データ×クリエイティブの新思考が、ビジネス課題を解決する

Fusion of data and creativity

ビジネス課題の解決のためにビッグデータをうまく活用するのは、マーケターだけでなくあらゆるビジネスパーソンにとって不可欠な要素です。そして一見、関係のなさそうなクリエイティブ制作においても、データ分析の必要性は無視できない存在なのをご存知でしょうか。

アマナではさまざまなデータ分析ツールを活用し、企画提案を充実させるだけでなく、さらなるアイデアの創出やクリエイティブをブラッシュアップするなど、課題解決の上流から下流に至るアプローチの充実を図っています。今回は、消費者分析サービス「Knowns Biz」を運営しているノウンズの落合真帆さん、内田陵さんと、アマナで主にプランニングを担当している高橋みずき、清水悠生、藤岡裕佑が座談会を実施。データとクリエイティブが融合することで、ビジネスにどんな変革をもたらすのかについて語りました。

Knowns and amana member
左から、アマナの藤岡裕佑、清水悠生、高橋みずき、ノウンズの内田陵さん、落合真帆さん。

「クリエイティブのアマナ」がデータ分析を強化する理由

――まず、アマナとノウンズの協業のきっかけについて教えてください。

高橋みずき(アマナ/以下、高橋):アマナは今、変革の真っ只中です。以前は、クライアントである広告代理店が作成したフレームの中のクリエイティブだけを担当していましたが、事業領域が広がり企業との直案件が増えたことで、ビジネスの上流から携わる案件が増えています。
アマナのプランナーには、クリエイティブ・ディレクションが得意な人、コミュニケ―ション・デザインが得意な人、とさまざまな資質を持った人がいます。私はコミュニケーション全般を見る役割を担うことが多く、「誰に・何を」といった戦略パートを固めていくために拠り所となるデータを効率よく収集したいと思い、ノウンズさんにお声がけしました。

――アマナに対する第一印象はいかがでしたか?

落合真帆さん(ノウンズ/以下、落合):アマナさんが抱えている課題や、その解決に対してデータ分析をどう使いたいかを伺った時に、「アマナといえばクリエイティブ」ではあるけど、アウトプットに至るまでの根拠が弱いという意識があるとのことでした。企画をクリエイティブにどうつなげるかの部分で、弊社がサポートできるのではと思いました。

Image of data analysis

――現在、アマナではデータ分析をどのように活用していますか?

清水悠生(アマナ/以下、清水):私は、顧客コミュニケーションにおけるタッチポイントを見つけ出し、広告などの施策に落とし込みを行う部署に所属していますが、企画の提案時に使うことが多いです。3C(顧客=Customer、競合=Competitor、自社=Company)などの各種分析をして、顧客のニーズやインサイトを調査。主にタッチポイントの洗い出しが重要なファクターになってくるので、そこに向けて活用しています。
アマナはブランデッドなコンテンツコミュニケーションを得意としているので、我々もそういった顧客コミュニケーションを意識した施策を立てることを大切にしています。でもそのためには顧客にさまざまなアンケートに答えていただかないといけないわけで、時間も手間もかかってしまう。特に、新規お付き合いの企業さんとだとそこまで実施できず、ノウンズさんのデータがあるのはありがたいですね。

高橋:私の場合は、使用法に2つのパターンがあります。

① クリエイティブの精度を高める
クリエイター主導で進めていたものに、マーケター/プランナーが加わることで、データから考えられる別ルートの検証がしやすくなりました。多様なルートを検証することでクリエイティブの精度が高まっているなと感じます。

② クライアントと共に歩む
生活者や競合の動きをデータから読み解き、クライアントと共有することで、戦略から戦術までを共に歩む。施策への納得感やアマナへの信頼感を得られていると感じています。

それぞれ、データ分析の効果を実感しているところです。

藤岡裕佑(アマナ/以下、藤岡):私も同様に、企画提案の時に考えた仮説をより強固にする裏付けとしてデータ分析を使っています。例えば、データ分析を基に顧客の企業に対する満足度を示したり、企業としての現状はマーケット的にこの位置にいるけど、今回ご提案のコンテンツでより強みを生かして、これからの位置はここに向かっていきましょうといった目指すべき姿をイメージしやすいものに仕立てることに活用したり。
以前は自分でリサーチしてデータを拾っていたのが大変だったので、裏付けができるデータを的確に探せるのはありがたいですね。

