「使える写真がない……」と思っていた広報担当者に朗報です!

制作物のコンセプトは決まっていても、それに合う素材がなかなか見つからなかったり、手持ちの写真では商品の魅力を伝えるのに不十分だったり…、広報やマーケティングの制作現場ではビジュアルに関する様々な悩みがあるものです。

そんな時おすすめしたいのが、単純な写真修正から一歩先へ踏み込んだ、新しいレタッチの活用。ビジュアル本来が持つ力を引き出し、クリエイティブへと生まれ変わらせるレタッチの世界をご紹介します。

そもそも「レタッチ」とは?

ひと言でいえば、PhotoshopやIllustratorなどのソフトや、画像編集アプリを使った写真・イラストの加工・編集作業。モデルの肌の色を整えたり、特定の部分を切り取ったり、人物と背景を合成したり……、そうした作業を指して「レタッチ」と呼びます。

ただ、修正だけがレタッチではありません。アイデア・工夫次第で、身近なツールを使って古い写真をリメイクしたり、素材の持ち味を活かしながら、そこに新しいメッセージやシズルを加えたりすることも充分可能なのです。

レタッチで広がる可能性

(1)古い写真を生まれ変わらせる

広報やマーケティングに携わる方なら、自社で長いこと保管されている古い写真を目にしたこともあるかもしれません。でも、そうした写真はたとえ被写体が良くても劣化したりしていて、そのままビジュアル素材として使うのは厳しいケースも多いはず。

そんな時、レタッチがひとつの解決策になります。フィルムで撮られたモノクロ写真なら、まず画像編集ソフトに取り込んで必要な部分をトリミング。ぼやけた輪郭線などを修正しながら、コントラストを調整したり、色を加えたりすることによって、手持ちの古写真が見違えるようなビジュアルへと生まれ変わります。

「NIKKA WHISKY 80thプロジェクト」 創業者の古い写真を活用したキャンペーン広告で使用された。

(2)感覚をビジュアルで伝える

食品・レストラン業界などではよくあるケースですが、味・香りといった感覚的な要素を上手く制作物に落とし込んでいくのは思った以上に難しいもの。そうした場合、文章で伝える試みからはいったん離れ、レタッチを活用してビジュアル訴求するのが有効です。

「NESCAFÉ Dolce Gusto」 カフェメニューの商品画像をレタッチ。シズルと背景の視覚効果を組み合わせることで、文字だけでは伝わりにくいコーヒーやティーといったカフェメニューの持つ特長をビジュアライズした。

「NESCAFÉ Dolce Gusto」 カフェメニューの商品画像をレタッチ。シズルと背景の視覚効果を組み合わせることで、文字だけでは伝わりにくいコーヒーやティーといったカフェメニューの持つ特長をビジュアライズした。

(3)静止画にストーリーを与える

例えば、一見すると少し敷居が高そうなアートや芸術品。その魅力を広く分かりやすく伝えるにはどうしたらよいのでしょう?

答えのひとつは、画像を重ねて写真に動きを出すスチルモーションという手法。絵画の場合なら、静止画に重ねてスチルモーションで筆の動きを追加することで、筆の息遣いや1本1本の線の美しさといったディテールを動画のように見せることができます。それによって特別な専門知識がない人にも「こんな細かいところまで描かれているのか…」というサプライズを与えることができるのです。

このように、既存のビジュアルに、その制作過程や作者のこだわりといった「ストーリー」の要素を加えられるのも、レタッチの大きな強みです。

(4)アイコンに動きを出す

SNSの世界においては、文字や画像のやりとり以上にアイコンによるコミュニケーションが効果を発揮します。その意味で、SNSでのプロモーション展開を考えている方などにおすすめなのがアイコン×レタッチの手法です。

ベクター形式のイラストに(3)で紹介したスチルモーションを組み合わせれば、従来のアイコンに動きを加えることが可能に。加速化するデジタルコミュニケーションにおいて、気持ちや感情をよりスピーディに、よりアクティブに伝えるツールとして活用できるはずです。

(5)未来のイメージをカタチにする

写真は、震災復興支援のアートプロジェクトのために制作されたポートレート。約40枚の子どもたちの写真をレタッチして組み合わせ、東北地方の未来と夢を象徴する「キズナ」を表現しています。明確な意図と想像力をもってレタッチを活用すれば、こうした「まだ見ぬ」イメージを具体化することもできます。

「キズナジョイントプロジェクト」

レタッチを単なる修正ではなくクリエイティブの手法として捉えることで、ビジュアル本来の力を引き出し、またそれに新たな価値や意味を与えることができます。とりわけ注目すべきなのは、あなたの会社にも眠っているかもしれない既存の素材の活用です。何年、何十年にわたってストックされてきた写真やイラストは、まぎれもなく企業の資産。企業の歴史はもちろん、時代を鋭く切り取った貴重な素材も少なくないはずです。そうした企業資産としてのビジュアル素材に、今回紹介したようなレタッチの技術を組み合わせたとき、これまでにない制作物のカタチが見えてくるかもしれません。

Profile

プロフィール

大井 一葉

株式会社ライジン イメージングディレクター

卓越したレタッチ技術が武器。「痕跡を残さない」というリアリティを追求する理念のもと、ビジュアル制作におけるハイクオリティなアウトプットの方法を最適にディレクションし提供する、イメージングディレクター。
http://rizing-inc.com

Profile

プロフィール

千葉 博充

株式会社ライジン ムービーディレクター

アニメーション会社に勤めた後、ライジンに入社。レタッチャーとして活動していた経験を生かし、 「動く写真」のスチルモーションを担当。動きのリアリティをマニアックなまでに追求する映像クリエイター。
http://rizing-inc.com

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