昔から動物を使ったCMは数多く作られてきました。可愛さを前面に押し出したものもあれば、動きの面白さを取り上げたものもありました。
この流れは今もかわらず引き継がれ、TVCMはもちろん、YouTube等の動画投稿サイトでも、動物を撮影したものは人気が高いようです。かくいう私も動物の動画を見始めて止まらなくなった経験が多々あります。どうやら動物にはタレントにも負けない吸引力があるようです。
可愛い動物をそのまま使ったコンテンツもいいのですが、今回、私が提案したいのは、動物のもつ特性や生態を効果的に利用したコンテンツ作りのアイデアです。
いま動物を使ったコンテンツと聞いて真っ先に思い浮かぶのはネコでしょうか。TVでもSNSでも書籍でもあらゆる媒体にネコがあふれています。しかし、活躍している動物は何もネコだけではありません。ソフトバンクのお父さん犬に、アフラックの白いアヒル、ミラバケッソのアルパカなどなど。
懐かしいところでは、一世を風靡した三菱自動車ミラージュのエリマキトカゲ。また、日清食品の焼きそばUFOのウーパールーパーは、それまでほとんど知られていなかった生き物ですが、愛らしい表情で一躍人気者になりました。シロクマにパンダ、ペンギンにアカキノボリカンガルーなど、これまでにたくさんの動物がCMに起用されてきました。
今年の7月に発表された「上半期CM好感度」(CM総合研究所)によると、2位にソフトバンクの「お父さん犬」白戸家シリーズ、4位にAmazonジャパンの、たてがみをつけた犬(ゴールデンレトリバー)が赤ちゃんと触れ合うほのぼのしたCM、そして6位にソフトバンクの桐谷美玲とふてニャンが共演しているCMがそれぞれランクインし、10位以内に3つも動物ものが入りました。
これらのCMでは、動物が話題になって商品や企業を覚えてもらえることに成功しています。有名人、著名人に比べても、動物の訴求力は引けを取りません。
“動物力”は商品や企業のブランド力を印象づけるだけではありません。難しくなりがちなテクノロジーの話を、消費者に受け入れやすく伝えることにも非常に優れた存在なのです。
動物には人間と同じように「衣食住」があって、くらしている環境に合わせてそれぞれ工夫をしています。
「衣」の例でいうと、冷たい海でくらすラッコは体温が逃げないよう分厚い毛皮を着ています。
「食」の例にはこんなものがあります。
かたい木の実を食べるリスは、すり減ってもどんどん伸びてくる前歯をもっていますし、暗闇で獲物を探すコウモリは、目で見る代わりに高性能の耳を使います。
「住」の面白い例としては、チンパンジーやオランウータンが挙げられます。彼らは毎日夕方になると、樹上に心地よい葉っぱのベッドをつくって休むのです。
また、シロアリは空気の通り道をつくることで一定の気温が保たれた巣の中で快適にくらしています。
それではテクノロジーの説明のために、試しに簡単に動物の生態と商品の特徴を組み合わせてみましょう。とりあげる題材はエアコンです。
夏に外の暑い空気を冷やして部屋の温度を下げるエアコンの機能は、砂漠にすむキツネの仲間、フェネックの生態に親和性があります。フェネックの大きな耳は体の外に熱を逃がし、体温が上がり過ぎないように調節する機能をもっています。いわば自前のクーラーを持っているというわけです。
また、冬に外の冷たい空気を温めて部屋の温度を上げるエアコンの機能は、寒冷な草原にすむウシの仲間、サイガの生態と親和性があります。サイガは呼吸をするにあたり、吸い込んだ冷たい空気を巨大な鼻の中で温めてから体内に送っています。こちらは自前のヒーターを持っていると言えそうです。
このようにエアコンが空気を冷やしたり暖めたりする機能の説明に、動物の暑さ・寒さ対策を活用すると、なんとなく親しみを持てる内容になりませんか?
動物には人間と変わらない「衣食住」の要素があるので、人間の「衣食住」の業界や商品とも親和性が高く、そこに面白い生態の話をからめることができれば、訴求力のあるコンテンツをつくり出すことができるのではないかと思います。