高橋:確かに、今までは自力でリサーチしたり、必要なデータをその都度購入していたり……。「Knowns Biz」は競合と比較して見られるのがいいですね。他社とどう差別化するかは、提案の際に必ず課題として上がりますから。

藤岡:そうですよね。私はポジショニング分析をよく使っていますが、絞り込み要素のバリエーションが豊富にあるので、こちらが必要とする方向性に基づいて使い分けています。

――データ分析を活用している様子ですが、ノウンズならではの利点があるのでしょうか?

落合:そうですね、2つのポイントが考えられます。

① 商品ブランドの認知度や購入率はもちろん、あらゆるカテゴリーの定量データに基づいた「セレンディピティ(偶然の産物)」を提供することで、アイデアのひらめきやクリエイティブジャンプを可能に
リサーチで欠かせない認知度・好感度・利用率などがあらゆるブランドで分析されていて、競合との比較もできます。またブランドの他にタレントやエンタメ作品などのカテゴリーについてもデータを集めているので、さまざまなデータの掛け合わせで思いもよらない発見をもたらします。例えばサブスクの動画配信サービスの利用者がよく購入するビールの銘柄がわかったり、あるチョコレート菓子のロイヤル層が好きなタレントやアニメ作品を見つけたりすることも、「Knowns Biz」のデータなら可能です。それはアイデアの種となり独自性の高いクリエイティブにつながります。

② 仮説を追加アンケートで検証でき、過去のデータとひもづけることもできる
「Knowns Biz」のダッシュボードで大まかな分析をした後、さまざまな仮説や疑問が生まれます。それに対し自分でアンケートを作成して配信する機能があるので、アイデア創出と検証をセットで行うことが可能です。またアンケートはすべて回答者にひもづけられているため、例えば「大阪万博2025のSDGs」について追加調査をした場合、過去の「環境問題への意識」の回答をひもづけてデータ提供をすることができるので、効率的にデータ分析を行うことができます。

Image of data analysis
「Knowns Biz」でデータを分析しマトリックスを作成するなど、さまざまな活用法が可能です(分布図はイメージ)。画像提供:ノウンズ

――では、データ分析を強化することで、仕事のやり方に変化は出ましたか?

清水:まず「Knowns Biz」を見れば何かしらのデータがあることがわかるので、そこからどの程度、調査を広げればいいかの目安がつくようになりました。自力で調査するよりもはるかにタイムマネジメントがしやすいですね。

藤岡:私も効率がよくなった実感があります。自分の提案書は定性的な傾向が強くて、そこからさらに定量部分も充実していますよ、と言えるものが作れるようになったせいか、提案自体に厚みが出たし打率も上がってきています!

高橋:好き嫌いのような人の感性でクライアントにジャッジされるのが怖かったし、提案のバリエーションがないとそれはそれで不安になりました。でもデータ分析というバックアップがあると、お客さんと一緒に確認しながら進められる安心感があるし、実は私も打率が上がっています。「そこまで理解したうえでのクリエイティブなんだね」とクライアントから言われるのがいいですよね。

落合:アマナさんに関しては、「幅広く考えられるクリエイティブ集団」というイメージがあります。そのアウトプットは、必要なことをただ当て込んだのではなくアートの要素が入っているような、感性を動かされるデザインが多いなという印象です。
ノウンズとして提供しているデータはどの企業様にも同じで、そこからどんなアイデアを出していくかは感性の違い。アマナさんはいろいろな観点の持ち主がいると聞いているので、同じデータからどんな発想になるのか、「Knowns Biz」のデータを感性で広げてくれる活用法にワクワクしています。

内田陵さん(ノウンズ/以下、内田):データ分析でできることは、「仮説の発見」と「仮説の検証」の2つ。データから「こういうことが言えるかも」という要素を取り出して、それを検証して回していくのがデータとクリエイティブのかけ合わせになります。
「こういうデータがある→仮説を発見→どんなアウトプットができる?」を繰り返すことで、クリエイティブジャンプアップが加速するし、それが次々と出てくるのがアマナさんの特徴だなと感じました。

データ分析とクリエイティブのかけ合わせで、これから何ができる?

