VRによる企業の研修や医療現場での活用など、最近はテレビのニュースでもVRが取り上げられる機会が増えてきました。これにより「VR=ゲーム」という固定概念は確実に変わりつつあります。
「VR元年」と呼ばれた今年、VRは企業活動の最前線でどのように使われているのでしょうか? 国内外の5つの事例をご紹介したいと思います。
最初にご紹介するのはCanonの一眼レフのVRシミュレーター。実際に販売されているカメラとレンズを組み合わせ、撮影シミュレーションができるOculus Rift用アプリです。
森の中などの疑似環境が用意されていて、ISO、シャッタースピード、絞りの設定がどのように写真に反映されるか試せます。カメラを買う前に機種の特徴を知りたい場合や、撮影のトレーニングにも便利ですね。
撮影現場はトラブルがつきもの。天候によっては機材のセッティングでバタバタすることも多く、マニュアル撮影のシミュレーションができるのはプロのフォトグラファーにとっても嬉しいはず。もしこれが実写ベースのアプリだったら、多くのフォトグラファーがOculus Riftを買わなければならないくらいのインパクトがあったかもしれません。
また、今後こうしたアプリがスマートフォン向けに実用化されれば、僕も含めたCanon製品のライトユーザーがスペックからは読み取れないカメラやレンズの性能を知るのにも役立ちますね。
こちらは「ゼクシィ」のムック版の付録として提供されたVRスコープです。スマホにセットすることでハワイ・オアフ島の5つのウェディング会場の下見できます。
会場の広さや奥行き、インテリア、窓から射し込む光をVR映像で再現。「海外挙式を検討しなかった理由」の約30%が「会場の下見ができないから」という、ゼクシィの読者アンケートの結果をヒントに開発されました。
関連記事『今こそ企業が押さえておくべき「VR本当の価値」』でも紹介した、「場所」を提供できるVRの強みがここでも活かされていますね。このスコープで見られるのは会場内の様子だけのようですが、周辺環境や現地の雰囲気まで感じられるようになるともっといいかもしれません。
VRゴーグルは手に取って使うものなので、その質感は少なからずコンテンツに影響します。今回のように体験者が手作りするゴーグルの場合、その質にも気をつけると良いでしょう。VR体験はゴーグルを組み立てるところから始まっているんです。
続いてご紹介するのは、横浜DeNAベイスターズの本拠地・横浜スタジアムに開設されたVR体験ブースです。
サムスンの VR Gearを装着すると、通常はチーム関係者しか入れないブルペンやフリー打撃の練習を間近にいるかのように見られます。観客席にも360°回転するイスが用意されていて、そこでも風を感じたりしながらVRコンテンツを楽しめます。(参考:360BAYSTARS スペシャルページ ※現在サイトは閉鎖)
球場のシートにVRをつけてしまうあたりは、さすがDeNA。普通なら目の前のゲームに集中して欲しいと思うはず。そこにVRを入れる決断はなかなか難しかったと思います。
2020年に向けて注目が集まるスポーツ分野。プロスポーツ選手は普段手の届かない憧れの存在だからこそ、VRコンテンツが適しているのかもしれません。最近ではNBAがVR映像のストリーミング配信を始めたというニュースもありました。
「場所」と「近さ」という2つの強みを活かしたVRならではの特等席で見るスポーツは、テレビ観戦を凌駕する迫力があると思います。今後、振動、3D化、ハイレゾなどの技術が進歩するにつれ、さらに迫力のある体験へ進化するでしょう。
MRIと超音波データをもとに胎内の赤ちゃんの姿をVRでモデル化する技術が、ブラジルの研究者によって開発されました。心拍音を聞きながらあらゆる角度から赤ちゃんを見ることで、気道の状態や出産後に手術が必要な疾患を把握できます。
この技術はリオデジャネイロ市内の病院で既に使われているそうです。治療に役立つのはもちろん、レントゲン写真では分かりにくい赤ちゃんの成長をはっきりと確かめられるのは親にとっても喜びなのではないでしょうか?
先日開催された「VR Summit 2016」でもパネリストの多くが触れていたように、VRは医療を大きく進化させる可能性を秘めたツール。日本でも国家レベルで力を入れていって欲しいと思います。
※グリー、VRコンソーシアム共同開催イベント「VR Summit 2016」の模様は関連記事でもご紹介しています。
【Japan VR Summit 2レポート】2020年のVRと中国市場(前編)
【Japan VR Summit 2レポート】VRは儲かる?投資家注目の理由(後編)
カプコンがPlayStation VR用に開発したホラーコンテンツです。10月13日から配信されています。着席したままプレイするスタイルで、ゴーグルを装着するとプレイヤーは自分の手がワイヤーで拘束されていることに気づきます。蜘蛛の巣が張った天井、男性のうめき声、床に落ちている包丁、血痕‥。逃げ場のない360°映像の恐怖は圧倒的。
ヘッドマウントディスプレイを使うVRコンテンツは体験を共有できないのが弱みと言われていますが、見方を変えれば、「共有できない」ということは「体験するまで得体が知れない」ということ。世界最大のゲームイベント「E3 2015」でも、「KITCHEN」の出展ブースは常に悲鳴が止まなかったそう‥。
カプコンからは2017年1月に「バイオハザード7」の発売も予定されています。PlayStation 4とPlayStation VRの両方に対応していますが、あるVR専門メディアの編集長がPlayStation VR のVRモードで体験版をプレイしたところ、怖さのあまり途中でプレイを断念してしまったとか‥‥ いわく通常の体験に比べると「数倍の怖さ」。ただただ期待するばかりですね!
最後にVRにまつわるエピソードを1つ。
昨年2015年、アメリカ・フロリダ州の病院で心臓の外科手術にGoogleのヘッドマウントディスプレイCardboardが使われたというニュースがありました。
担当した医師によれば、患者の赤ちゃんは生まれつき心臓の左心室がなく、年齢や体力の問題もあって他の医師が手術を断ったとのこと。この医師は心臓の画像をVRでモデル化し、執刀の工程をシミュレーションすることで手術を成功させました。
VRは広く根付き始めていますが、制作のノウハウはまだまだ手探りでキワモノ的な扱いをされることも多いのが現状です。ただその一方、VRが1人の赤ちゃんの命を救ったのも事実。VRは私たちの生活に確実に影響を与え始めています。今回ご紹介した5つの事例も参考に、興味のある方は気軽にお問い合わせください。
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