不況と戦うマーケティング&セールスチームが成功する5つの方法

Andriy Onufriyenko

不況時こそ、マーケティングとセールスが連携し、顧客インサイトを丁寧に共有しながら事業を推進することが重要です。その際におさえるべきポイントについて、studioID(アメリカのBtoBニュースソース企業INDUSTRY DIVEのグローバルコンテンツスタジオ部門)の、Anastasia Dyakovskayaによる解説記事をお届けします。

不況と戦うマーケティング&セールスチームが成功する5つの方法

経済の先行きが見えないときでも、前に進むための唯一の方法は、組織一丸となって協力し合うこと。主要なブランドや企業でさえ景気後退の影響を受けていますが、それでも大幅な予算削減を伴うような進め方は選択肢にないのです。

INDUSTRY DIVEが配信するデジタルマーケティング関連のニュースメディアであるMarketing Diveによれば、前回の景気後退時にメディア投資を増やしたブランドの60%に、ROI(Return On Investmen= 利益投資率)の改善が見られたといいます。不況後もマーケティングとセールスチームが連携して協力し合うと、ROI向上の可能性はますます高まります。

セールスチームとマーケティングチームが戦略を調整し合い、共通の目標のもとに顧客インサイトを共有することは、会社全体が不況を乗り切るうえで大いに役立ちます。そしてそれは、景気後退を乗り越えた先で、より威力を発揮するかもしれません。進めるにあたって優先すべきポイントを、以下に解説します。

顧客の維持に重点を置く

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景気後退時は、成長至上主義的な考え方から一歩引いて、長期的な売上と収益を確保するための顧客維持活動にフォーカスする絶好の機会です。実際、Harvard Business Reviewによれば「顧客の維持は、顧客獲得よりも短期的な経済変動に対して強いだけでなく、費用も1/5で済む」という原則が、景気後退時にはさらに大きな意味を持つとされています。

マーケティングとセールスの取り組みにおいては、顧客データを活用することが重要です。最初の接触から購入後のフォローアップに至るまで、顧客に関するフィードバックやインサイトを定期的に共有すべきといえます。

たとえば、過去のWebサイト閲覧傾向や購買行動に関する顧客情報は、改善すべき課題や領域を特定するのに役立つでしょう。部門横断的な協力関係には、もともとメリットがありますが、顧客サービス部門との定期的なコミュニケーションは、それをさらに強化してくれます。

IT系のスタートアップやWebに関するニュースブログのTechCrunchにもこんな記述があります

「大規模かつアクティブな顧客基盤を持つ企業は不況に強いものですが、特に収益の75%以上を既存顧客から得られる事業形態の場合には、さらに十分な備えがあるといえるでしょう。」— TechCrunch

アメリカ版Forbesの記事によれば、「直販ではロイヤルカスタマーからの売上が全体の約60%を占め、顧客維持率を5%増やすだけで、利益は25%~95%も増加する」とされています。

では、ブランドが顧客を維持するための「ロイヤルティプログラム」とはどのようなものなのでしょうか? マーケターは、優れた顧客サービス、割引、プロモーション、そしてコミュニティ意識の高まりによって、継続的なエンゲージメントに対する報酬を顧客に与えるような、コンテンツ主導型の体験をデザインすることができます。それによって、リピート購入の可能性を高めたり、セールスチームがよりパーソナライズされたやり取りで顧客との関係を強化するのにも役立つのです。

マーケティング・ペルソナの見直し

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ビジネスが停滞したときに必要なのは、改めてターゲットとするマーケティング・ペルソナを元に業務とプロセスを再検討し、最適化すること。先ほど触れたように、マーケティング部門とセールス部門にまたがるデータ収集は顧客維持に貢献しますが、その理由は、ターゲットが本当はどういう人たちなのかを理解するうえで役立つためです。しかし、時と共に、また状況変化に応じて、その人たちも変わっていくわけです。

そのため、マーケティングとセールスが一緒になって、これらのデータを定期的に更新する必要があります。ワークセッションやステークホルダーインタビュー、顧客調査、顧客の意向や消費習慣に関するデータリサーチに加え、必要に応じたリサーチを行うことによって、最新情報に基づいてマーケティング・ペルソナを調整し、セグメントを見直していくことができるでしょう。これによって、自社のセールスチームは、さらにパーソナルかつピンポイントにターゲティングされたやり取りが可能となり、マーケティングチームはより顧客との関連性が強いメッセージの発信やコンテンツ制作を行っていくことができるのです。

ちなみに、オンラインBtoBメディアであるIndustry Diveにおけるマーケティング・ペルソナは、どのようなものでしょうか? 同社マーケティング担当副社長であるRobin Reは、「私たちのターゲット読者は、さまざまな業界の推進役となって責任を負う、すべての人々です」と話します。「経験上、それは主に、各業界内企業で取締役以上の役職に就いている人たちを意味します。我々は一次調査と二次調査をうまく組み合わせて、明確でニッチなペルソナを規定しているのです。」

また、「私たちは、オンラインリソースはもちろん、対面での質問や定期的な調査を駆使して、これらのリーダーの特性や、興味関心対象について理解を深めています。それが、私たちがコンテンツを作り出すうえでの絶対的な指針なのです」とも話しています。

