コンバージョンの向上は、コンテンツマーケティングを成功させるうえで不可欠です。
効果的なコールトゥアクション(CTA)があるか否かが、継続・測定することが可能な黒字のROI施策となるか、短命な試みとなるか、その判断を決めているかもしれません。質の高いコンテンツが最も重要な要素であることは言うまでもありませんが、そのコンテンツのコンバージョンに向けて考え抜かれた戦略こそが、読者のエンゲージメントをビジネス上のアクションに結びつけているのです。
しかしコンテンツ施策では、多くの場合、仮にCTAがあるとしても、深く考えないままに配置されています。戦略的アプローチをとるのではなく、Webページのテンプレートに付いてきたデフォルトのモジュールで満足している場合も多いのです。そのため、当然良い成果はあがりません。新たなコンテンツマーケティングのパフォーマンスの世紀では、デマンドジェネレーション戦略が、コンテンツマーケティング施策のコア要素となる必要があります。だからこそ、NewsCredは、こうしたスキルセットを備えるアドバイザリーサービスを用意し、クライアントのコンバージョンに向けた戦略をサポートしているのです。
この記事では、あるクライアントの数カ月にわたる施策から得られた実データを紹介します。このデータからは、CTA戦略を持つことが非常に重要であること、ユーザージャーニーの違いによって、CTAのコンバージョンに大きく差が生まれることを見てとることができます。それぞれのケースを確認しながら、どうやって自身の施策に最適な形で適用できるかを考えてみましょう。
データの理解を深めるため、企業名は伏せたまま、施策の内容について少し述べておきます。取り上げたのは、B2Bを対象としたSaaSビジネスを行っている企業です。急速に成長しつつあるその業界において、ブランドアウェアネスを高めるため、コンテンツマーケティング施策に取り組みました。一番の目標は、デマンドジェネレーションチームに向けて新しいリードを生み出すことです。この目標を達成するため、NewsCredは2つのCTAを中心として、この企業のコンテンツハブを制作しました。
コンバージョン率に着目する前に、オーディエンスがコンテンツにふさわしいレベルのエンゲージメントを示しているかを検証することが大切です。この情報は、戦略に食い違いがないかを把握するうえで重要になります。コンバージョン率だけを見ていると、それぞれのチャネルがどのくらい成果をあげているかについて、正しい認識を得られません。たとえば、じつはCTAにミスマッチがあるというケースでも、そのチャネルのコンバージョン率が低いと考えることになりかねません。
まずは、エンゲージメントという観点から、トラフィックの主要なチャネルごとの成果を見てみましょう。NewsCredのアナリティクスはカスタムメイドのエンゲージメント率表示機能を備えており、トラフィックの何パーセントがコンテンツ上で積極的なエンゲージメントを示したかを測定します。そこで、ここではその測定値を利用します。他社のサイト分析ツールを利用することもできますが、この事例では、コンテンツマーケティング向けに考案された指標を利用していきます。
チャネル別のエンゲージメント率のグラフを見ると、突出しているものがいくつかあることに気づくでしょう。TwitterとLinkedInが最も高いコンテンツへのエンゲージメントを示しており、オーガニック検索とメインサイトのドメインからのトラフィックが続いています。これは、コンテンツが適切なオーディエンスにリーチしていることをはっきりと示すものです。しかし、それぞれのチャネルから、適切なコンバージョンを得られているでしょうか。
適切に比較できるよう、上のグラフに新しい棒グラフを書き込みます。エンゲージメント率はそのままで、最初のCTA、ニュースレター購読について、チャネルごとのコンバージョン率を加えてみましょう。同じCTAの2つのバージョン、サイドバーとポップアップをそれぞれ確認します。一方は静的で、他方はページ内で特定の位置までスクロールすると現れるというように、違いがあるからです。普通に考えると、ポップアップ版が静的版よりも圧倒的なパフォーマンスを示しそうです。
ポップアップ版ニュースレター購読のコンバージョン率を加えたデータを確認してみましょう。すぐに気づくのは、最大のエンゲージメント率チャネルのTwitterが、ニュースレターの購読者をまったく生み出していないということです。エンゲージメント率が高いことを考えると、何かが間違っているように思えます。一般的に、SNS広告チャネルには、ニュースレターの購読申し込みであれば、良いパフォーマンスを期待したいところです。とくに、このチャネルのオーディエンスは、コンテンツにあまり多く触れていないため、限定コンテンツ閲覧のための登録といった、高い価値を持つコンバージョンよりも、ニュースレター購読のような、サイトへの関わり方が比較的軽いCTAに対するコンバージョンの方が発生しやすいだろうと考えられるからです。
