日常業務の会話で何気なく使われている言葉「シズル感」。なんとなくは理解しているがしっかり説明できない方も多いかと思います。そんな方々にシズル感を理解し、仕事に役立てていただければと思い、amanaINSIGHTSで『シズルチャンネル』と題して、シズルにまつわる情報発信をお送りします。
ここでは「シズル」を理解し「シズル」を深掘りし、皆さんが自分の仕事に役立てられる情報を、シズルを追求して30年のシズルディレクター兼フォトグラファーの大手仁志がお伝えしていきます。
おいしさを表現する言葉としてよく使われている「シズル」という言葉。皆さんはこの言葉を明確に説明できますか?多くの方がなんとなく理解しているものの、いざ説明となると躊躇してしまうのではないでしょうか。
広告の現場では「シズル感出してね!」とか「このシズル感いいよね」なんて会話が日常的にされています。ただし、この言葉が一般的かと言うとまだ専門的な言葉かと思います。
そこで今回は、「シズル」という言葉の語源から意味を紐解いてみたいと思います。辞書で「シズル」を引くと、これは英語の “sizzle” を日本語に翻訳した言葉です。英語の “sizzle” は、主に料理の音を表現する際に使われます。たとえば、ステーキや焼肉を鉄板やグリルで焼くときのシューっという音を指します。この音は、視覚だけでなく聴覚からも食欲や購買意欲を刺激するため、広告やマーケティングの文脈では非常に重要です。「この商品はシズルがある」と言うと、その商品が魅力的で人々の関心を引く要素を持っているという意味になります。
前述の説明から、「シズル感とは人々の関心を引く要素」であることが分かりました。では、なぜ関心を引く要素が重要なのでしょうか?
商品の魅力を伝えるためのアプローチには、いくつかの方法があります。
・スペックで商品を説明する
・商品開発にまつわるストーリーで説明する
・使用感、使用例などを用いて説明する
実際に商品を目の前にしてセールスできる状況であれば、これらの方法は有効です。しかし、すべての状況でそれが可能であるとは限りません。特に最近は、WebやSNSでのコミュニケーションが増え、ビジュアルを活用して魅力を伝えることが頻繁になっています。つまり、受け手に情報を伝えるビジュアルコミュニケーションがこれまで以上に重要になっているのです。
そのためには、多くのビジュアルの中で「ん!? 」と一瞬で思わせること、言い換えると「瞬殺」が必須ではないかと思うのです。そこで我々は、その瞬殺ビジュアル表現に「シズル」と言う関心を引く要素を用いてアプローチしています。
「シズル」を用いて瞬間的にスイッチを入れてもらうことが、ビジュアルコミュニケーションで最も重要であり必要なものと考えています。
そうです! 「シズル」は人の気持ちを動かす瞬殺スイッチなのです。
「シズル」や「シズル感」は、 おいしさを表現する際に使われることが多いですが、実は食べ物以外の商品や人にも使える表現です。 「シズル感のあるデザイン」とか「職人さんの手のシズル感」など、さまざまな場面で応用できます。
撮影では、単純に被写体を撮影するのではなく、その被写体の持つイメージやバックストーリーなどを表現の中に取り入れることが大切です。たとえば、料理の最後に味の調整でスパイスを使ったりしますよね? 食材や料理の味を決める際に使う、陰の主役的な存在のスパイスです。
料理の味を決める際に使うスパイスのように、最後の仕上げとして「シズル感を加える」ことで、写真をより魅力的にすることができます。これは我々のクリエイティブにおける最も重要なこだわりです。
シズルの有無でビジュアルがどれくらい変わるのか、サンプルを見てみましょう。
ここでは、茹で上げた蟹の魅力を増すためにシズル感を加える前と後の写真を比較します。Beforeの写真でも蟹の魅力を十分に表現できていますが、シズル感を加えることで、その魅力がさらに引き立ちます。
具体的にはライブ感を活用しています。その場の温度や香りを表現することで、写真がより臨場感のあるものになります。
ご覧いただいた通り「シズル感」を加えることでビジュアルの魅力は倍増します。伝わるビジュアルコミュニケーションには必須の要素と言えるでしょう。ぜひ皆さんの仕事にも「シズル感」を取り入れて、伝わるビジュアルコミュニケーションを進めてください。
次回は、伝える相手によって表現方法が変わる話をします。お楽しみに!
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文・撮影:大手仁志 (アマナ)
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