若手のクリエイターやアーティストに新たな挑戦の場をつくるべく、宣伝会議のクリエイティブ専門誌『ブレーン』と、総合エンタメ企業のアミューズによる企画としてスタートした「U25 Creativeプロジェクト」。25歳以下がリードするクリエイティブチームで、工業用シール剤・接着剤などを開発製造するスリーボンドのブランデッドコンテンツを制作しました。今回のトライアルから、何が見えてきたのか?企画を動かした、宣伝会議、アミューズ、スリーボンド、アマナの担当者に聞きました。
――そもそも、この企画はどのような経緯でスタートしたのでしょうか?
宣伝会議・大森亘さん(以下、大森):いわゆるZ世代と言われる若手のクリエイターやアーティストが、自らクライアント企業と関係を築きながらクリエイティブを制作する機会をつくれないか。そんな思いから本企画がスタートしました。
アミューズ・舞木真生さん(以下、舞木):新しい広告の形について色々と模索していく中で、「クライアントやクリエイターの方々と直接コミュニケーションをとりながらクリエイティブ制作をしてみたい」という思いを持っていました。そんな思いを、今回、宣伝会議さんが繋いでくださってかたちになりました。
宣伝会議・ 大森:「誰もが表現者になれる時代、クリエイター同士で生み出されたものこそが、埋もれずに広がっていくコンテンツになるのではないか」。アミューズの方々からそういったお話も伺い、クリエイティブに真摯に向き合っていきたいという姿勢に感銘を受けました。
情報過多の中で、ちゃんと抜きん出る、無視されない、記憶に残る「視点」を持つことが大切。だからこそ、アイデアも尖ったものがいいと思いますし、尖ったアイデアをそのまま世に出していけるような環境をつくってみたいという思いでスタートさせたんです。
――スリーボンドさんとしては、どのような狙いでこの企画に参加されたのでしょうか?
スリーボンド・保坂日菜乃さん(以下、保坂):弊社では昨今、デジタルマーケティングに注力していて、SNS施策も強化しています。公式YouTubeチャンネルは開設から2年で登録者数2,000人を突破しました。今回の「U25 Creativeプロジェクト」を通じて、Z世代をはじめとした若年層へのリーチを高めたいという目的で参加しました。
――「U25 Creativeプロジェクト」は、Z世代の視点から企業のコミュ二ケーション議題をどう切り取るかがひとつのテーマになっています。今回なぜ、アマナにお声がけいただいたのでしょうか?
宣伝会議・ 大森:YouTube配信用動画本編並びにメイキング、SNS投稿用のサムネイルなど多様なビジュアルコンテンツ制作が想定されていたので、U25の多彩なクリエイターを有していながら、それらの多様なコンテンツをトータルでプロデュースできる体制が揃っていたことが一番の理由です。
実はアマナさんとは以前にも、月刊『ブレーン』の50周年特集企画として実施した「クリエイティブリレー」でもご一緒していました。企業やブランドのコミュニケーション課題やトレンドを反映したテーマをもとに、6人のクリエイターが6通りのグラフィックを制作するものでしたが、これまでのお付き合いがあったうえで企画をスタートさせられたのも大きな利点でしたね。
――アマナでは、今回の企画をどのように捉えて解釈し、表現していこうと考えたのでしょう?
アマナ・東江紘揮(以下、東江):スリーボンドさんが掲げるテーマ「くっつくことでよりよい未来になる」に対して的確な企画を提案するのはもちろんですが、そのテーマがZ世代にどう映るのか、その視点がもっとも大切だと思いました。
アマナ・ 東江:難しい商材だけに、テーマをどう解釈して表現するかはチャレンジングでしたね。
僕は新卒でアマナに入社して今年で3年目になりますが、今まで一緒に仕事をしたことがなかった社内のフォトグラファーやクリエイターにも、いい機会だと思って声を掛け、スタッフをアサインしました。様々な人に相談する中で、「この人はこんな表現もできるのか」というクリエイターの意外な一面や専門性、社内の知見を掘り下げるきっかけにもなった気がします。
――保坂さんや東江さんだけでなく、出演したアミューズのキャストの方々もZ世代を起用しました。同世代同士だからこそ、共感しながら進められる部分も多かったのでしょうか?
