11月16日(水)に開催された「Japan VR Summit 2」。グリー株式会社社長の田中良和氏やファミ通グループ代表の浜村弘一氏、GoogleのChief Game DesignerのNoah Falstein氏など、国内外からVRのトッププレイヤーが集まり、幅広いディスカッションが行われました。
前回のレポート「【Japan VR Summit 2】2020年のVRと中国市場」に引き続き、当日のレポートをお届けします。
グリー株式会社と一般社団法人VRコンソーシアムが共同開催するJapan VR Summit 2 の様子
ディスカッションの後半、話題は日本へ。3つ目のテーマは「先駆者から学ぶ〜VRアトラクション編〜」です。
【モデレーター】
新 清士氏 (Tokyo VR Startups株式会社/取締役)
【パネリスト】
小山 順一朗氏 (株式会社バンダイナムコエンターテイメント/AM事業部 エグゼクティブプロデューサー)
田宮 幸春氏 (株式会社バンダイナムコエンターテイメント/AM事業部 VR部VRコンテンツ開発課 マネージャー)
中嶋 啓之氏 (株式会社ユー・エス・ジェイ/コンテンツ開発課 室長)
速水 和彦氏 (株式会社セガ・ライブクリエイション/取締役 施設事業推進部 部長)
日本ではUSJや東京ジョイポリス、VR ZONEなど、VRアトラクションが次々登場しています。しかし、利用説明をするスタッフや、運営サポートスタッフの人件費などコスト面が大きく、ビジネス的には厳しい側面があるようです。
パネリストの共通意見として語られたのは、「かつてないVRの黄金期であると同時に黎明期でもあり、まだ収益を出せる段階には来ていない」ということ。それを打開するためには、コンテンツの価値を高め、これまで興味がなかったユーザーへいかにVRを浸透させるかが鍵になります。
「“VRだから”という理由だけでお客様を呼べる時代はすでに終わっていて、ハード面の斬新さではなく、驚きや共感を与えるコンテンツが必要」と速水氏。また、「スポーツのように体験しながら少しずつ上達していくようなコンテンツに未来がある」という意見もありました。
企業にとっては、目先の収益を出すより先行投資する姿勢で取り組まなければならず、「流行っているから、ちょっとやってみたい」くらいではまだまだ難しい分野なのかもしれません。
これまでVRはゲームなどエンターテイメントと親和性が高いと考えられてきましたが、ゲーム以外での活用も進んでいます。4つ目のテーマは「VR/ARはゲーム/エンタメから各産業へ花開く」です。
【モデレーター】
久保田 瞬氏 (株式会社Mogura/代表取締役/Mogura VR編集長)
【パネリスト】
大前 広樹氏 (ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社/日本担当ディレクター)
Tony Mugavero氏 (Little Star Media, Inc./Founder,CEO)
野村 達雄氏 (Niantic Inc./ポケモンGOゲームディレクター)
馬場 功淳氏 (株式会社コロプラ/代表取締役社長)
現状、VRコンテンツの開発者はゲーム制作者が多くを占めています。しかし、VR制作ツールの1つであるUnityを使える技術者は、クリエイティブな産業であればゲーム以外でも活躍できるといいます。
例えば今注目されているのが医療分野。手術前に医師がVR上でシミュレーションしたり、ARと組み合わせて子供のフィジカルセラピーとして、診察時に「腕をもう少し上げるとPokemon(ポケモン)が喜ぶよ」といって腕を上げさせたりする方法に注目が集まっているそうです。さらにホロアイズで開腹手術前にシミュレーションができるシステムとしても活用が進んでいるのだとか‥‥
また、見るだけではないインタラクティブ性もVRの特徴。テレビ的な作り方はいったん捨てて、「VRに適したコンテンツとは何か?」あらためて問い直すことにより、活用の幅も広がるのではないでしょうか。
VRの発展には資金が欠かせません。いま投資家もVRに熱い視線を送っています。最後のテーマ「投資家が展望するVRの収益化」では、VRをめぐるマーケットの動きについて話し合われました。
【モデレーター】
筒井 鉄平氏 (GREE VR Capital, LLC/Managing Director)
【パネリスト】
Kevin Zhang氏 (Upfront Ventures/Principal)
Tipatat Chennavasin氏 (The VR Fund/General Partner)
Toby Zhang氏 (CRCM Venture Capital/Partner)
Kevin氏がVRに投資する理由は、「VRは教育、訓練、フィールドワーク、OJTなど、様々な分野に応用できるから」。これは他のパネリストの意見も同様で、いわく「世界的に拡大する予感がある」。投資家でもあるパネリストのみなさんの期待感をひしひしと感じました。
ただ、マネタイズの観点では方法が確立していない部分もあります。VRコンテンツ内に広告を出す場合も現時点ではユーザーが少なく、多くの企業は今まさにスタートアップをしている状況なのだそう。
また、新しい業態として中国にVRカフェなども登場しており、コンテンツ課金型の配信では中国国内で1ヶ月あたり80万回プレイされたものもあるそうです。今後どのようなマネタイズ法が成功するのか注目が集まります。そうしたなか日本の企業が優位性を維持してゆくにはどうしたらよいのでしょうか?
その答えとしてパネリストから贈られたのは、「日本は漫画やアニメ、ゲームが革新的で、VRでコンテンツを作れば素晴らしいものになるに違いない」という心強い言葉。「過去のプラットフォームの発想は捨て去り、“VRに特化したコンテンツとは何か”について考えながら開発することが必要。あらゆるものを実験的にやってみて欲しい」と締めくくられました。
これまでVRは、一部の開発者や関係者が実験的なチャレンジを繰り返していた状況でした。それが一般に浸透し始めたのが2016年であると言えそうです。近い将来、インターネットを介したVRゲームも開発され、世界中のユーザーとの同時プレイも可能になるはずです。HMDを装着してネット上の仮想現実で世界中の人と交流する、そんな日も近いでしょう。
また今回は多くのパネリストがゲームだけでなく、医療分野でのEラーニングやコミュニケーションツールとしてのVRの可能性に注目していたことが印象的でした。
VRはただ映像を見るのではなく、医療や教育など私たちの日常生活のあらゆるシーンで活用できて初めて生きてくるツールです。ゲームの延長線上の発想を捨て去り、VRをまったく新しい媒体として捉えることこそ、今後VRを語るうえで必要になってくるのではないでしょうか?
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