アマナのムービーディレクターの粉川と申します。入社以来十数年、映像制作に専念し、現在はムービーディレクターとして映像の企画、演出、編集を担当しています。
広告映像制作の現場では、企画から撮影、編集に至るまで、多くのステップと専門的な知識が求められます。その中で「企画コンテ」と「演出コンテ」という二つのコンテは、ムービーディレクターをはじめとする制作チームが共有する「設計図」として重要な役割を果たします。
各コンテには、それぞれの段階で異なる役割があり、適切に使い分けることで、関係者が一貫したビジョンに基づいて制作を進めることが可能です。この記事では、ムービーディレクターが両者の違いや活用法、そしてスムーズなコミュニケーションを生むためのポイントについて解説します。
映像制作で撮影に進むまでには、重要なプロセスの1つとして「コンテ作成」があります。「コンテ」や「絵コンテ」という言葉を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、これは映像制作における「設計図」とも言えるものです。一般的にコンテとは、映像の撮影台本であり、シーンごとの動きやカメラワークを示したものです。
広告の映像制作では、1つの映像に対して2種類のコンテを作ります。「企画コンテ」と「演出コンテ」です。同じ映像の設計図であるものの、それぞれに記載されているシーンのディテールや情報の密度が異なり、制作の進行ステータスに応じて使い分けられています。
「企画コンテ」が登場するのは、制作の企画段階です。制作の序盤に、映像の主題や視聴者に伝えたいゴールを説明する役割を担います。このコンテは、資料を見た人にその企画の魅力を端的に伝えるためのもので、だからこそ「企画コンテ」と呼ばれます。誰がどこで何をしているか、映像がポップなのかシリアスなのかなど、映像の輪郭を示すものです。
この段階では、映像のコマ数やト書も少なく、説明が簡潔にまとまっているところが特徴です。
ちなみに、1つのプロジェクトで複数の企画コンテを作成して提案することが多くあります。どの企画が最も適しているかを比較し、絞り込むための判断材料としても、この「企画コンテ」は重要な役割を果たしています。
採用された企画案を深掘りして、ディテールを詳しく記したものが「演出コンテ」です。この演出コンテに基づいて撮影準備が進められます。どの構図でどのように動き、どんなナレーションが入るのかといった内容が、カットごとにカメラワークや尺と合わせて記載されています。ディレクターの演出意図が詰まった資料です。
カメラマンをはじめ、照明技師や音楽家など映像に関わるすべてのクリエイターが、この演出コンテを参照して作業を進めます。そのため、レンズの焦点距離や光の当たり方、BGMのイメージなどについても、演出コンテを基にイメージを共有しながら話し合います。
このように、2つのコンテはそれぞれ異なる役割を持ち、制作のステータスに応じて使い分けられています。しかし、コンテを正しく読み解くには、ある種のコツや慣れが必要ですし、専門用語や普段聞き慣れない表現に出会うことがあるかもしれません。その際は、コンテの筆者であるディレクターやプロジェクト責任者のプロデューサーに積極的に質問してください。コミュニケーションをとってコンテの不明点をクリアにすることで、その後の撮影や編集、仕上げ、映像完成までの流れがスムーズになります。
映像に関わるすべての人が、同じ設計図を基に同じ方向へ進むことができれば、きっとより良いクリエイティブにつながります。
2つのコンテが、良いコミュニケーションを生むための設計図にもなればと考えています。
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文:粉川翔之助(アマナ/ ムービーディレクター)