宝酒造に学ぶ:3Dで商品パッケージ画像制作の効率化を実現

amana packeX

2024年1月、アマナからリリースされた「amana packeX」。ハイクオリティのCG画像をオンラインで発注できるシステム「amana packeX Entry(アマナパケックス エントリー)」と、パッケージデザインのシミュレーションができる簡易的な画像を生成するシステム「amana packeX Quick 3D(アマナパケックス クイック3D)」の2つの機能があります。

参照:
商品パッケージ画像制作サービス「amana packeX」を2024年1月リリース

amana cgx:商品パッケージCG|amana packeX(アマナパケックス)

この「amana packeX」を実際に利用されている、宝酒造でクリエイティブを担当されている清水講平さんに、その使用感などをインタビュー。また、「amana packeX」の運用に携わっているアマナの田中洋平と齊藤直樹から、開発の背景などを聞きました。

脱・属人化。Web上で完結する「amana packeX Entry」

商品パッケージは、季節ごとや新商品が出るたびに、変更を繰り返します。通常は、その画像生成の依頼は電話やメールから行いますが、従来のやり方では属人化していることに課題を抱いたことから、ECサイトのショッピングのように手軽に発注できないかと考え、アマナでは「amana packeX Entry」の開発に着手しました。

「弊社の場合、商品画像の依頼は各部門の担当者が行い、入稿はクリエイティブ担当の私が行います。担当者によって入稿から支払いまでのやり方が微妙に異なるため、情報共有に齟齬が発生することがありました」(清水さん)

「amana packeX Entry」導入後は手順が統一され、情報が可視化されることによって社内のやりとりがシンプルになったそう。Web上で誰でも依頼できる仕様になっているので、発注担当者が変更になっても簡単な引き継ぎが可能です。

amana packeX Entry
「amana packeX Entry」の制作依頼フェーズより。ユーザーは制作したい商品パッケージの形状を選択し、デザインデータのアップロードを行います。さらにデザインの展開数や商品名を入力してカートに追加するだけで、制作依頼は完了です。詳細な手順は、amana cgx:商品パッケージCG|amana packeX(アマナパケックス)の動画をご覧ください。

平面では伝わりにくい質感こそ3DCGが適任。共通認識の齟齬をゼロに

簡易的な画像を生成するシステム「amana packeX Quick 3D」は、齊藤がクライアントからのニーズに応えるべく発案したことから始まりました。

「クライアント側で商品パッケージのデザインを検証する際、商品の形状に合わせて出力したパッケージ(紙)を巻きつけるなど、アナログな対応で苦労されていることを知りました。そこでWebGL(※)を活用したサポートツールがあるといいのではないかと思い、開発を進めました」(斎藤)

※WebGL(Web Graphics Library):Webサイト上で3Dグラフィックスを高速に描画する技術のこと。


開発を進めるうち、デザインの検証時だけでなく社内承認用の画像としても利用できそう、と現在の形に発展。10年以上前から画像制作のお付き合いのある宝酒造さんに使用していただき、意見をいただきながら精度を上げていきました。

amana packeX Quick 3D
「amana packeX Quick 3D」の制作フロー図。詳細な手順は、amana cgx:商品パッケージCG|amana packeX(アマナパケックス)の動画をご覧ください。 

「宝酒造社内でのデザインの検討は、簡易に正面画像を制作して進めていくのですが、表面に凹凸があるエンボス缶については、画像制作自体に時間がかかってしまいます。かといって凹凸をなくした画像で進めると、最終商品のイメージの共通認識が得にくい状態に。しかも主力商品であるタカラ『焼酎ハイボール』がエンボス缶のため、その点が最大の課題でした」(清水さん)

Package design for Takara Shuzo's canned chu-hai
「amana packeX Quick 3D」で作成したタカラ「焼酎ハイボール」<立石宇ち多゛のうめ割り風>350ml。

「エンボス缶を再現するためには立体のモックアップ(模型)を作り検証するので、社内でのイメージ共有に時間とコストがかかっていました。『amana packeX Quick 3D』導入後は、エンボスの凹凸を再現した3DCGデータでの画像をWeb上で確認することができるので、社内の共通認識を得られるスピードがグンと上がりました。今でも上層部への承認には立体モックアップを用意していますが、部内でのデザイン確認と決裁は格段に通過しやすくなりました」(清水さん)