――データ分析において、アマナの課題はどのように感じていますか。

内田:データをどう見ていくかということについて、選択肢をもっと広げられると活用できるシーンが増えるのではと思います。データ活用にはいくつかパターンがあるからそれを増やしていくこととか、カジュアルリサーチで出てきた検証をもっと動かしていくとか、おもしろい提案ができるように我々もサポートしたいです。

落合:大手や制作プランニングが得意な代理店さんは、短期間にカジュアルリサーチをたくさん使って、そこから話をロジックで組み立ててゆくのが上手なんですよね。

高橋:アマナの特性とはまた違いますよね。社内のプランニングメンバーを見渡しても、データを見るスキルが足りない感じがするので、より深いリサーチにつなげるためにもっとデータに触れないといけないと感じます。

――データの読み方や仮説の立て方では、どんなところに気をつければいいのでしょうか。

落合:データの読み方(仮説の立て方) にはコツがあります。基本的には、
① 現状の把握(自社分析、競合分析、市場分析)。 
② 現在の問題点や悩み、そこから見えるニーズを発見。
③ ニーズに対する仮説を複数立て、それが正しいかを検証。 
④ 仮説からコンセプトを立案し、 複数のコンセプトを調査(検証)して確度を高める。
というステップを踏んで進めていくことをおすすめしています。

内田:課題という話が出ましたが、アマナさんに限らず気にかけた方がいいのが質と量(スピード)。Webのデスクトップサーチを効率化して量を得られるスピードを上げ、質が上がることで相手を納得させるだけではなくアイデア自体が広がる。まさにセレンディピティのチャンスが増えることが期待できます。

Image of data analysis

落合:提案される立場に立った時に、自社ブランドのターゲットに刺さるにはデータだけではなくて感性に基づいたクリエイティブが大事だというのは、企業側もわかっているはず。ノウンズが実現したいのは「データ活用のバリアフリー化」で、データ分析そのものが目的ではなく、むしろその先に生まれるアイデアやクリエイティブを成功させたいと考えています。
アイデアだけでは正確性に欠けるし、データだけだと人の心を動かせません。データ(ロジック)×アイデア(感性)をかけ合わせ、その作業の繰り返しによって正確性とワクワク感を兼ね備えた最高のマーケティングができると思います。このコンサル思考をアマナさんが進めていて、ノウンズがそこに寄与しているのはありがたいですね。

高橋:データとクリエイティブをいかに融合させていくか、ですね。データだけ見ていても沼にハマってしまうので、あくまでもクリエイティブに貢献するための分析が必要だと思っているし、そこがアマナらしさを発揮できる部分でもあります。

清水:データとクリエイティブ、サイエンスとアートは心地よい境界線を作ることが大事かなと。私はマーケティング会社出身なので、「データ」を正とした環境に身を置いてきました。しかし、論理的すぎる戦略やクリエイティブにはあまり発展性がないと感じています。
一方で、「データ」に基づかない戦略やクリエイティブは、おもしろくとも効果検証が難しく再現性が低い。だから、データとクリエイティブはお互いに干渉しながら干渉しすぎず、両立させることが大切だと思っています。

藤岡:Webディレクターという職業柄、職域が企画制作から運用まで多岐にわたることもあり、サイトが変わる前と後でマーケットがどう変化したか、狙っていたこととズレていないかを見るのにも、こういったデータの活用は非常に有効な手段だと考えています。アマナは「感性・集合・進化」を理念に掲げていて、クリエイティブを中心に据えつつ、いろいろなデータや周辺の情報を集合させて進化させていくことが大切。時代の流れでこういう組み合わせは必然だと思っていて、社内にももっと浸透させていきたいですね。

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取材・文:大橋智子
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