オウンドメディアを運営していく中で毎日のように新たな課題が出てきます。中でも頭を抱えるのが、記事それぞれの画像選び。「ビジュアルを上手に使ってコミュニケーションを変えていこう!」を信念にしている私たちにとっては、最も慎重になるところです。とはいえ、Webメディアはスピードが大事。
他のメディアの人はどうやって画像を選んでいるの? なんて話をしていた矢先、セミナー「Spotlight・grape・アマナイメージズに学ぶ効果的な画像の選び方」が開催されると聞き、新米メディアとして参加してきました。
登壇者は以下の3名。
それぞれが画像を使うことの重要性を説く中で、参加者が特に聞き入ったのは「じゃあ実際どういう基準でどのように画像を選んでいるの?」という部分でした。
エンタメから社会問題まで、幅広いニュースを発信している「Spotlight」編集部・渡辺さんは、画像がSNSで拡散されるものかどうかというところに注視。Facebookのいいね数90万人と業界最大規模の同サイトは、一体どのようにSNSとの親和性を高めているのでしょうか?
渡辺「Facebookはコンテンツがあふれている。いまやコンテンツを絞る動きもはじまっています。似たような画像では読まれない。だから差別化していく工夫をしています」
そこで、これまでの経験を踏まえ、拡散する画像の特徴をいくつか挙げてくれました。
特に驚きだったのは、SNSではクオリティの高い静的な画像よりも、多少ブレがあったり粗いものであっても「動」を感じる画像の方がヒットしやすいということ。実際Spotlightでは、二者択一ならば後者をセレクトすることが多いんだとか。渡辺さんは映画の告知記事を例にとり、どちらがクリックしたくなるか問いかけます。たしかに並べてみると、躍動感のある画像の方が「なんだろう?」と思わせますね。
一方で、動画・画像コンテンツを中心に情報発信する「grape」は、より実験的な方法を実践。同社の取締役CTOの吉盛さんは、いかにして効率よく記事を制作するかに注目して、できるだけ個人の能力に頼らない仕組みづくりに取り組んでいます。
たしかに個人のセンスや経験に頼る運営では、たとえばエースライターが辞める場合、これまでの品質を保つことが難しくなってしまったりと、安定した運用が行いづらくなりますね。
これを根本的に解決すべく、grapeでは、googleの「ディープラーニング」(※)を元に開発したシステムを導入。人の手を入れずに、読者の感情に訴求できる記事制作ができないかと研究を行っているそうです。
※「ディープラーニングって……?」と目を丸くする一部の参加者を前に、すかさず解説を始める吉盛さん。“黄金比”をはじめとした、人に好まれる画像の特徴を学習させた人工知能のことだそう。
これは、さまざまなメディアからエンゲージメントの高い記事の情報を収集することで、記事制作の際に、より最適な画像やタイトルを自動で導きだしてくれるという、担当者にとっては画期的なシステム! 解析結果は、編集部だけでなくライターらにも共有しているそうです。曰く「怠け者システム」であるこのツールは、引き続き開発を進めて、下記のような機能の搭載も目指していくとのこと。
吉盛「世界で見てもWebメディアは変革期。新しいメディアが出てきて新たな取り組みも始まっています。なんでもやってみて、トライ&エラーを繰り返し、幅を広げてやっていきたいです」
最後に登壇したアマナイメージズの新居さんは、画像を提供する側からの目線で話を展開。写真には「情報」と「感性」、ふたつの力があるとし、まず下記の例を挙げます。
新居「ストーリーを感じさせる画像は人の心を動かしやすく、受け手の行動をも変える力があります。でもこれは、記事の性質によって選ぶ画像を選択するのが良いでしょう」
たとえば、『服装は一番外側のあなただ』という言葉に使う写真。ビシッとスーツを決めたサラリーマンか、カラフルなアクセサリーで着飾るアフリカの原住民かでは、言葉の意味はだいぶ変わっていってしまいます。
新居「中身をキチンと伝えたい時は、説明的なものを。感性に訴えたい時は、ストーリー性のあるものを選んでみる。ケースバイケースですね」
画像の選び方はさまざま。歴史の長いメディアでも、試行錯誤を重ねる日々のようです。しかし漠然と画像を選んでいては前に進むことはできません。まずは使いたい画像の特徴を理解すること。情報型なのか感性型なのかを考えるところから始めていくのが良さそうです。
Spotlight、grapeの運営から見えてきたのは、裏側に「効果検証」という作業が必ずはさまっているということ。記事は“掲載して終わり”ではなく、“効果測定を行って検証するまで”が完成までのフロー。各記事の成績を見直せば、選んだ画像が効果的だったかも、見えてきます。さらにそれを編集部やライターなど、記事に関わる人を巻き込んでチェックし、数字の面からメディアを可視化していくことが「読まれる画像」の答えを見つける方法のようです。
Spotlight・grape・アマナイメージズに学ぶ効果的な画像の選び方
※本セミナーは終了しています。