2018年9月27日、東京では昨年に続いて2回目となる「ThinkContent TOKYO 2018」が開催されました。
今年のテーマは「コンテンツが導く、マーケティングの新世紀」。トップマーケターやグローバルブランドは、どのようにしてコミュニケーション戦略を構築・実施しているのか。世界のベストプラクティスや最新トレンドを通じて、コンテンツマーケティングの“いま”と“これから”を多角的に学ぶことができる、貴重な1日となりました。
本レポートでは、最初の登壇者としてイベントのオープニングを飾った、NewsCredのPresident兼COO、Charles Houghのセッションをお送りします。「コンテンツマーケティングの世界の潮流」をテーマに、グローバルマーケットにおけるコンテンツ活用の最先端を織り交ぜながら、コンテンツマーケティングの課題と予測について講演しました。ぜひご精読ください。
※ThinkContent TOKYO 2018のプログラムや登壇者の詳細はこちらをご覧ください
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NewsCredのPresident兼COO、Charles Hough
皆様、こんにちは。2回目のThinkContent Tokyoにお越しいただき、誠にありがとうございます。ThinkContentは、ニューヨーク、東京、ロンドンで、開催場所に関わらず、マーケティングのプロの方々が、このように一堂に会し、お互い学んだことを共有しながらマーケティングソリューションを作っていこうという趣旨のイベントです。
今年のはじめ、Gartnerがコンテンツマーケティング業界のマジック・クワドラントの調査をはじめました。弊社NewsCredは、コンテンツマーケティング・プラットフォームというカテゴリーにおいて、栄えある第一位を獲得することができました。我々が色々なことを学び、マーケティングコミュニティの皆様とさまざまなことを共有し、またテクノロジーの進歩にも貢献できたことが、この評価につながったのだと自負しております。
お客様、パートナーの皆様、ときには競合他社の皆様のサポートやコラボレーションなくして、この一位を獲得することはできなかったと思います。再度御礼を申し上げます。
まず、私が最近お客様から何を学んだかを話したいと思います。私たちのお客様は、大手のグローバルブランドなのですが、グローバルのマーケティングの世界で何が起こっているのか、最近の潮流をお伝えします。
最近の潮流は3つのカテゴリに分けられます。コンテンツのパフォーマンス、GDPR(一般データ保護規則)の施行、組織のサイロ化です。
昨年のThinkContent Tokyoでは、パフォーマンスについて色々お話しました。コンテンツを中核的なアセットとして活用し、企業の業績を上げていこうというお話をさせていただきました。
朗報ですが、このことは変わっていません。パフォーマンスはまだ大事です。コンテンツのためにコンテンツを重要視するのではなく、質の高いコンテンツを目指し、ROIをきちんと測っていく。パフォーマンスを上げるためにコンテンツが重要なのです。むしろ、これからお話する課題があるゆえに、パフォーマンスは、今まで以上に大事になってきていると思います。
このような数値を見たことがあるかと思います。コンテンツの類似性、コンテンツが無駄になっているという問題です。とくに紹介したいのが、この統計です。
貴重な時間とエネルギー、そしてお金をかけて作ったコンテンツなのに、4回以上シェアされたコンテンツは、全体の半分、50%しかありません。皆さんのマーケティングチームは4人以上で構成されている場合もあるかと思いますが、同じチームのメンバーですら共有していないという統計なのです。つまり課題は、コンテンツの量ではなく、どういうコンテンツが出ているのか、ということです。コンテンツの影響を測定し、パフォーマンス改善につながっているかどうか、きちんと把握できているかということです。
もうひとつ、今年初めにあった大きなことは、EUでGDPR(一般データ保護規則)が施行されたことです。
GDPRが施行されたことで、我々マーケターは、今までの考えを改める必要があります。なるべく多くのコンテンツを作ってユーザーに発信するということではなく、どういうコンテンツを作るべきなのか、きちんと理解しないといけない。ビジネス戦略に合致したコンテンツを配信しなくてはいけない。それをきちんと測定し、業績改善につながっているかどうかを正確に把握しないといけない、という状況です。
このような潮流の結果、新たな課題が生まれています。企業はひとつのチームとして、コラボレーションを行っていく文化をきちんと築く必要性が出てきています。新しいマーケティングの潮流に遵守した活動をしていく重要性が出てきたのです。
マーケティングの組織は、とにかく専門性を重視してきました。これまでは、ひとつのチャネルで、非常に専門性の高い内容をオーディエンスに向けて配信していました。自分の専門性の範囲の中で、ひとつの限られたチャネルの中において、生産性の改善に取り組めばよかった。しかしいまは、ソーシャルメディア、Email、ブログ、ソーシャルの中にも色々なサブチャネルが普及しています。これまでのマルチチャネル型のアプローチ、それにもとづいたチーム編成では対応できなくなっています。
従来のやり方では、複数の、専門性の高いチームがサイロ化し、縦割りの組織になってしまい、複数のチャネルが独自に活動し続けることで、結果的に競争し合うようになっています。共通の目的に向かって一緒に活動していないという事態に陥ってしまうのです。
理想的には、オムニチャネル型のアプローチに進化しないといけません。共通の目的を持ち、透明性を高め、他のチームが何をやっているのかを相互に理解し、フィジビリティ、可視性を高め、業績を上げるために何をすれば良いかの情報をきちんと共有する必要があります。
以上が、いまグローバルで起きている3つの大きな現象です。1つ目が、コンテンツのパフォーマンス。2つ目が、GDPR後の世界に対応するガバナンスをきちんと管理・強化し、ブランドエクイティやブランドインテグリティを確保しないといけないこと。3つ目は、いまのサイロ化が進む状況から、我々はチーム編成の仕方を考え直す必要がある、ということです。
