宣伝・広告担当者必見!カンヌだけじゃない、「世界三大広告賞」からみる広告業界の最新トレンド2024

Three major advertising awards in the world

「カンヌライオンズ」「クリオ賞」「The One Show」。

「世界三大広告賞」と呼ばれ、各賞を受賞することはクリエイティブ業界における最高の栄誉です。受賞作品には、普段広告制作やクリエイティブに携わらない理由で、斬新な発想や表現に心躍らされるはずです。しかし、企業の宣伝・広告の担当者にとって、これらの作品に注目することは単なる娯楽以上の大きな意味を持ちます。

世界的な広告賞では、最先端のクリエイティブなアイデアや手法が数多く紹介され、現在の広告トレンドを把握することができます。また、他の企業の優れたキャンペーンや広告からインスピレーションを得ることで、自社のキャンペーンに活かすこともできます。そして、ダイバーシティを前提とした広告賞の審査基準を知ることも、自社のブランドイメージを損なわないことも重要です。

現在、世界三大広告賞の概要と受賞作品の特徴、話題になった受賞作品について紹介しています。最新のトレンドをご覧ください。

カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル

南仏のカンヌで行われる、世界最大規模の広告・コミュニケーション フェスティバルです。アワードは全30部門から成り、毎年2万点を超える参加者がいます。会議の中には、業界を問わず世界の最先端企業が集まるセミナーやトークセッションが開かれています。

・開催日程:2024年6月17日(月)から6月21日(金)

・場所:フランス・カンヌ

公式ウェブサイト

■2023年の受賞作品の特徴

社会課題解決を意識した作品はやはり多いものの、直近の傾向を比較するとその傾向は落ち着きを与えています。エンタメ性の高い作品でも、DE&I(多様性・公正性・包含性)は当然のことながら意識されています。AIをテーマにしたグランプリは、前年の1作品から7作品へと徐々に増え、注目度が伺えました。

■話題になった受賞作品①:SHAH RUKH KHAN-MY-AD

クライアント:Mondelez/Cadbury Celebrations 出典:@cadburycelebrations

コロナ禍で苦境に立たされているインドの小規模店舗向けに提供され、独自のCMを制作できるサービスです。Generative AI技術により、インド映画界のスーパースターであるShah Rukh Khanが「○○○で買い物をしましょう」と、店舗の名前を自然に読み上げてくれます。この独自CMを作成した多くの店舗が、サービスを企画したチョコレートメーカーのCadburyの商品の取り扱い、Cadburyとともに売上増を果たした“ソーシャル・グッド”の好例です。

■話題になった受賞作品②:THE SUBCONSCIOUS ORDER

クライアント:HungerStation 出典:@LLLLITL 

人々の食事のメニューを選ぶことに適しているという課題を解決するフードデリバリーのアプリケーションです。ユーザーの眼球の動きなどをもとに、AIが「無意識下で渇望している食事」を導き出します。最近の研究によると、意識は1秒間に40ビットの情報しか処理できないのに対し、潜在意識は最大でその50万倍の速さで情報を処理できます。このアプリケーションは、サウジアラビアからの出品としてカンヌ初のグランプリを獲得しました。

クリオ賞

1959年に設立され、広告業界において卓越したクリエイティビティを表彰する国際コンペティションです。革新性のある作品が選ばれる傾向が強く、フィルムからデジタル、デザイン、PRまで多岐にわたるカテゴリーがあるため、「広告界のピュリッツァー賞」とも呼ばれています。

・開催日程:2024年5月1日(水)

・場所:アメリカ・ニューヨーク

公式ウェブサイト

■2024年の受賞作品の特徴

多くの受賞作品は、社会問題や持続可能性に焦点を当てています。また、ストーリーテリングに優れ、大きなエモーションを引き起こす作品が数多く評価されています。トレンドにより創造性を高めることも重要なトレンドとなっています。

■話題になった受賞作品①:ADLaM

クライアント:Microsoft 出典:@hoangcao99 

西アフリカに約4,000万人が暮らすフラニ族は、独自の言語を持つもののアルファベット(文字)を持って世界中で暮らしています。独自文化の衰退を懸念し、言語を守ろうとした同部族のバリー兄弟は手書きフォント「ADLaM」を開発しましたが、デジタル化のハードルが高く、その普及が課題となっていました。マイクロソフトは、各種デバイスで使えるデジタルフォント化に取り組み、民族の識字率向上や文化の保存という政策がありました。

■話題になった受賞作品②:Waiting to Live

クライアント:NHS Blood & Transplant 出典:@nhsorgandonation  詳細はこちらから。

NHS(国民保健サービス)が臓器移植の重要性を伝えるためのキャンペーンです。キャンペーン映像には、臓器移植の待機リストが掲載されている子どもたちが登場し、日常生活を送りながら、彼らの不安や希望を伝えています。感動的で明確な意思を持って臓器提供の登録をし、テレビやソーシャルメディアを通じて広がり、登録者数を増やすことに成功しました。

The One Show 

ニューヨークの名誉が主催する広告アワードでは、世界的なクリエイターが審査を行い、ライターやアートディレクターなどの制作者が評価されています。教育的プログラムや若手クリエイターの育成にも力を入れており、その点が大きな特徴です。

・開催日程:2024年5月13日(月)から5月17日(金)

・場所:アメリカ・ニューヨーク

公式ウェブサイト

■2024年の受賞作品の特徴

サステナビリティや社会貢献など、近年のトレンドを意識した作品が並ぶ中、VR・ARなどのデジタル技術を駆使した作品が数多く受賞しました。また、音楽やサウンドデザインへのこだわりが感じられる作品も高く評価されています。

■話題になった受賞作品①:The Lost Voice

クライアント:Apple 出典:@Apple 

世界中で何百万人もの人々が、変性疾患によって話す能力を失う危険にさらされています。これまで、こうした症状を持つ人々は、ロボットのような音声のテキスト読み上げ装置を使用することを余儀なくされてきました。しかし、Apple製品に搭載されるパーソナルボイスは、デバイス上で自分の声をデジタル的に作成するため、話す能力を失った場合でも自分に似た声でコミュニケーションを続けることができます。

作品は、小さな女の子と魔法の友達が失われた声を探しにいく童話が、声を失った父親のパーソナルボイスによって娘へ読み聞かせされる感動的なストーリーとなっており、視聴回数は1800万回に達しました。

■話題になった受賞作品②:女子サッカー

クライアント:Orange 出典:@LLLLITL 詳細はこちらから。

フランスの通信事業者であるOrangeは、サッカーのフランス代表の長年のスポンサーとして男子・女子チームを平等にサポートしてきましたが、女子チームへのジェンダーバイアスを感じました。そこで2023年のFIFA女子ワールドカップの映像を利用し、フランス男子サッカーチームのプレーに見せかけた映像を作成しました。それが実際には女子選手のプレーのために後半で明かすという手法で、視聴者に女子選手のテクノロジーを認識させ、ジェンダーステレオタイプを打破するメッセージを伝えました。

各賞には毎年多くの日本企業が参加し、現地で注目すべき授賞式やトークセッション、セミナーなど参加者や宣伝・広告担当者もたくさんいらっしゃいます。「いきなり現地に行くのはハードルが高い」ということであれば、まずは毎年注目すべき各賞で最新トレンドを掴むことを意識してみましょう。

文:小林拓美

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