、もしかしたらこれからもっと当たり前になってくるのかもしれない、とも思います。

▼ アイコニックな石川社長のポートレート

小柴 石川さんは、ご自身がSNSで発信する写真に関しても、こだわりを持ってらっしゃるようですね。

神田 石川が会社のBBQイベントを自分のフェイスブックであげてたんですけども、その写真を選ぶのにもこだわっていました。何十枚か送った中で自分でピックアップしてたんですけど、そのクオリティというのが社外の人に与えるイメージというのは相当意識しています。

小柴 ビジュアルという言葉の定義も本当に人それぞれで、広告コミュニケーションみたいな存在もあれば、空間ビジュアルもあれば、ファッション的なビジュアルもあり、多様な意味を持っています。今日はその中でもストライプさんはインナーにおける、ポートレート写真やアプリによる可視化など、刺激に富んだお話を伺えました。

それからTBMさんについても、未来の可能性に溢れている会社が、アウターに対してこれからの成長をどう伝えようとされているか、ということが非常に伝わったかと思います。

ビジネスにビジュアル力を活かすというテーマで、リアルタイムに成長して未来を創っているお二方のお話を聞いてダイナミックな刺激をいただきました。ありがとうございました。

共に成長目覚ましい両社において、ビジュアルの力を事業の発展に大きく活用されていらっしゃるお話に、参加された方々も食い入るように耳を傾けていらっしゃいました。今後業種を問わず様々な企業において、ますますビジュアルの力を活用し得る環境になっていくのではないでしょうか。
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<セミナー概要>
ビジネスを伝える「ビジュアル力」と、社員を繋ぐ「コミュニケーション術」
日 時:2016年10月18日(火)14:30〜17:30
会 場:株式会社アマナ 天王洲オフィス
参加費:無料(事前申し込み必須)
※本セミナーは終了しています

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