一方、ドメインからのトラフィックが、他のソースをはるかに上回る成果をあげています。これは、あまり珍しいことではありません。なぜなら、ドメインからのトラフィックは、メインサイト上で最もプロダクト中心の情報を探しているときに発生しているからです。
Eメールも良い結果を残していますが、これは直感に反するように思えます。Eメールがソースなのに、なぜEメール購読を希望するのでしょう。もしかすると、このEメールのトラフィックは他のナーチャリング元から来たのかもしれません。しかし、気づかないうちに、Eメール購読者に対して不要なCTAを提供している可能性もあります。Eメールのトラフィックに対して、固有のUTMパラメータを適用してこのデータを詳しく調べれば、こういった疑問の解決につながるでしょう。
結果としては、最も成果をあげているチャネルの一部と、そのチャネルが獲得しているコンバージョンとの間に、食い違いが起こっているわけです。とはいえ、重要な判断を下す前に、コンバージョンに関して、さらに確認してみましょう。
次に登場するのは、静的なサイドバーのコンバージョン率です。
CTAのゴールはまったく同じであるにも関わらず、ポップアップ版のときとは、Twitterの立場が完全に逆転しています。最もエンゲージメント率が高いチャネルであるTwitterで、サイドバーがポップアップをここまで圧倒しているのはなぜでしょうか。
経験的にいえば、これはポップアップの最適化に失敗しているためと考えられます。CTAの表示が早すぎると、読者が登録後に他のコンテンツをもっと読みたいと思う気持ちを持つ前に、わずらわしいCTAを提供してしまうかもしれません。CTAの提供が遅すぎれば、読者が十分にコンテンツを読んでどこか他のサイトに移動してしまい、購読のタイミングを逃しかねません。最適なタイミングを探るうえで一番の味方になるのがA/Bテストですが、コンテンツの長さやソースが異なれば、テストにもさまざまなバージョンが必要になる可能性があることは、心に留めておきましょう。
静的なCTAによるコンバージョン率が高いことを考えると、表示が遅すぎるせいで、ポップアップ版CTAは、購読意思を持ち得るオーディエンスにはリーチしておらず、静的CTAがリーチしている可能性が高いようです。これは、今述べた考え方をテストして、Twitterにおけるコンバージョンを向上させる絶好のチャンスです。
では、他のチャネルについてはどうでしょうか。オーガニック検索は大変価値が高く、エンゲージメントも大きいチャネルですが、ニュースレーター購読の2つのCTAのいずれもコンバージョンできていません。LinkedInやFacebookの結果も同様です。そこで、より価値の高いコンテンツのCTA、すなわち限定コンテンツを閲覧するための登録について見てみましょう。
ここでは、初めに見たポップアップCTAの結果と同じパターンが現れています。ドメインのトラフィックはファネル下段のコンテンツに対しても非常に良いパフォーマンスを示しています。この結果が示すのは、正しくターゲティングがなされれば、メインサイトからのトラフィックは非常に有益だということです。
一方で高エンゲージメントを示した他のチャネルは、いずれも低いコンバージョンとなっています。このCTAに関していえば、これは驚くことではありません。というのも、SNS広告からのオーディエンスが、価値の高いオーディエンスへと変化する可能性は、他のチャネルと比較してかなり低いからです。最も費用がかかるチャネルからは、なんのコンバージョンも得られていないということです。
それ以上に悩ましいのは、オーガニックチャネルです。検索結果上位に現れるための労力から考えると、このチャネルに対する有効、適切なCTAは、明らかに設定できていません。もしかすると、これは単に適切なアクションを記録していないせいかもしれません。しかし、このデータはまさに、アクションのあるべき姿を見定めるうえで、重要な要素です。ここで何かアドバイスするとすれば、オーガニックのトラフィックを生み出しているページについて掘り下げ、オーディエンスがそのコンテンツを見つけた際の検索ワード、つまりオーディエンスが探しているトピックに対して、必然性のあるCTAを追加できないか検討することでしょうか。それはオーディエンスの求めるトピックに関して、単純に多くの情報を提供することかもしれません。あるいはトピックに関連した限定コンテンツを提供することなのかもしれません。
適切なデータを得られているのであれば、CTA戦略を構築し、チューニングを繰り返しながら、CTAのパーソナライゼーションへと近づけていくことになります。
結論を引き出そうとする前に、このデータをさらにもう1つの観点から見てみましょう。再来訪者によるトラフィックを新規訪問者と比べたらどうなるでしょうか。この観点は、これまで集めた多くのデータを検証するうえで役立ちます。経験からいうと、コンテンツに関する知識を深めるために戻ってきているので、再来訪者の方が、高い価値を持つアクションについてのコンバージョン率が高くなりやすいのです。そのため、再来訪者に対して最適化していることを確認することは、コンバージョンするばかりのオーディエンスにとって非常に重要となり得ます。それぞれのコンバージョンについて、新規訪問者と再来訪者を比較してみましょう。
