セミナー「話題のキャンペーン仕掛け人達が語る、ネットで刺さる動画の活用術」
企業のプロモーション活動を考える上で、Web動画は欠かすことのできないコンテンツです。でも、いざ企画してみようと思うと、どんなものがよいか決めかねてしまう方も多いはず。そんな悩みに答えるセミナー「話題のキャンペーン仕掛け人達が語る、ネットで刺さる動画の活用術」が、動画制作プラットフォームを運営するViibar本社で開催されました。
登壇者は数々の動画のキャンペーンを手掛けてきたプロ3名。中でも編集部は、「広告キャンペーンにおけるネット動画の活⽤⽅法」について説いた電通CDCのプランナー・尾上永晃さんの講演に注⽬して、これからのWeb動画についてを考えました。
参加者の熱心な眼差しが注がれる中、尾上さんが登壇。「どちらかというと動画よりもキャンペーン寄りの人間なので僭越なのですが……」と恐縮しながらも、まずWebキャンペーンの変遷をひもときながら、動画が重要な役割を果たすようになってきた理由として、“スマホの普及”を挙げます。
尾上「Web動画自体は、海外でNikeやQuicksilverが早くから取り組んでいましたが、日本ではこれほど活用されていませんでした。でも最近は、サイトへのアクセスがPCよりもスマホからのほうが上回ることが多くなってきたことで、PCで動作するリッチなコンテンツよりも、スマホで手軽に見ることのできる体験のほうがユーザーに届きやすい、という流れが出てきました。動画はそこにうまくはまったんです」
もうひとつの理由として“SNSの普及”があります。
尾上「『ソーシャルメディア』というくらいなので、ユーザー自身がメディアのようになって、ほかの人たちを楽しませようとするんです」
しかし、現実には面白いものや引きのあるネタは、自分の周りにはそれほど転がっていないもの。だからこそ、SNSで目につきやすい動画がシェアされやすくなるようです。
尾上「SNSがGIFに対応しはじめましたね。僕らが手掛けた『GREEN NAME』の場合は、生成したものが動画的に人の目に触れるようになった、という土壌を意識しました。無理矢理動画にひもづけてみましたが(笑)」
名前を入力すると、名前の漢字に含まれるグリーンな部分をアニメーション化してくれる。完成した画像はFacebookやTwitterでシェアが可能に。
出典:GREEN NAME by 淡麗グリーンラベル プロモーションムービー
さらに、もうひとつの業界的な要因についても指摘。
尾上「圧倒的なビュー数を稼いだ忍者女子高生とSAMURAI in BRAZILが、ほぼ同じ時期に公開されたことも大きな要因でしょう。それで、企業からWeb動画の依頼が増えたんじゃないかと。結果、似たものが増えてきていて差別化できておらず、『これクライアントどこだっけ?』なんて話になりがちに。広告として機能してませんね。こうなると」
出典:忍者女子高生 | 制服で大回転 | japanese school girl chase #ninja
では、どんな動画であれば拡散するのでしょうか?
尾上「YouTube向け劇団の人と話していて教えてもらったんですが、たとえばスマホで見る動画を前提にした時には、語りかけたりする距離感が大事で、それでビュー数が全然違うみたいですね」
つまり好まれるのは、なるべく顔のアップを入れて表情を見せるようにした映像など、ユーザーの手元で会話しているような動画。
尾上「ユーザーとコンテンツの距離感というのはとても大切です。これは動画に限らずで、例えば、好感度のある商品とそうでもない商品では全くやり方が変わってきます。上からいくか、下からいくかとかも。動画からは外れてしまうのですが、僕らが手掛けた『10分どん兵衛』は、そのあたりを強く意識しました。あえて謝罪文を出してみたり。動画関係ないですが」
さらに、スマホで見る場合でも“良さ”が伝わることも、拡散する動画の特徴だと言います。
尾上「いくら高解像度のきれいな映像を届けても、スマホの小さな画面で見ると残念ながらそれほど感動しないもの。でも、“実はこの映像は一発撮りで撮影した”とわかるものだと、すぐに広まって話題になったりします。そういう”構造”の部分が大事です。すると、ユーザーもシェアしやすいんです。『すごい!』って言いやすいので。逆に、趣味性を押し出したものはシェアしづらいですね。いいね!がつかなかったらショックうけちゃいますから。『うわー、3いいね!しか付かなかった……』『こち亀好きなの僕だけ……?』『なんか恥ずかしい……』ってなっちゃいますからね。かといって、そんなシェアだけ目標にして数式みたいに作られたコンテンツばかりになるとつまらないし、結局似ちゃってクライアントのためにならないので、どうにか抗いたいところです。と言いつつ、僕自身は動画じゃないものばかり作ってますが……」
尾上さんが紹介した「一発撮り」の事例/出典:OK Go – I Won’t Let You Down – Official Video
熱心にメモをとる参加者に向けて、最後に尾上さんは、「ただ話題になるだけで、はたして意味があるのでしょうか?」と投げかけます。重要なのは、商品やブランドの世界に深く入り込んだ企画を立てること。
尾上「ただのドッキリじゃなくて、商品・ブランドを好きになってもらうという、明確な目的を持った動画で話題になるというのが次のフェーズ。個人的には、Web動画は新しい視点を与えてくれたり、観た後に世の中がちょっと面白く見えたりするような発見のあるものであってほしいなと思っています。影響力があるだけに」
動画は、いまや多くの企業がプロモーションツールとして活用しています。また、スマホやSNSの普及によって、ユーザーが動画に接触する機会も増えています。だからこそ、話題になるだけの動画では、本当の意味でユーザーの記憶に残るものにはならないのではないしょうか。これからの価値ある動画は、アイデア勝負ともいえるでしょう。大事にしたいのは、「実は一発撮りだった」といった驚きを与えたり、動画に仕掛けを加えること以上に、ユーザーの感情に訴えかけること。そして、前提として“どう記憶されたいのか”“何をブランドとして大事にするのか”を意識していくことが、今後の動画プロモーションにおいて、より重要な要素となっていきそうです。
「話題のキャンペーン仕掛け人達が語る、ネットで刺さる動画の活用術」