皆様のチームがオムニチャネルに向いているかどうか、チームが最適に編成されているかどうかを確認するために、ここに掲げた8の項目を考えてみてください。
プロジェクトの計画が頻繁に遅れてしまう。共通の目的に向かって整合性のあるカタチで活動ができていない。説明責任や可視性、透明性がない。ほかのチームが何をしているのか情報が把握できていない。それらが当てはまるようなチームですと、ここに掲げている8の症状が出がちです。オムニチャネルに適したチームにはなっていないということです。
弊社でマーケターの皆様に調査をさせていただきました。そして自分に点数をつけてもらうようにお願いしました。その結果、わずか17%のマーケティングの組織しか、戦略立案という意味では進んでいると思っていない、ましてやオペレーション業務や実行に関しては10%の組織しか「進んでいる」と答えられませんでした。
先ほど3つの潮流を紹介しました。それらを踏まえて、業界がどうなっていくべきか、どうなりつつあるのか、ご紹介したいと思います。
まず最初にテクノロジーです。営業、研究開発、財務の組織を見ますと、単一のプラットフォームで作業しています。しかし、マーケティングの組織を見ると、お互いに接続していない、20の別個のツールを使っている、複数のツールが積み上がっている組織をよく見かけます。私どもの予測では、いまのように複数チャネルが広がっている時代においては、マーケティングチームも単一のプラットフォームを使い、今後はコラボレーションしていくということになるでしょう。
2つ目が、コンテンツです。コンテンツは、いわば通貨のような存在で、業績の改善につながります。お客様と、より強い関係を構築することができる、より良いブランドエクイティにもつながります。コンテンツが中核的な資産となり、コンテンツを使って関係者全員がコラボレーションできるような環境が生まれる ーー この潮流はどんどん強くなっていくと思います。
3つ目の予測として、統一されたチーム、統一された組織です。従来のサイロ化された縦割り型ではない、統一されたチームが必要になるということです。
以上の3つを用いて、理想的には、こちらにある5つのプロセスを網羅できる組織を編成したいと思っています。
まず、部門やブランドを超えて、企業内や企業間でのコミュニケーションを活性化する、対話を深めるということ。しかもリアルタイムで可視性のあるカタチで対話ができるようになることです。
また、プランニングとエグゼキューション(実施)は、同じツールを使わなくてはいけません。マーケティングチームを見ますと、プランニングの段階では、あるツールを使う、たとえばスプレッドシート的なものを使う。エグゼキューションになると、また別のツールを使うというマーケティング組織は少なくありません。
4つ目は、コラボーレーションです。1つのシステムを使っていない。可視性がない。協力する文化になっていない。そうするとコラボレーションが欠如したチームになってしまいます。
5つ目に、測定をし、分析をしなくてはいけません。そして分析した結果の洞察を次の戦略に活かさないといけない。そうすることで、コンテンツを使って業績を最適化することができます。
こちらのグラフは、組織におけるコンテンツの役割を示しています。
コンテンツは、今後マーケティングの世界では、お金の通貨のような存在になっていくでしょう。すべてのチャネル、タッチポイント、戦略を超えて使われていくものです。
さらに、コンテンツマーケターの役割が変わっていくでしょう。いまは担当しているブロックやチャネルが決まっていて、その範囲内に限った活動ですが、将来は、もっとコラボレーションできるような文化へと変えていくための、変革を促す存在へとコンテンツマーケターは変わっていくでしょう。最終的には、チームやチャネル間の競争を減らし、ブランドの費用対効果、そしてパフォーマンスを最大化していくことが目標になります。
本日、マーケティングの世界で抱えている課題、将来についての予測をしましたが、これは5年ないし10年という長期的な視野に立ったものではありません。いまのマーケティング業界のことです。統一されたチームのコンセプトというのは、業界として、十分重要視してこなかったことなのかもしれません。
今後、大手ブランドのお客様と、より緊密な協力関係を築かなくてはいけません。そして、一緒にパフォーマンスの向上を目指して協力し合えるチーム、一緒にコラボレーションし、プランニングやエグゼキューションを協力して行えるチームこそが、今後マーケティングプログラムで成功できるのだと思います。
マーケターにとって、これは大きな課題かもしれません。一歩下がって、ブランド全体の目的やゴールを俯瞰して考え、コラボレーションできるチームを編成していく。それも効率の良いカタチでコラボレーションをはかれるようにしていく。そうすることで業績を最大限に引き上げていく。ROIは、売り上げではありません。利益が大事なのです。運営面での効率を高めることが大変重要になっていくでしょう。
以上が、我々が共通で抱えている課題ではないかと思います。ご静聴ありがとうございました。
Photos by 川合穂波(acube)
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白土 啓はamanaのコンテンツディレクター/キュレーターです。
NewsCredのサービスについては、NewsCred by amanaまでお問い合わせください。
amana Content Marketing
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コンテンツマーケティングの本場であるアメリカで、業界を牽引するリーディングカンパニーであるIndustry Dive。国内唯一の独占パートナーであるアマナがその集合知を活用し、成果へと繋がるコンテンツマーケティングをサポートします。
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