まさに予想どおり、新規訪問者はファネル上段のゴールに対してコンバージョンしやすく、対してファネル下段のゴールにはまったくコンバージョンしていません。一方、再来訪者は、各ゴールに対してコンバージョンしていますが、限定コンテンツへのコンバージョン率が4倍近く高くなっています。
すべての再来訪者へ限定コンテンツを提供するというゴールを決めてしまう前に、限定コンテンツにおける再来訪者を分解して、彼らがどこからやって来たのか見てみましょう。
想像通り、再来訪者のソースとして最もコントロールしやすいものが、上位を占めています。すなわち、Eメールとドメインのトラフィックです。これは、驚くべきことではありません。これらのソースはブランドとそのコンテンツを最も多く露出していたわけですから、ファネル下段のコンバージョンがユーザージャーニーにおける次のステップとなるのは理にかなっています。ペイドメディアとオーガニック検索がまだその域にないのは明らかで、このことは、こうした再来訪者にどのCTAを提供すべきかを見極める際の参考になります。
ここまで多くのデータを見て、多数のシナリオとその結果がわかりました。では、次にどうすべきでしょうか。それぞれのデータの要点をまとめ、クライアントの施策における戦略的な次のステップを構築しましょう。
1. ポップアップの最適化
ポップアップは、ドメインからのトラフィックには有効でも、エンゲージメントが強いTwitterからのオーディエンスには、目立った成果を見せていませんでした。しかしサイドバーのCTAでは、結果が異なっていました。主要なチャネルそれぞれに対し、ポップアップについてのA/Bテストを行い、それぞれのチャネルに適したタイミングを見つける必要があります。NewsCredの利用しているOptinMonsterなど、ほとんどのポップアッププラットフォームでは、A/Bテストのオプションとしてチャネル別にトリガーを制御することができます。そのため信頼できるテストを簡単に実施することができます。
2. オーガニックのトラフィックに対するCTA戦略の見直し
すべてのCTAが、オーガニックの訪問者に対して成果をあげていませんでした。考えてみれば、これは当然のことです。SNS広告などからのトラフィックは、ブースト広告やスポンサー広告に従って、あるコンテンツを読むよう促されたものと考えられます。一方、オーガニックからのトラフィックは、検索クエリによって来訪したものです。ある疑問への回答を求めて来訪し、エンゲージメント率から考えると、回答を見つけています。しかし、適切な次のステップは提供できていなかったと考えられます。ときとして、単にもっとたくさんの記事を読んでもらうことが次のステップであり、検索時の疑問が解決に近づくまでポップアップを表示することが最善ではない場合もあるのです。
3. 検討したうえでの再来訪者への対処
すでに見たように、再来訪者はユーザージャーニーの別のステージにあります。しかし、そのステージもまた、トラフィックのソースごとに、かなり様子が異なります。再来訪者を、より高い価値を持つCTAの対象にするためには、どのタイミングが最適なのか。それを明らかにするのは、データに任せましょう。オーガニック検索から、あるいはソーシャルメディアからなど、再来訪者に向けたポップアップを用意することは良いテストになるかもしれません。ポップアップはcookieにもとづいていることが多いので、大抵は初めての訪問時に一度表示されるだけです。つまり、こうしたソースからの再来訪者は、最も適切なときに、ポップアップを見ていない可能性があります。繰り返しになりますが、再来訪者向けだけにトリガーを備えたポップアップが、成功の近道かもしれません。
この試みで示された例は、B2B企業に限定されたものですが、このようなデータへの厳格な姿勢は、どのタイプのクライアントにも適用できます。コンテンツマーケターは、オーディエンスにとって次のステップがどうあるべきか、どのような可能性があるかを検討する必要があります。また、1つのコンテンツに対して次のステップは複数存在する場合があることの理解も必要です。なぜなら、その記事とマッチングする可能性のあるユーザージャーニーは、多数存在するからです。施策を真の意味で最適化するには、あらゆる角度、ジャーニー、ユーザー、訪問者がコンテンツを読むに至った動機について考える必要があるのです。
Liam MoroneyはNewsCred社の分析部門ディレクターです。
元記事「How to Optimize Content Marketing Conversions Using Channel Source Data」は2018年3月12日にInsights.newscred.comに掲載されたものです。
この記事はNewsCred BlogのLiam Moroneyが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願いいたします。
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