2015年8月に企業の経営の透明性を求める「コーポレートガバナンス・コード」が導入されて以降、会社案内やアニュアルレポートに社長のポートレートを掲載する機会が増えています。
スケジュールが押さえづらいうえ、撮影時間も限られていたりと、なかなか簡単にはいかない社長の撮影ですが、十分な準備をせずに臨んでいては企業のトップを相手に思わぬトラブルを引き起こしかねません。今回は実際の現場でもたびたび起こる典型的な失敗パターンと、それらを未然に防ぐための具体的な方法をご紹介します。
忙しい社長のスケジュールを押さえるためについやってしまいがちなのが、「他の社内撮影の合間の時間で………」というケース。これは絶対NGです。ライティングの準備や撮影機材のセッティングに加え、クオリティの高い写真を撮るためにはそれなりのカット数も必要になります。他の撮影の合間を見て行うのでは十分な撮影時間もなく、最悪の場合は再撮影、なんてことにもなりかねません。何より「ついでに撮影」では社長ご本人にとって大きな失礼にあたりますよね。
社長撮影は事前に秘書の方などと綿密に連絡をとり、時間と場所をしっかり押さえましょう。スケジュールが決まったら数日前からリマインドして、その日撮影があることを認識してもらうことも大切です。心構えができていればその日までに散髪を済ませる方もいらっしゃいますし、お気に入りのスーツやネクタイを複数用意するなど、ご本人も準備をすることができるんです。
スケジュールがタイトなために、撮影内容があいまいなまま撮影当日を迎えてしまった……そういった現場は少なくありません。実際よくあるのが、バストアップの写真を撮った後に「ついでだから全身写真も」と急に依頼されるケースです。こうなると一大事。照明器具の位置を変えることから始めなければいけません。また、全身写真はスーツの裾や靴まで配慮する必要があったりと、気をつける点も変わってくるため、結果的に社長ご本人の拘束時間も長くなってしまいます。
こういったことを防ぐには、シチュエーションやポージングのイメージを撮影の前にある程度固めて、関係者内で共有しておくことです。もちろん細かいポージングまですべて決めておく必要はありません。「この媒体にこういう目的で写真を掲載するので、この背景でバストアップを撮影する」というように、撮影の趣旨や流れの認識を合わせておくのがポイントです。そうすることで段取りの無駄も減らせますし、撮影自体もスムーズに進みます。
企業のトップとはいえ、やはり撮影となるとそれなりに緊張するものです。特にご年配の方の場合は、撮影が始まるとカメラの前で仏頂面になってしまうケースも少なくありません。また、カメラマンの方が萎縮してしまってぎこちない雰囲気で撮影が進み、撮り終えた写真をチェックすると、案の定、固い表情ばかり……というのもよくあるパターンです。現場の空気感は思った以上に写真のクオリティに影響します。
活気ある現場づくりには会話が欠かせません。できれば撮影の前には、秘書の方などから社長の身の回りのトピックを聞き出して、カメラマンと共有しておきましょう。「最近お孫さんが生れたそうで……」、「ゴルフのスコアが上がったそうで……」。そんな身近なトピックはご本人の緊張を和らげますし、話しかけながら撮影を進めることでより自然な笑顔を捉えることができます。日ごろ多忙なスケジュールをこなす社長の撮影だからこそ、こうしたちょっとした気遣いや工夫が撮影をスムーズに進めるうえでも大切になるのだと思います。
社長のポートレート撮影に自社の社員を使って撮影する企業もありますが、これは出来るだけ避けた方がよいでしょう。人物撮影ほどプロとアマの差が出やすい被写体はありません。常にコミュニケーションをとりながら撮影を進める必要がありますし、状況がめまぐるしく変わる撮影現場では、用意した物がない、想定していた通りの撮影が行なえない、などトラブルはつきもの。限られた時間の中での的確な判断、素早く対応する力が求められます。「仕上がりに大差ないのでは?」とコストを抑えたいために内製した結果、再撮影になってしまったのでは本末転倒です。なにより多方面から注目を浴びる企業の「顔」を決めるとも言える撮影には、さまざまな現場を経験してきたプロのカメラマンを起用したいものです。
また、カメラマンを起用する際は、社長の年齢や性別に合わせて選ぶのがポイントです。若い社長ならアクティブな表現を得意とする若手カメラマンを選ぶのもいいですし、ご年配の方なら貫禄や重厚感を表現できるベテランの起用がオススメです。男性の社長の場合は若い女性カメラマンを起用すると自然に社長の表情が柔らかくなり、撮影現場の雰囲気が和やかになるケースもありますよ。
スケジュールや撮影時間の点で制約が多いからこそ、しっかりとした事前準備と指揮が求められるのが社長のポートレート撮影です。カメラマンに任せっきりにするのではなく、
このように撮影される側の気持ちも考えて、準備と工夫を重ねていくことが、結果的にクオリティの高いポートレートを仕上げることにもつながります。今回ご紹介したような失敗を引き起こさないためにも、しっかりと事前準備をして撮影に臨みましょう。
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