スリーボンド・ 保坂:コロナ禍で日常が一変する中、あらゆる制限下において、これまでにも増して新たなトライアルが必要になってきていると私自身も感じています。そんな状況で同世代から生まれる企画は、どこか柔らかい印象で共感できるポイントが多く、心に残る作品が多かったですね。
アマナ・ 東江:通常の撮影案件ではあまりやらないのですが、今回は撮影前に、出演していただくアミューズのキャストの方を交えてオンラインでお話する機会をつくりました。企画に対して思うことをお互いにキャッチボールしながら進めていって。キャストの方々の生い立ちを演出に反映させて、脚本に落とし込んだ作品のYouTubeコメント欄には、「幼い頃のエピソードを反映させていて面白い」「キャストのいいところを引き出している」といった声もいただいています。
宣伝会議・ 大森:キャストの方々と直接話すのは、このプロジェクトの大きな特色ですよね。
アミューズ・舞木:撮影に入る前に、キャストがスタッフの皆さんとオンラインでお話していたからこそ、初対面の現場で身構える感じがなく、みんなで作品をつくりあげていく「チーム感」を得られていたと思います。撮影現場も終始リラックスした様子で、楽しんでいたのが印象的でしたね。
宣伝会議・ 大森:わかります。アミューズのキャストの皆さんも本企画を“自分ごと化”してくださっているので、一方的、受動的といった感じがなく、SNSで発信してくださる内容がとてもナチュラルでしたよね。やらされている感がないというか。きっとキャスト自身も、能動的に参加してくださったのだと思います。
――作品が公開されて、実際にどのような方々にリーチしている実感がありますか?
スリーボンド・保坂:YouTubeの視聴者データをみると、1作品目(モキュメンタリー篇「絶対にくっついちゃう男」)は18~24歳の女性に多く視聴していただいていますが、2作品目(アニメーション篇「出会い、くっつく」)は45~54歳の男性が多く視聴されています。今回メインのターゲットは若年層においていましたが、出演キャストの方々の影響力もあり、幅広い層にスリーボンドを知っていただくきっかけになっていると思います。
アミューズ・ 舞木:5作品目(アイドル篇「いつもあなたの側にいます」)に出演した八木美樹は2021年まで「さくら学院」というアイドルグループに所属していたり、並木彩華は、雑誌『ちゃお』(小学館)のモデルで同世代のファンの方もいたり…と、キャストによってファンの方の属性も違います。今回の企画を通して、様々な属性の方が「スリーボンド」に興味を持ってくれたのではないかと思います。
宣伝会議・ 大森:彼女たちのようなキャストをきっかけにスリーボンドさんを知るという意味では、メイキング動画を公開したことも効果的だったと思います。
スリーボンド・ 保坂:正直なところ、メイキング動画がこんなに視聴されるとは思わなかったので驚きました(笑)。
接着剤という商材だけに、世の中へのメッセージの届け方は難易度が高いのですが、今回のようにみなさんの力をお借りしながら、スリーボンドファンを増やしていきたいですね。
――今回のトライアルを生かして、今後どのようなことに取り組んでいきたいですか?
アミューズ・ 舞木:今回は(キャスティング会社等は間に入らず)一番近くでキャストを見ている私たち事務所の者が、25歳以下でこれからが期待されるキャストを推薦しました。この企画を観てくださった企業の方が、「アミューズはこういうこともしているんだ」、「これに出演しているキャストやアミューズとタッグを組んでみたい」と思うきっかけになったらいいなと考えています。
宣伝会議・ 大森:宣伝会議としては、「ネットワークを生かしてZ世代が打席に立つ機会をつくる」、そういう意識ができたことが大きな収穫になりました。
アマナ・ 東江:何よりも、アマナでの肩書きだけに縛られないクリエイターが社内にたくさんいることを発見できたのは、自分の中でも大きな成果だと感じています。今回のプロジェクトを通じて得た、そういったクリエイターとのつながりを大切にしながら、今後のクリエイティブ制作に取り組んでいければと思っています。
スリーボンド・ 保坂:BtoB企業として各企画に対してターゲットを明確にすることが重要だと考えています。本企画を通じて、これまでリーチしていなかった若年層にスリーボンドを知っていただき、こんな会社もあるのだと認知していただけたら光栄ですし、その中からスリーボンドのファンになっていただけるよう、今後も時代に沿ったコンテンツをつくっていきたいです。
今回「U25 Creativeプロジェクト」にて制作したクリエイティブは、以下よりご覧いただけます。
①モキュメンタリー篇 「絶対にくっついちゃう男」
本編 | メイキング
②アニメーション篇 「出会い、くっつく」
本編 | メイキング
③dish篇 「Don’t Break Your Creative」
本編 | メイキング
④Love story篇「Hold Your Hand」
本編 | メイキング
⑤アイドル篇「いつもあなたの側にいます」
本編 | メイキング
文:川口ゆかり
撮影:瀬沼苑子(amana)
AD:中村圭佑
編集:高橋沙織(amana)