レガシーブランドの勝ち残り戦略 〜「懐かしさ」と「価値観」の融合

子ども一人でも作れるKraftのマカロニ&チーズ、牛乳を七色に染めるLucky Charmのシリアル、口の中で溶けるM&M’s…。子ども時代に連れ戻してくれる製品は世の中にそう多くはありません。しかし、消費者の食生活パターンが進化するにつれて、何十年もの間愛されてきた食べ物は今の子どもにも受け入れられるのでしょうか?

現在のCPG(消費財)ブランドは、Wonder Breadよりもキヌアを好んで食べるような世代の子どもや親にアピールするために、責任をもって製品に進化させなければならないのです。

 

懐かしさと消費者の欲求との融合

レガシーブランドは、「懐かしさ」を武器にできますが、それだけでは不十分です。製品は、その中核にある属性を維持しながら消費者が望むものに適応しなければなりません。現在の消費者の多くは、味はもちろん、何らかの便益を備えた製品を強く望んでいます。その例が食事制限を満たす食品・飲料(低炭水化物、グルテンフリーなど)や、映画で食べるポップコーンなど、体験を補完する食品・飲料などです。

そのため、レガシーブランドは、関連性の高さを保ちつつ目新しさに飛びつくのを避けるために、自社の立ち位置を理解し、パッケージを一新し、自分たちが表明する立場を宣伝しなければなりません。

それほど栄養価は高くありませんが、抜群な美味しさを提供しているDoritosブランドは、1964年以来、激しい競争を生き延びてきました。日曜日のフットボール観戦時のおやつとして販売され、象徴的なSuper Bowlの広告を継続的に発表してきたDoritosは、そのノスタルジックな品質を証明し(2000年代に販売されていたDoritos 3Dチップスの終売を未だに嘆いている人もいます)、X世代やZ世代にとって伝説的な存在です。その間、Doritosは自社の消費者基盤を理解し、消費者の望むものを絶えず提供してきました。例えば、同ブランドは、Taco Bellと協力して開発したDoritos Locos Tacoの成功を受け、Pizza Hut Australiaとのコラボレーションで、大胆にもDoritosをピザの生地にしたDoritos Crunchy Crust Pizzaを発売しました。

 

製品のコア機能に忠実であり続ける

ブランドがライフスタイルや健康のトレンドを意識することは重要ですが、トレンドを追い求めるためだけに製品を変更すると、人々に愛されてきた中核の属性が失われてしまう危険性があります。たしかに、健康を意識する人は増えましたが、美味しくて身近な食べ物を好きなだけ食べたいという人もたくさんいます。人々がEllio’s PizzaやHot Pocketsを食べるのは、健康だからではありませんよね。同様に、味を変えたり、健康志向の消費者に訴求するつもりがないならば、ウェルネストレンドに追いつこうと適応したりレシピを大幅に見直したりしても意味がありません。

レシピや味を変えずにうまく適応したブランドは、Nabisco Animal Crackersです。サーカスの檻の中にいる動物たちが描かれたパッケージには、懐かしさを感じることでしょう。このパッケージは、かつては喜びや冒険を表していましたが、古いサーカスでの動物の扱い方が残酷だと見なす新しい時代に対応するために、パッケージを巧みに再デザインし、檻から解放されて自由に闊歩する動物を描きました。このように、製品にシンプルな変更を施すだけで、話題を呼び、新たな関連性を生むことができます。

自社ブランドを活性化するためには、新しい味を発売するだけでは不十分だという意味ではありません。しかし、トレンドを追い求めるために、象徴的な地位を獲得したかけがえのない要素を失わないようにしてください。

 

諦めつつある多くのレガシーブランド

多くのブランドは、トレンドに追いつこうとするあまり、消費者から見た自社の意義を見失いがちです。ブランドは、自社のブランドアイデンティティを維持し、現在の市場における独自性を認め、マーケティング活動を現代化・一新することで、現代の消費者に訴求する努力をしましょう。

私の目から見て、責任を持ってブランドを再発明する用意が十分にできているブランドはBuglesです。同ブランドは、現代で成功するために完璧な要素を持っていると思います。人々に愛され、味も抜群で、ユニークな名前や形を持ち、さまざまなフレーバーをそろえています。同ブランドを販売するFrito-Layは、Buglesの販売をイベントと結び付けたり、Buglesを使ったレシピを紹介したりするなど、これまでの戦略方針を一変させる必要があります。Buglesは、忠実なファンを支持者に変えるためにデジタルとソーシャルプラットフォームを活用し、自社のマーケティングを変化させなければなりません。

他に私が目を付けているのはYoo-hooです。「カルシウムとビタミンDを豊富に配合したチョコレートミルク」ではなく、「水と砂糖を主成分とする美味しいチョコレート飲料」というのがこの製品のコア機能です。そのため、栄養価の高い万能ドリンクとして製品を売り出すよりも、単純に美味しい飲料として売り出した方が消費者を獲得できる可能性が高いでしょう。同ブランドは、ソーダの代替飲料として積極的に自身を売り込み、不定期に購入する顧客よりも少数の忠実な顧客の方がずっと価値があるという事実を受け入れるべきかもしれません。

激動の時代において、「古き良き懐かしさ」よりも優れたものはほとんど存在しません。昔の楽しかった思い出を思い起こさせる製品を食べるのは、驚くほど気持ちが安らぐ行為です。レガシーブランドは、関連性の高さを保ちつつ、自社の立ち位置を理解し、パッケージを一新し、自分たちが表明する立場を宣伝しなければなりません。そうして初めて、ブランドはかつて自分たちを愛してくれた人々の尊敬と注目を集め、彼らの子どもたちを新世代の忠実なファンとして温かく迎えられるようになるのです。

 

この記事はAdweekのTravis Yorkが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンス化されたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

 

元記事「Legacy Brands Can Compete With Challengers by Blending Nostalgia and Values」は2019年3月1日にInsights.newscred.comに掲載されました。

 

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