メタル素材やエンボス加工など、特殊な質感になると見る人によって完成形のイメージが異なるもの。デジタル上で確認できることによってデザインの意図が伝わりやすくなったうえ、文字の視認性などもチェックが容易になりました。

アングル調整も簡単。広告ビジュアルの依頼にも役立てられる

他には、商品のアングル調整が簡単なことも、「amana packeX Quick 3D」の利点。たとえば広告ビジュアルのカンプ(完成イメージ)を広告代理店に共有する場合、資料の中で商品のアングルを変更することが実は難しかったりします。「amana packeX Quick 3D」で生成されたビジュアルは3DCG画像のため、正確な立体画像を360度の角度で検証することができ、アングルを自在に変更してカンプに使用することも可能です。

「広告ビジュアルの制作を確実に進めるには、社内で広告イメージを作り事前に承認を得ることもあります。その際にパッケージのアングルを変えた商品画像を作るには正面画像を加工したり、3Dデータから作ったりと手間がかかっていたのが、簡易にアングルを変更した商品画像を作っておくことは助かりますね」(清水さん)

Package design for Takara Shuzo's canned chu-hai

Package design for Takara Shuzo's canned chu-hai
(上)「amana packeX Quick 3D」で作成した「タ力ラcanチューハイ」<レモン>「40周年記念缶」 350mlのアングルを変更した画像。
(下)上の画像を利用して作成した広告イメージカンプ。

パッケージデザインのデジタル化で、頻繁な変更にも即対応

版下データさえあれば誰でもWeb上で簡易画像生成が可能な本サービスですが、清水さんのように実データを操作することが可能なユーザーからは「ライティングの位置を設定して質感の調整をしたい」と、より精度を高められる機能を求める声もあがっています。

「カンプ制作や見え方のシミュレーションをしているユーザーなら、確かにライティングの調整ができないのはもどかしいところ。対応できる方法はあるので検証したいと思います」(田中)

さらに「amana packeX Quick 3D」にはトリミング機能を搭載しています。トンボ(トリミングマーク)が付いた状態のPDFをアップロードしても、シュリンクする前にWeb上でトリミングができる便利な機能です。「以前は版下データをトリミングしてからアップロードしていた」という清水さんも、最近はトリミング機能を活用しているとのこと。他のソフトを介さずに操作ができるので早いですし、何よりラクで気に入っているそう。

「クリエイティブに携わっていないとPDFデータを操作することも容易ではありませんから。さまざまな環境のユーザーにストレスなく利用していただけたらと思います」(斎藤)

Package design for Takara Shuzo's canned chu-hai
このようなトンボが付いた版下データでも、Web上でトリミングして3Dのパッケージデザインに仕上げられます。

商品パッケージのデザイン変更は、今やデジタル化が可能に。いかに簡易かつスピーディにできるか、という需要は高まると考えられます。

「このサービスは画像処理など専門的な知識がない方にも利用していただけるように開発しました。以前ならデザインを判断する立場の人が社内のデザイナーに検証用の画像制作を依頼していたかもしれませんが、今後は自ら版下データを反映させて検証する、というように使用してもらえると嬉しいですね。そうすることで企業の省人化・省力化に貢献することができると考えています」(田中)

「今後はAIによる画像生成技術が向上することによって、より画像の消費が加速することが予測されます。そんなとき、『amana packeX Quick 3D』で簡易にデザイン検証ができるような、時代のスピード感についていけるようなサービスに育てていきたいと思っています。システム、サービス共にまだ伸びしろがあるので、今後もユーザーとしてのご意見を清水さんにいただきながらアイデアを出せたらと思います」(斎藤)

本来、パッケージデザインのデザイナーは頭の中でイメージが完成しています。脳内イメージを他者に共有するためにアウトプットする作業(ビジュアル化)に手間がかかることは本望ではありません。そのジレンマをシステムで解決できることがスムーズな効率化に直結します。

文:濱田まり子
編集:大橋智子
AD:中村圭佑

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