ブランドメッセージの調整

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コンテンツはマーケティングにおいて重要な位置を占めますが、それを取り巻くコンテキスト(文脈)の中でこそ、その威力を発揮します。たとえば、不景気によって会社が厳しい状況に立たされていることをコンテキストの観点から捉えると、顧客もまた同様に、厳しい状況に置かれているということなのです。だからこそ、刻々と変化する現実を真摯に受け止め、ブランドメッセージやコンテンツマーケティング、セールスピッチ、対話、その他の取り組みを通じて、節約意識が高い昨今の顧客に響く施策を行うことがとても重要なのです。

「共感」は、効果的なコンテンツの核心的要素です。そして、困難な時期には、人間らしいアプローチと価値観に基づくメッセージを発することVBM(※注1)がさらに重要になります。コンテンツマーケティングサービスを展開するCopypressが指摘するように、「オーディエンスは、あなたの会社の製品やブランド自体ではなく、それが自分たちに何をもたらしてくれるのかに関心がある」ということなのです。

※注1…VBM:Value Based Managementの略で、 企業価値の増大を目的とするマネジメントの考え方。

「VBMでは、『私(オーディエンス)にとってのメリットは何か?」という要素を、マーケティングメッセージの中心に置きます」。

不況時には、製品やサービスの価値を手頃な価格設定とあわせてアピールし、持続可能性などの利点も強調することで、顧客の節約指向を支援する姿勢を打ち出すことが理にかなっているといえます。セールスチームは、顧客が欲しているコンテンツと、マーケティングコンテンツとのギャップについて貴重なインサイトを提供できるはずです。

このように困難な時期でも、自社の顧客が本当に何を求め、必要としているのかを知ることができれば、それを提供するための努力も苦にならないでしょう。オーディエンスが好むコミュニケーションチャネルが変化していないかをチェックするために、ソーシャルメディアやオンライン上でのオーディエンスの行動を把握しておくことも大切です。ソーシャルリスニングを実践し、以下のポイントを確認しましょう。

・景気後退が彼らの日常生活にどのような影響を及ぼしているか?
・仕事への影響は?
・彼らのプライベートへの影響はどうか?
・不況の影響を最も受けている人々に対して、自社が本当にできることは何か?

営業推進のための努力を倍増させる

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より多くの商談を成立させるには、セールスチームによる的確なリードと重要なリソースの選択が求められます。一方で、マーケターの役割は、データ分析、ナレッジ共有、そして、ブログやガイド資料、ビデオ、ケーススタディなどの「ゲートコンテンツ」と「アンゲートコンテンツ」(※注2)を提供して、スムーズかつ迅速な営業活動の推進を支援することです。

※注2…「ゲートコンテンツ」と「アンゲートコンテンツ」:「ゲートコンテンツ」は、ホワイトペーパー、電子書籍、ウェビナーなど、リードジェネレーションのためのコンテンツ。「アンゲートコンテンツ」は、ブログ記事、インフォグラフィック、YouTube動画など、SEOを改善してブランド認知度を高めるためのコンテンツ。

「営業推進活動を組織的に進めていくためのコツは、マーケターがより良いクリエイターになり、セールスがより優れた実行者になる、ということです」―Gartner

ビジネスと顧客の双方に最もインパクトをもたらす資料を作成するには、コンテンツマーケティングの取り組みを、セールスの目標やアウトリーチ活動と強く結びつける必要があります。そして、セールスチームが彼らの最も得意とする顧客関係の構築や購買促進に注力できるように、リードジェネレーションやメールキャンペーンのように時間のかかる繰り返しタスクを処理するためのマーケティングオートメーションツールを導入するとよいでしょう。

マーケターの役割は、コンテンツを通じてセールスを強化するクリエイティブな方法を見つけ出すことにあります。そのために今すぐ準備できるのは、不況時に特化したセールス向けガイドブック。上記のポイントから集めた情報をもとに、現在の不況下におけるカスタマージャーニーを描き出し、あらゆるチャネルで商談成立の役に立つと思われるペルソナのインサイトを、そこに追加してみましょう。また、特定分野の専門家からの意見や、顧客との対話におけるガイドライン、製品トレーニングの詳細、その他のベストプラクティスを含めてもよいでしょう。

オーディエンスから視線をそらさない

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オーディエンスが求める情報をブログにまとめたり、ソーシャルメディアに投稿するようなコンテンツマーケティング活動は、比較的少ない投資でトラフィックを生み出すことができ、コストパフォーマンスの高い方法といえます。

予算は限られていても、認知度を維持し、ターゲットオーディエンスの注目を集め続けるためには、一貫したコンテンツを制作し続ける必要があります。そうしたコンテンツ制作を継続することは、ブランドの構築とコミュニティエンゲージメントの維持にもつながり、ひいては、不況に疲れた顧客に対してもセールスに必要なリードを作り出せるのです。

今後も起こりうる不況を乗り越え、その先の成功をつかむための最善の方法は、長期的な視野に立って、自社のブランドと顧客との関係構築に投資することです」— 世界的なデータ分析コンサルティング企業であるアナリティックパートナーズの上級副社長、Mike Menkes

質の高いコンテンツは、顧客との信頼関係を築くための材料になります。特に不況時には、人々が信頼できて信用のおける企業とビジネスを行いたいと考えるため、一層重要だといえるでしょう。そして、ここで一貫性を示すことが顧客とのつながりをより強める役割を果たし、経済が回復して人々が通常の購買行動を再開する準備が整ったときに、あなたのブランドが最初に選ばれる理由にもなるのです。


元記事「5 Ways Marketing and Sales Teams Can Still Thrive During a Recession」は2023年2月15日にspringboardに掲載されました。

この記事は、IndustryDiveのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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